新型コロナ治療の最前線 重症化どう予測?
新型コロナウイルスの全国的な感染拡大が懸念される中、カギとなるのが感染者の1.6%にあたる重症者の治療です。重症化を予測する、という最前線の研究を取材しました。
新型コロナ対策を政府に助言する会議のメンバー、国立感染症研究所の脇田所長。治療の現状について聞きました。
国立感染症研究所・脇田隆字所長「3月~4月の第1波と、7月8月の第2波を比べると、重症化率、致死率が全然下がってきている」
致死率は、5月までのいわゆる第1波では6.59%、夏頃の第2波では1.86%と大きく下がりました。背景には、治療法が分かってきたことがあるといいます。
特効薬はないものの、ウイルスが増えるのを抑える「レムデシビル」と肺などの炎症を抑える「デキサメタゾン」で治療できるようになっています。
6月以降、人工呼吸器や集中治療が必要な重症者は感染者の1.6%ほどです。
国立感染症研究所・脇田隆字所長「どう重症化させないか、予測は非常に重要。重症を予測するマーカー(目印)がある」
感染初期の段階でその人が重症化するかを予測するとは、どういうことなのでしょうか?
国立国際医療研究センター・杉山真也副プロジェクト長「我々は血液検査に注目。あらかじめ重症化しそうな人の予測ができるタンパク質を同定した」
国立国際医療研究センターのグループは、新型コロナウイルスの患者28人の血液を検査。症状が軽いまま回復する患者と、重症化する患者では、5種類のたんぱく質の変化に違いがあることを発見したといいます。
5種類のタンパク質のうち「CCL17」と呼ばれるものが新型コロナに関係すると突き止めたのは世界初。
このタンパク質、アトピー性皮膚炎の患者では、血液中の濃度が高いことはわかっていますが、新型コロナの患者では…。
国立国際医療研究センター・杉山真也副プロジェクト長「逆だったので驚きだった。(濃度が)低い人は新型コロナで重症化するという予測因子になった」
研究の結果は…重症化した患者は、感染初期の軽症の時からCCL17の濃度が基準よりも低く、重症になっても低い状態が続きました。一方、軽症で回復した人は感染していない人とほぼ同じ濃度だったということです。
また、ほかの4種類のたんぱく質の濃度は、重症化した人は、重症化する数日前に急激に上昇しました。
研究グループは、今後、全国のおよそ20の病院(10月末時点)で有効性を調べ、近く重症化を予測する検査の導入を目指しています。
一方、ワクチンの開発も世界中で進んでいます。
国立感染症研究所・脇田隆字所長「今まで使われていないようなテクノロジーのワクチンが開発中」
政府は、海外のメーカーとすでに合意。開発が成功した場合、来年前半に全国民に供給できる量を確保するとしています。
仮にワクチンが開発されても課題があります。まず、感染予防ではなく、重症化を防ぐものになるとみられるため、ワクチンができても、感染対策は続ける必要があります。また、免疫が数か月しか続かない場合、何回も打つ必要があるかもしれません。政府や自治体による十分な情報提供が必要です。
一方、感染者の増加が懸念されるいま、感染対策の徹底が求められています。