十周年追悼式 福島県御遺族代表のことば
多くの大切な人の命を奪ったあの大震災から、十年が経過しました。十年の間に、被災地では、商店街など復旧・復興はかなり進んでいます。しかし、遺族の気持ちの復旧・復興は、悲しさのあまり、思うように進んでいないのが事実です。
私のふるさと福島県では、津波被害だけでなく、大震災の翌日に起きた原子力発電所の事故による避難も強いられました。今でも、避難生活をしている方や避難先で新しい生活を始めた方もいます。原発は、一度暴れると、人間の手に負えなくなり、復旧に時間がかかり、ふるさとに戻れない人を作り出すことを忘れないでほしいです。
私は、津波で、当時五歳だった次男・翔太を失いました。生きていれば中学三年。進路などたくさんの相談に乗ってあげられなくて残念です。私は、翔太の死を無駄にしたくありません。栃木県市貝町の「きじばとの会」のみなさんが、翔太の創作民話を作り、語り継いでくださっています。
また、私は、小学校に勤務していますので、学校現場を通して、自分が震災を経験し感じたことを子どもたちに伝え、命の尊さなどを教えていきたいです。このように震災を風化させない取り組みを行い、震災の教訓を語り継ぐ決意です。
近い将来、日本では、南海トラフ大地震が起き、大津波も発生するとされています。我々の教訓を生かし、必要な対策を取り、大切な命を落とす人や、大切な人を失い悲しむ人をひとりでも減らしてほしい、と強く望みます。
最後に、震災で亡くなった方々の冥福をお祈りするとともに、未だに続く行方不明者の捜索に関わる方々への御礼と、十年の節目の年に、追悼の言葉を述べる機会を与えていただいたことに感謝し、追悼の言葉といたします。
令和3年3月11日 福島県遺族代表 齋藤誠