【解説】担当大臣の“力不足”?モデルナ“不人気”?「3回目接種」日本が遅れる3つの理由
新型コロナウイルスの感染が急拡大する中、急がれているのが3回目のワクチン接種ですが、日本では接種があまり進んでいません。なぜ、遅れているのか、その理由が見えてきましたので、詳しく解説します。
◇
26日の全国の新規感染者は、初めて7万人を超えて、33の都道府県で過去最多となりました。
27日は、北海道で2856人、愛知で5160人、兵庫で4303人、福岡で3955人と過去最多が相次いでいます。
■3回目接種“大規模センター”28日から予約開始
こうした感染の急拡大を抑えるためにも、3回目のワクチン接種が急がれますが、いよいよ28日から、自衛隊が運営する東京の大規模接種センターの予約がスタートします。実際の接種開始は31日からです。
今回の対象は、2回目の接種から6か月が経過した18歳以上の人ということで、1回目、2回目は対象外です。
岸田総理は、首相官邸のツイッターで、次のように早めの接種を呼びかけました。
「感染拡大が続く中、最も効果的な予防方法は、ワクチンの3回目接種です。ワクチンの種類よりもスピードを優先して、3回目接種を受けて頂きますようお願いします」
■抗体の「増え方」年代高いほど大きい…調査
この3回目接種が、どれくらい効果があるかについて、ある調査結果が発表されました。
国際医療福祉大学は、去年12月、21歳から77歳の医療従事者ら187人を対象に、コロナの感染や重症化を防ぐ抗体の量が、3回目接種の前後でどう変わるかを調べました。
その結果、接種直前に比べて、接種後は全世代の平均で、およそ34倍に増えたといいます。
年代別でみてみると、20代から30代は、接種前は抗体の量が907だったのに対し、接種後は2万9000近くになり、およそ32倍に増えました。40代から50代では30倍、60代では50倍、70代では90倍になりました。
あくまでも1つの調査結果ですが、ほかの調査でも増加傾向は確認されています。
この調査では、抗体の量自体は若い年代ほど多いですが、3回目接種による抗体の「増え方」は年代が高いほど大きいことがわかります。
また、調査では、習慣的に飲酒する人は、しない人に比べて、3回目接種後の抗体量がおよそ15%低いことがわかりました。習慣的な飲酒が、ワクチン接種後の抗体の増加を妨げる可能性が示されたということです。
■英・独・韓は“半数”完了 日本は2.1%…遅れる理由は
ただ、この3回目接種ですが、日本は海外と比べてもかなり遅れています。
全人口のうち3回目接種を終えた人の割合を見てみると、24日時点で、イギリス、ドイツ、韓国は、半数近くの人が3回目接種を終えているのに対して、日本は2.1%と、まだ進んでいないのが実情です。
諸外国と比べてみても3回目を始めた時期も遅い上に、始めた後もあまり進んでいないことがわかります。
どうして、日本はこれだけ遅れてしまったのか…次の3つの理由が見えてきました。
1.接種間隔の前倒し判断の遅れ
2.担当大臣の“力不足”
3.モデルナの“不人気”
1つ目の理由は、去年11月時点で厚労省は「接種間隔を原則8か月」としていましたが、専門家からは「第6波に備えて高齢者にはなるべく早く打つべき」との声が上がっていました。
しかし、厚労省が前倒しの検討を始めたのは、昨年12月になってからです。結局、高齢者施設の入所者などの接種前倒しを発表したのが、12月17日となりました。
さらに、オミクロン株の拡大を受けて、今月に入って一般の高齢者や64歳以下についても前倒しを決めました。
ある政府関係者は、「厚労省が8か月と言い続けたので、多くの自治体が急に間隔が早まっても準備が間に合ってない。判断が遅かった」と指摘しています。
2つ目の原因としては、堀内ワクチン担当大臣の発信力、調整力不足との指摘が上がっています。
政府関係者によると、「自治体の接種状況に関する協議の場に呼ばれなかった」ことがあったということです。また、不安定な国会答弁が問題になったりと、ワクチンに関する主な発信は後藤厚生労働大臣が担うようになり、担当大臣としてのリーダーシップに疑問の声が上がっているということです。
3つ目の原因が、モデルナ製ワクチンの不人気ということです。特に高齢者は、2回目まではファイザーを接種した人が、3回目はモデルナを打つという「交互接種」をためらったり、モデルナの方が発熱などの副反応の事例が多いことを気にして、ファイザーに希望が集中し予約枠が埋まらない自治体もあるということです。
こうした要因が重なった結果、日本では3回目接種が大きく出遅れてしまったとみられています。
■“不人気”モデルナ「抗体の量およそ37倍」発表…オミクロン株にも効果
モデルナ社の発表では、3回目を接種した場合、接種する前と比べて、オミクロン株に対する抗体の量がおよそ37倍と、大幅に上昇したことが確認されたということです。
すでに、モデルナ社も、ファイザー社もオミクロン株に特化したワクチンの臨床試験を始めていますが、既存のワクチンでもオミクロン株への効果が十分にあることはわかっているので、まずは早めに3回目を接種することが重要ではないでしょうか。
◇
日本は1回目の接種開始も欧米に比べスタートがやや出遅れましたが、その後、自治体や医療関係者の努力で遅れを挽回しました。3回目についても大切なのは、これからどのようにスムーズに進めるかです。国や自治体には、これまでの教訓を総動員して、効率的な接種体制の構築を目指してほしいと思います。
(1月27日午後4時30分ごろ放送 news every.「ナゼナニっ?」より)