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元重症患者が語る“コロナの恐怖”と後遺症

2020年12月23日 21:32
元重症患者が語る“コロナの恐怖”と後遺症

命を救う最後の砦「ECMO」による治療を受け、2か月もの間、意識がなかった男性。退院した今も、酸素ボンベが手放せず後遺症に苦しんでいました。新型コロナの重症化の恐ろしさを経験した男性が、いま伝えたいことは。

■手放せない酸素ボンベ 2か月がたった今でも

新型コロナウイルスに感染し、約4か月もの間、集中治療室に入院していた元重症患者の60代の男性。男性は10月に退院しましたが、退院から2か月がたった今でも背中のバッグの中には酸素ボンベがありました。心拍数を測定する機械も手放せない状態だといいます。

「歩いていてちょっと息苦しいなと思ったら機械で数値を測って、 (数値が高ければ)これちょっと止まらないと、と。まだ数値をみながらですね。先生たちも『早く歩くな』って。動いたら心臓と…酸素が…」

男性は、息をきらしながら話します。

「退院後スーパーに行く時、徒歩5~6分の距離なのに25分くらいかかりました」

■苦痛に「死んだほうが…」

男性が体に異変を感じたのは、3月のことでした。その当時のことを、次のように語ります。

「『風邪だな』と思って病院に行って、4日くらい薬を飲んでましたが、薬がなくなり病院に行こうと思ったら、体が起き上がらなくて。救急車を呼んで、そのまま寝込んでしまい、それから記憶がありません」

搬送されたのは、重症患者を受け入れる都内の病院。人工呼吸器を使っても呼吸ができないほど肺が弱っていたため、命を救う“最後の砦”人工肺ECMOによる治療を受けることになりました。一般的に2週間ほどでECMOが外れる人が多い中、男性は約2か月という長期間の装着。その間、意識がありませんでした。そして、目覚めたときには――

「天井が真っ白で、天国にいったのかな、と思ったら横に看護師さんがいて。『これは病院だ。私は助かったんだ』と」 「パイプがいっぱいついているし、両手両足は縛られ、しゃべれないし動けない。意思の疎通ができない上に、栄養をとるための鼻のパイプや胸に開けた穴がすごく痛くて。毎日痛い思いをした」

会話ができるようになったのは7月、この頃も男性は、集中治療室に入院していたといいます。

「息をするのがやっと。空気が吸えないっていうのがすごく苦しかった。ちょっと動いただけで痰がつまり、水も飲めず、会話もできなくて意思の疎通がとれないとストレスもたまり、こんなに苦しいなら死んだ方がいいって。」

その後、つらい治療を乗り越え、一般病棟でリハビリを開始。約半年間という長い入院期間を終えて、ようやく退院することができました。

■深刻な後遺症「太ももにずっと石を乗せている感じ」

入院前は飲食店に勤務していた男性。仕事への復帰を望んでいますが、深刻な後遺症に悩まされています。

「先生からは、酸素ボンベをつけておかないと酸素が少なくて倒れる可能性があると。普通の人の肺が100%ならまだ70%くらいしか機能していない。だから歩いたりすれば呼吸は結構苦しくなる」

男性は、影響があるのは肺だけではないと語ります。

「手がしびれている。両腕ですね。足の太ももにずっと石を乗せている感じ。あと足の裏が、歩くと骨と肉が重なってすごく痛い。体質も変わり、頭と顔にあせをすごくかく。今までそんなことはなかったんですが。(できないことが)いっぱい、いっぱいありますよ。どうやって生活していったらいいのかっていう状況。来年になって治ってくれたらいいなと」

新型コロナの重症化の恐ろしさを経験した男性が、いま、伝えたいこととは。

「マスクとうがいと手洗いを家に帰ったら必ずする。店に入ってもうがいできる状況ならうがいをする。家に帰ったら服を着替えて除菌する。本当に一人一人が気をつけないといけない。先生曰く、助かったのは奇跡だからと。実際に僕みたいに後遺症が残った人じゃないとわからないと思うんですよね。それを僕は皆さんにわかってもらいたいというか。 コロナってこんなに恐ろしいんだなって」

(2020年12月17日放送 『news zero』より)