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津波被害に備えて住民は事前避難へ…南海トラフ臨時情報「巨大地震警戒」とは

2022年3月14日 12:00
津波被害に備えて住民は事前避難へ…南海トラフ臨時情報「巨大地震警戒」とは
内閣府のVTRから想定CG
南海トラフの地震に関する臨時情報で、もっとも重要な情報が「巨大地震警戒」です。被災が想定される地域では、津波に備えて事前避難しないといけないケースもあります。この重要な情報とは。

■「巨大地震警戒」が発表されるのは"半割れ地震"が起きたとき…

南海トラフ地震の臨時情報で「巨大地震警戒」という情報が発表されるのは、プレート境界でM(マグニチュード)8以上の大きな地震、いわゆる"半割れ地震"が発生した場合です。

この"半割れ地震"というのは、過去に東南海地震が起きた後に連動して南海地震が起きたように、南海トラフ全体で同時に地震が起きるのではなく、南海トラフの想定震源域のうち東側半分だけや西側半分だけで地震が発生した場合をいいます。

南海トラフでここ300年ほどに起きた地震は、1707年の宝永地震、1854年の安政の地震、1944年と46年の昭和の地震の3回。

宝永の地震ではほぼ同時に全域で地震が発生。安政の地震では、はじめに東側で安政東海地震が起きて、およそ2日後に西側で安政南海地震が発生。昭和のケースでは、1944年に東側で東南海地震が発生、その約2年後に西側で南海地震が発生しました。

世界で2018年までに103回起きたM8クラスの大きな地震うち7回は、付近で7日以内に再び大きな地震が発生しました。半割れ地震が起きたら10数回に一度程度は連動して大きな地震が起きるかもしれないのです。

■"半割れ地震"が起きると社会はどうなる…

南海トラフで半割れ地震が発生すると、想定震源域の半分で起きた地震とはいえ被害は甚大なものになります。激しい揺れで建物がつぎつぎと倒れ、各地で火災も発生。山間部ではがけ崩れや山崩れも起き、さらに沿岸部では津波が襲い掛かり、被災地では懸命の救助活動が続くことになります。そして地震発生直後には、南海トラフの全域に大津波警報や津波警報が発表され、沿岸部では広く住民避難が行われます。

そんな中、「巨大地震警戒」の情報が発表されるのです。

地震が起きなかった地域では、最初の地震による大津波警報や津波警報を受けて避難していた人たちも、警報が解除された時点で次の地震に備えて今後も避難を続けるのか、自宅にもどって普段通りに生活するのか、判断を迫られることになります。

「巨大地震警戒」が発表されると沿岸自治体は、津波が襲った場合にすぐには逃げきれない地域にいる人たちに避難指示や高齢者等避難を出し、おおむね1週間避難を続けるように呼び掛けることになります。

■津波から命を守るため住民が事前避難する地域とは…

地震が起きてからの避難では明らかに間に合わないエリアについて、国は地震発生から30分以内に30センチ以上の津波が到達すると想定される地域としています。しかし、各地ではすでに避難施設などが整備されている所もあり、各自治体がそれぞれの事情に応じて事前避難すべき地域を指定することになっています。

2022年2月の段階で、日本テレビが南海トラフの沿岸自治体を調査したところ、全住民が事前避難をする地域や、逃げるのに時間がかかる高齢者等だけが事前避難すべき地域を指定した市町村は107に上っています。まだ検討中の市町もありますが、年内にほぼ指定が終わるとみられています。

■事前避難について各地の市町村で対応が分かれる…

事前避難の地域指定の状況は津波対策の進捗状況などによってかなり違っています。

早くから東海地震を想定した対策が進められてきた静岡県では、沼津市や西伊豆町のように津波襲来が待ったなしの地域では全住民が避難するように地域を指定していますが、多くの市町では高齢者など避難に時間がかかってしまう人だけを対象として地域を指定しています。中には、海岸線で堤防の建設が進んでいるとして事前避難地域を指定しない浜松市のようなケースもあります。また、伊豆市のように地域を指定したうえで、昼間は高齢者などだけが避難するようにして、大半の人が逃げるのに時間がかかる夜間には住民全員に避難指示を出すことを考えているところもあります。

一方、津波による甚大な被害が想定されている高知県では、住民全てが避難する地域を指定している市町が多くなっています。さらに、学校の休校についても南国市が市立の全小中学校を休校とするなど、高知県の多くの市町で学校を休校とする方針です。

香川県では、30センチ以上の津波が30分以内に到達する地域はないとされ、南海トラフの特別強化地域の指定は受けていませんが、沿岸部のすべての市町で高齢者等事前避難対象地域を指定しました。

このように各自治体の対応にばらつきがあることについて、住民が混乱するのではないかという指摘があります。臨時情報についてとりまとめた中央防災会議のワーキンググループの主査を務めた福和伸夫名古屋大学教授は、

「自治体ごとの事情があるので地域指定などの対応がバラバラになるのは仕方ない部分があるが、それぞれの都道府県とかブロック単位で調整し、ある程度対応を統一していくことが必要だと思う。また、居住している人がいないから地域指定しないという自治体が多いが、地域を指定しないなら今後家を建てようという人がでた時に、そこは危険なんだということを理解してもらえるような工夫が必要だ」と話しています。