コロナ 世界初の“遺伝子ワクチン”とは?
全国的に新型コロナウイルスの感染拡大が続く中、ワクチンの開発が佳境を迎えています。接種できるようになる時期や安全性について詳しく説明します。
■ワクチン開発で大きな動き
ファイザー(米)と、ビオンテック(独)が共同開発しているワクチンが、11月上旬に「9割以上の発症予防効果が確認された」として、アメリカのFDA(食品医薬品局)に緊急使用の許可を申請しました。早ければ12月10日にも承認され、翌11日にも接種できるようになる可能性があります。
ワクチン開発をめぐっては、世界中の製薬企業が熾烈な開発競争を繰り広げていて、トップを走るファイザー(米)に、モデルナ(米)とアストラゼネカ(英)が続く形となっています。
そして、このファイザーとモデルナの2社が開発するワクチンが、従来のインフルエンザワクチンなどとは全く違う「遺伝子ワクチン」と言われるもので、実用化されれば「世界初」となります。
■世界初の「遺伝子ワクチン」とは
従来のワクチンは、人工的に毒性を弱めたウイルスを体内に入れることで、ウイルスが持つ特有の「突起」を体が認識し、ウイルスをやっつけるための抗体が作られます。そうすることで、もし本物のウイルスが体内に入ってきても、抗体が素早くウイルスを排除し、感染を防ぐ働きをしてくれます。
一方、「遺伝子ワクチン」は、ウイルスそのものは一切体内に入れず、代わりに「突起」を作る設計図である「遺伝子」を体内に入れます。
すると、体内でこの「突起」の部分だけが作られ、体は、この「突起」を認識することで『コロナウイルスが入ってきた』と勘違いして抗体を作り出す、という仕組みです。
今まで一度も使われたことがない初のワクチンのため、わからないこともたくさんありますが、「遺伝子ワクチン」の最大の利点は、従来のワクチンと比べて「素早く大量に生産が可能」なところで、今回のコロナのように急いで開発する場合に向いています。
■「遺伝子ワクチン」3つの課題
(1)副反応
通常3~5年かかる治験プロセスを今回は大幅に短縮し、非常に早いスピードで進めてきたため、大勢の人に接種した時、本当に副反応が出ないかどうかは、これから見極めることになります。
(2)持続効果
効果が「いつまで持続するか」もまだ確認できていません。
(3)輸送・保管
「遺伝子ワクチン」は、マイナス70度などの超低温で冷凍保管しなければならず、設備がない病院やクリニックでは使うことができません。
■接種できるのは、いつ頃?
アメリカで承認されたからと言って、日本でもすぐに接種できるようになるわけではありません。日本国内でも改めて承認される必要があり、ファイザーはすでに日本でも承認申請の準備を進めています。
厚生労働省は「特例承認制度」という仕組みを使い、大規模な治験を終える前に審査を行う可能性がありますが、それでも審査にはある程度の時間が必要なため、年内の承認は難しく、承認は早くても2021年の2月か3月頃になるとみられています。
10月に行った、全国の20歳から69歳までの1100人に聞いたワクチンに対する意識調査では、「すぐに接種したい」と答えた人は1割強で、半分以上の人は「様子を見てから接種したい」と答えました。「あまり接種したくない」「絶対に接種したくない」という人は2割程にのぼり、ワクチンの安全性を気にする人も多い結果となりました。
ワクチンは、病気の治療薬と違い、大勢の健康な人が接種するものです。それだけに安全性や効果の確認が不十分なまま流通してしまうと、取り返しがつかないことになります。各国の政治的な思惑や製薬企業の開発競争に巻き込まれることなく、日本は冷静な視点でしっかり評価していく必要があると思います。
(2020年11月27日16時ごろ放送 news every.「ナゼナニっ?」より)