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【解説】英でワクチン接種開始 日本では?

2020年12月8日 20:18
【解説】英でワクチン接種開始 日本では?

12月8日は中国・武漢市で、最初に新型コロナの患者が確認されてからちょうど1年になります。その日に、世界で初めて臨床試験を経て認可されたワクチンの接種が、イギリスでスタートしました。

■感染者・重症者 日本の最新状況

新型コロナについて日本の最新状況です。
12月8日、東京では新たに352人の感染が確認されました。重症の方は60人で、12月7日は55人だったので、5人増えて再び60人台になりました。

全国の感染者です。12月7日は、1522人の感染が確認されました。月曜日としては過去最多の数字となりました。亡くなった人は39人と多くなっています。また、重症者の数も相変わらず全国で増え続けていて12月6日は、530人と4日連続で500人を超えています。過去最多を更新し、深刻な状態が続いています。

■いよいよイギリスでワクチン接種開始

こうした中、いよいよイギリスでワクチンの接種が始まりました。地元メディアは「12月8日は決定的な転換点になるだろう」などと大きく報じています。イギリス国内では今後1週間でおよそ80万人がワクチンを接種する見通しになっています。

どんなワクチンかというと、アメリカの製薬大手ファイザーなどが開発したもので、日本でも承認されれば、2021年6月末までに6000万人分の供給を受けることで合意しています。そのワクチンがイギリスで先行して始まったわけで、私たちも関心をもってみています。

■ワクチン接種の優先順位 イギリスでは?

では、イギリスではどんな優先順位でワクチンを接種していくのでしょうか。
実は細かく「9つのグループ」に分かれていて、優先されるのは次の順です。

(1)介護施設の入所者やスタッフ
(2)80歳以上の高齢者と医療従事者
(3)75歳以上
(4)70歳以上
(5)65歳以上
(6)16歳から64歳で基礎疾患がある人
(7)60歳以上
(8)55歳以上
(9)50歳以上

つまり、介護が最優先で、あとは「年齢」を重視しているといえます。
イギリス政府は、この(1)~(9)まで全部で、新型コロナで亡くなるリスクがあるグループのおよそ99%をカバーすると推定しています。ちなみに、エリザベス女王は御年94歳ですので、この(2)で優先順位の高いグループに入るわけですが、現地の報道によりますと、エリザベス女王夫妻は数週間以内に接種する予定ということです。また、現在56歳のボリス・ジョンソン首相は、接種する様子をテレビ中継することを検討しているということです。

■ワクチン接種 日本での優先順位はどうなる?

では、日本でもワクチン接種が始まった際に、優先順位はどうなるのでしょうか。日本の場合、最も優先されるのは次の順です。

(1)新型コロナを治療している医療従事者
(2)65歳以上の高齢者
(3)基礎疾患のある人

ということが、現段階で決まっていますが、今後、厚労省がもっと細かく詰めていくとみられています。たとえば65歳以上をさらに「まず80代が先」など細かく分けて順番を決める必要があるのかなど議論になると思われますが、ワクチンが1度にどれくらいの量入手できるかによるといいます。

■新たな経済対策とは?

一方、政府は12月8日、コロナ対策を盛り込んだ新たな経済対策を決定しました。事業規模は73兆6000億円で、今回も大型となりました。このなかで特にコロナ関連のものとしては、『医療機関の支援』、『雇用を維持するために雇用調整助成金の特例措置を2月末まで延長』、そして『GoToトラベルを6月末まで延長』することなどが盛り込まれました。

■ “東大研究” GoToトラベルで感染広げた可能性も

ただ、GoToトラベルで感染が広がった可能性があるという調査結果が公表されました。

調査は東京大学などの研究チームが行ったもので、2020年8月末から9月にかけてインターネットで行われ、対象はおよそ3万人と大規模なものとなっています。新型コロナの感染者に現れる5つの症状、(1)発熱、(2)のどの痛み、(3)せき、(4)頭痛、(5)嗅覚や味覚の異常を調べました。

その結果、GoToトラベルの利用者は利用していない人に比べて、いずれも症状が出た割合が多く出ています。特に、のどの痛みやせき、嗅覚や味覚の異常は、統計学的に2倍もの差があったということです。
研究チームは「GoToトラベルを利用している人ほど新型コロナの感染リスクが高い」ことが明らかになったとしています。

こういう調査があるとGoTo継続しても大丈夫かとなりますが、一方で、この研究チームも自ら調査には限界があるとして「あくまで症状を調査したもので実際に感染したかはわからない」「GoToトラベルの利用が先か症状が発生したのが先かはわからない」点を挙げています。

12月8日、加藤官房長官も「GoToトラベルの利用が直接的症状の増加につながった因果関係は断定できない」点を指摘し、その上で「引き続き、専門家のご意見を伺いながら適切に運用していきたい」と述べました。

さきほどの研究では、GoToトラベルを利用した高齢者よりも、若い人たちの方が症状をあらわす人が多かったという結果も出ていて、感染が急拡大している時に、この事業を継続することに強く問題提起しています。政府は、専門家の意見をきくといっていますが、科学的データや知見に基づいて、政策をさまざまな角度から柔軟に見直していく姿勢が求められます。

(2020年12月8日16時ごろ放送 news every.「ナゼナニっ?」より)