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日向灘や南西諸島でも巨大地震発生の可能性 M8クラスの地震の長期評価を見直し~地震調査委員会

2022年3月25日 17:00
日向灘や南西諸島でも巨大地震発生の可能性 M8クラスの地震の長期評価を見直し~地震調査委員会
【地震調査委員会資料から】

政府の地震調査委員会は、九州から沖縄にかけての日向灘と南西諸島周辺で起きる地震について発生確率などの見直しを進めていましたが、M(マグニチュード)8クラスの巨大地震が発生する可能性があるとした報告をまとめました。その巨大地震の実態とは…。

日向灘や南西諸島では、フィリピン海プレートが南東方向から日本列島の下に沈み込んでいます。このプレートの境界やプレートの内部では、蓄積されたひずみを解放するために大きな地震が起きてきました。海溝型地震と呼ばれ、東日本大震災や南海トラフの地震なども同じ種類の地震です。

日向灘や南西諸島で発生する地震の規模や発生確率などについて、地震調査委員会は2004年に検討結果を公表していましたが、その後東日本大震災が発生したほか、調査観測や研究が大きく進展してきたことから、今回見直しを行ったものです。

■日向灘でもM8クラスの巨大地震が発生する可能性が!

日向灘で起きる地震は、紀伊半島から四国の沖などと一緒に南海トラフの巨大地震として発生する可能性が指摘されていますが、今回は日向灘だけを震源として起きる地震について検討されました。日向灘を震源域としたM8クラスの巨大地震の発生は、これまでは想定されていませんでした。しかし江戸時代だった1662年10月31日、日向灘付近では史上最大の被害をもたらした地震が発生しています。宮崎県沿岸で多くの家屋が倒壊し、城も破損したとする記録があります。さらに、津波は宮崎沿岸では高さが4~5mに達し、延岡から大隅の沿岸を襲ったということです。

この地震は日向灘のみを震源域とした巨大地震であった可能性があり、今回、日向灘でM8クラスの巨大地震が発生する可能性があると結論づけました。ただし、記録が少ないため発生確率は不明だとしています。

一方、巨大地震よりも一回り小さなM7.0~7.5程度の地震については、気象庁に記録が残る1919年から2022年3月までの間に5回発生しています。1968年に起きたM7.5の地震では四国南西部で最大3m以上の津波も観測され、水産施設などに被害がでました。

こうしたことから今後30年以内に日向灘でM7.0~7.5程度の地震が発生する確率は80%程度あるとしました。

■南西諸島周辺と与那国島周辺でも巨大地震の可能性が!

南西諸島周辺及び与那国島周辺で発生した巨大地震としては、1911年の喜界島地震があります。奄美大島近海を震源とする地震(M8.0)で、奄美大島や喜界島では震度6、沖縄島でも震度5の揺れがあったと推定され、近畿地方でも震度2~3だったということです。

この地震により喜界島では全島の家屋2,500棟のうち401棟が全壊し、死傷者も多くでました。さらに津波も発生し奄美大島では多数の家屋が浸水するなど、各地に被害の記録が残っています。

地震調査委員会は、今後もこの地震と同程度の規模の地震が領域内のどこでも発生する可能性があると評価しました。ただ、記録が過去1回しかないため次の地震の発生確率は不明ということです。

■与那国島周辺ではM7.0~7.5程度の地震の発生確率がなんと90%程度以上

南西諸島周辺と与那国島周辺では巨大地震より一回り小さいものの、M7.0~M7.5の大きな地震が多く発生しています。

「南西諸島周辺のひとまわり小さい地震」南西諸島周辺では1919年から2022年までの間に、M7.0~7.5程度の地震が4回発生しました。このうち、1998年、2002年、2010年に発生した地震では津波も発生し、2010年の地震では沖縄・糸満市で最大震度5弱を観測し負傷者もでています。

こうしたことから今後も南西諸島周辺ではM7クラスの地震が起きるものとみられていますが、次の地震の発生確率は不明だということです。

「与那国島周辺のひとまわり小さい地震」

与那国島周辺ではM7クラスの地震が頻繁に発生してきました。1919年から2022年の間にM7.0~7.5程度の地震が12回発生。平均すると約8.6年に1回はM7クラスの地震が起きているのです。

1920年6月5日に台湾付近で起きた地震(M7.4)では、沖縄県那覇市と石垣市で震度5を記録。台湾では死者5人、全壊住家が203軒に上りました。

こうしたことから推定すると、今後30年以内に与那国島周辺でM7.0~7.5程度の地震が発生する確率は非常に高く90%程度以上となりました。

■1771年の八重山地震では壊滅的な津波被害が発生

1771年に発生した八重山地震では、先島諸島に最大約30mの高さの津波が押し寄せ、1万人を超える死者・行方不明者をだしました。八重山列島では9,400人余、宮古列島では2,463人が溺死したということです。全壊した家屋は、八重山列島で約2,200棟、宮古列島では少なくとも800棟に上り、石垣島では完全に消滅した村もあったとされています。しかしこれまでは記録が少なくよくわからないとして評価の対象から外されていました。

今回の長期評価では、この八重山地震についても、津波堆積物などの最新の知見を踏まえて再評価されました。

写真は石垣島の東海岸に打ち上げられた岩塊です。この大きな岩が巨大な津波によって打ち上げられたというのです。

こうした津波石をはじめとする津波堆積物の研究成果が蓄積されたことで、先島諸島では1771年の八重山地震と同規模以上の津波が繰り返し発生したとみられることがわかってきたのです。

石垣島の地層からは、過去2000年の間に3回も巨大な津波が発生、砂が運ばれてきた痕跡が見つかりました。

ただし、これらの津波がどのような地震によって発生したのか、詳細は明らかにはなっていません。このため、今後起きる発生確率を評価することはできないということですが、過去に何度も巨大津波が発生しているわけですから、津波を想定した対策が必要だといえます。

地震調査委員会の平田直委員長は、「M8クラスの巨大地震では、これまでの想定よりも強い揺れの面積が広くなり、津波も大きく広い範囲で起きる。範囲を広めて対策を強化してもらいたい」としています。