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アルツハイマー病新薬「レカネマブ」販売……適用患者と薬価に“高いハードル”も 現役世代や「若年性認知症」も対象に

2023年12月21日 10:43

認知症の 1 つ、アルツハイマー病の進行を遅らせることが期待される新薬「レカネマブ」の販売が 20 日に始まりました。早期の症状に適用され現役世代も無関係ではなく、若年性認知症も対象になり得ます。

■対象は早期の症状…現役世代にも関係

徳島えりかアナウンサー
「20 日から、認知症の中でもアルツハイマー病の進行を遅らせる世界初の治療薬『レカネマブ』の販売が開始されました。ヘイゼルさんは若いですが、何歳ですか?」

澁谷善ヘイゼルアナウンサー
「25 歳です」

徳島アナウンサー
「25 歳となると『認知症なんてまだまだ関係ないわ』と思っているかもしれませんが、そんな皆さんにこそ考えていただきたいと思います」
「レカネマブは、アメリカに続いて世界で 2 番目に日本でも販売が始まりました。早期の症状が対象で、中高年の現役世代も無関係ではありません。年末年始に実家に帰り、父親や母親から『最近物忘れがひどくて』という言葉が出てくるかもしれません」

河出奈都美アナウンサー
「私は実家暮らしで、晩ご飯を毎日家族で食べています。50 代の母が『今日は晩ご飯いるの? いらないの?』と、さっき聞いたのにもう一回確認したということがありました。『あれ、さっき言ったよ』と伝えることがあります」

刈川くるみキャスター
「私は家族と離れて暮らしていますが、母から電話があり、『ちょっと祖母の様子がおかしい、認知症かもしれないんだよね』と相談されました。その時に『この薬ができたみたいだよ』と選択肢の 1 つとして、母に伝えたことはあります」

■18~64 歳の若年性認知症も対象に

徳島アナウンサー
「ひとごとではなくなってきていますね。さらに、現在 4 万人近くいる 18~64 歳の若年性認知症も対象になり得ます」

藤井貴彦アナウンサー
「私は 52 歳になりましたが、最近決断のスピードが遅くなったり、『スマホどこいったっけな』と思ったらポケットにあったり。少し衰えを感じているのか、認知症の始まりなのかが分からず、その差を見極めるのは本人では難しいなと思いますね」

徳島アナウンサー
「その辺り、分かりにくいですよね」

■臨床試験で推定された効果は?

徳島アナウンサー
「高額の新薬としての効果や、認知症の早期発見について見ていきます」
「レカネマブは、日本の製薬大手エーザイとアメリカの製薬会社バイオジェンが共同開発した薬です。認知症にはさまざまな種類があり、現在、推計約 600 万人の患者がいますが、脳が萎縮して記憶力や判断力が低下するアルツハイマー病はその約 7 割を占めています」
「レカネマブの最大のポイントは、認知症の症状を治すのではなく、進行を遅らせることが期待されるということです」
「効果は人によって違いますが、エーザイによると、これまでの臨床試験では使っていない人たちと比べた場合、全体として症状の悪化が 27%抑制され、平均で約 3 年、症状の進行を遅らせることが可能だと推定されるということです」

■保険や高額療養費制度の適用は?

徳島アナウンサー
「ただ、普及には大きく 2 つのハードルがあります。1 つは、非常に高額な薬価です。12月、厚生労働省の協議会で患者 1 人あたり年間約 298 万円と決まりました。月額で約 25 万円となります」

河出アナウンサー
「月額 25 万円、なかなか気軽に使えるものではなさそうだなと感じてしまいますが、保険などは利かないのでしょうか?」

徳島アナウンサー
「保険の適用はされることが決まりました。さらに、医療費を一定額に抑える『高額療養費制度』も使えます」
「例えば 70 代で年金などの年収の目安が 156~370 万円の人なら、患者負担の上限額が年間 14 万 4000 円。実質的な月額は 1 万 2000 円ということになります。薬の値段は月に 25万円ですが、患者の負担は 1 万 2000 円です」
「ただ、年齢や年収によっては高額療養費制度の対象にならないこともあります。現役世代の 50 代で年収 500 万円の人の場合、仮にレカネマブだけの薬価で単純計算すると通常の3 割負担となり、患者負担は月に約 7 万 5000 円になります」

■早期の患者のみ…投与の高いハードル

徳島アナウンサー
「そして、もう 1 つのハードルは、早期の患者のみという点です。認知症に詳しい東京大学大学院医学系研究科・岩坪威教授によると、対象となるのは認知症の中でも非常に限られます」
「認知症には大きく 4 つの段階があり、まだ認知症と診断される前の『軽度認知障害』や『軽度』『中等度』『重度』の認知症があります。レカネマブはこの中で『軽度の認知症』と『軽度認知障害』が対象で、早期の段階で投与することで効果があるとされています」
「しかも、この中でアルツハイマー病かつ、神経細胞を破壊する病気の原因物質『アミロイドβ』が検出されないと、この薬を使うことができません。そのため、投与のハードルが非常に高くなっています」

藤井アナウンサー
「はっきりと『軽度の認知障害だ』と認めることも難しいでしょうから、『これぐらいなら高額の薬を使わなくてもいいのでは』となり、そこのハードルも高くなってくるかもしれないですね」

■症状の「程度」「回数」「変化」に注意

徳島アナウンサー
「そうですね。手が出しにくいということもありそうです。そこで続いてのポイント、認知症の早期発見について考えます」
「自分や家族が早期の認知症状に気づくにはどうすればいいのでしょうか? 岩坪教授によると、軽度で共通するこれといった症状はなく、専門家でも難しいそうです。ただ、ポイントは物忘れなどの『程度』と『回数』と『変化』です」
「日付を思い出せない、冷蔵庫の物を忘れる、何だかぼーっとしている。こういった症状が日常に及ぼす程度、回数が気づきにつながるといいます。変化については、帰省などでたまに会う家族こそ気づきやすいといいます」

■「おかしい」…違和感があれば受診を

刈川キャスター
「私も実家に帰った時に母から『祖母と話してみてほしい』『少しおかしいなと感じたら、一緒に病院に行こうと思うの』と言われました。近くにいるからこそ早く気づける良さと、離れているからこそ分かること、それぞれあるんだなと感じました」

徳島アナウンサー
「そうですね。日々一緒に暮らしている家族だからこそ変化になかなか気づきづらいという面もあると思います。1 年前と比べて『去年と違うな、何だかおかしいな』と感じたら医療機関の受診を勧めていいとのことです」
「最初に相談するのは、普段お世話になっているかかりつけ医で OK だそうです。そこから専門医に紹介状を書いてもらいます。また全国で約 500 か所ある『認知症疾患医療センター』など専門機関に直接相談してもいいそうです」

■通院による点滴や MRI 検査の必要も

ヘイゼルアナウンサー
「(レカネマブの適用が)実際に決まった場合には、どのように投与されるのでしょうか?」

徳島アナウンサー
「条件をクリアして投与が開始された場合、2 週に 1 度、点滴で打つため通院が必要です。期間は原則 1 年半。その間にも、脳の部分的なむくみや小さな出血といった副作用の可能性があります。そのため投与開始後は 2 か月に 1 回ほど、MRI 検査を行う必要があります」

■新薬は「希望が持てる」…初期症状は

徳島アナウンサー
「では、私たちはレカネマブという薬とどう向き合っていけばいいのでしょうか? 16 年前、45 歳の時に若年性アルツハイマーと診断された藤田和子さん(61)に、初期の症状について経験を聞きました」

藤田さん
「いつもの自分とは違うな、という(印象です)。本当に自分にしか分からない感覚なんですよね、初期というのは。初期の方にとって有効な薬ができるのは、希望が持てることになるのかなとは思います」

■「私は大丈夫」は NG…今から準備を

藤井アナウンサー
「普段会っていない人が、例えばおばあちゃんの様子を見て違うなと思った時に、どうやって伝えるかも大切なんですよね。急に『おばあちゃん、病院行ってみよう』と言うと『私は元気なんだから、なんでそんなこと言うの』となってしまう可能性もありますよね」
「(周囲の)私たちもどう伝えるのか、どういう状況が続いているのか、じっくり見ていかないといけません。それは他人だけではなく自分のこともそうで、自分が言われた時に素直に受け入れられるのか、そういった準備がいくつも必要だなと思います」
「薬価も高いということもあり、投与までのハードル、どういう人が投与されるかというハードルも多いですが、薬ができたという道は 1 本できましたので、ぜひ『私は大丈夫』と排除せず、受け入れるという準備をしておくのがこれから大切かな(と思います)」

徳島アナウンサー
「認知症の患者さんにとってこの薬が希望であることは間違いありません。ただ、藤田さんはご自身の経験を踏まえながら、『治療で薬を使うことだけが大切なのではなく、本人が自分らしく生きることが最も大切』とおっしゃっていました」

(12 月 20 日『news every.』より)

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