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「パパ」って呼んで…レット症候群に薬を

2020年10月30日 16:10
「パパ」って呼んで…レット症候群に薬を

「パパ」って呼んで…。

話すことができない娘から、どうしても聞きたい言葉。

父・哲次さん「もししゃべれたらと思って、いつも考えるんですけども。一番は紗帆に治療が…、すみません…」

谷岡哲次さんの娘、沙帆さんが、女の子だけの難病、レット症候群と診断されたのは、2歳の時。

手や足を動かすことはできませんが、意思や感情を表情で示すことはできます。

薬や治療法はまだ、見つかっていません。

父・哲次さん「ほんまに、治療法はないんですか?(と聞いたら)ないと(医師が)きっぱり言われたので、すっきりしたというか。自分で何かできないかな?っていうのを、その時に思った」

母・陽子さん「(病院に行った)帰りの新幹線で、『何かできないかな』って思ってたっていうから、思ったらやりたいタイプなので、もうその時点で止められないというか…」

『薬がないなら薬を作ってもらおう』と診断の次の日、専門家への働きかけを決意。

2011年、手探りでNPOを立ち上げました。20歳以下のレット症候群の患者は国内におよそ1000人。

女性「お薬はあるんですか?」

父・哲次さん「いや無いので」

女性「ないの、何もないの?」

患者数の少ない難病ゆえ、あまり知られていません。家族会も立ちあげました。

同じ症状の娘を持つ男性「診断されたばかりで分からないことが多いと思うんですけど、こういう貴重な機会でいっぱい情報を仕入れてやっていきたいと思います」

症状や進行については個人差がありますが、感受性の豊かな子が多いといわれています。

専門家がいると知れば全国どこにでも向かいます。

父・哲次さん「研究の方向性だったり、色んなお話ができたらなと思います」

金沢大学・堀家慎一准教授「こんな風な、精力的にする人は見たことがないです。(普通は)自分の子を世話するのだけで、もう手いっぱいですもん」

国際シンポジウムも開催。アメリカは遺伝子治療の研究開発や薬の承認なども日本に比べてスピーディーです。症状を和らげる薬が海外で開発されていると知り、日本でも使えるように、厚生労働省に要望しました。

父・哲次さん「紗帆ちゃん…よろしくお願いしますって」

しかし申請は、2度にわたって差し戻されました。

専門家の意見を踏まえた書類でしたが、不十分だという指摘。

父・哲次さん「飲まなやってられへん」

NPOを立ち上げて8年が過ぎていました。紗帆さんは12歳に。春には特別支援学校の小学部を卒業、中学部に進学しました。

父・哲次さん「パパって言ってもらえたらすごくうれしいですね。な、紗帆ちゃん、パパって言って…」

この日は「遺伝子治療」をテーマにしたシンポジウムを開きました。患者・家族・専門家、みんなで考えるためです。

父・哲次さん「10年たてば少しは、症状がましになるような、薬とかできているのではないか?っていう甘い考えを持っていたんですけども、いまだに、自分の娘や、レット症候群と向き合っているたくさんの子どもたちに、何もまだ具体的に目に見える成果っていうのをお返しできていない…」

それでも谷岡家には、いつも通りの朝が―

父・哲次さん「じゃあ、行ってくるねー」

かすかな光を求めて…これからもー。

※読売テレビで制作したものをリメイク。2020年9月放送、NNNドキュメント「パパって呼んで」より。

【the SOCIAL×NNNドキュメントより】