十周年追悼式 被災者代表のことば
あの大震災から10年が経ちました。東日本大震災により亡くなられた方々に深く哀悼の意を表しますとともに、ご遺族の皆様に対しまして、謹んでお悔やみを申し上げます。
あの日、旅館の若女将として日々業務に励んでいた最中に大きな地震に襲われ、津波は私が暮らす大好きなまちを一瞬でのみ込んでしまったのでした。私の生活の中心にあった旅館が津波により全壊し、目の前には苛酷な運命を背負うことになった街と人の姿がありました。すっかり様変わりしてしまった苦しい状況の中で、日本各地、そして世界中の方々からたくさんのご支援と温かいお言葉を頂いたおかげで、少しずつ生活を取り戻し、希望を見いだして前を向くことができました。
私の暮らす宮古市も、前を向いて歩み始めています。度重なる災害で甚大な被害を受けた三陸鉄道は、その度に立ち上がり、令和2年3月にはリアス線全線運行再開を成し遂げました。地元住民や観光に訪れたお客様の幸せのために、今日も走り続けています。
私は地域の皆様と共に、地元宮古市、そして三陸地域の観光振興に貢献するため、瓶ドンをはじめ地元の旬の食材を活かした料理を提供したり、宮古の歴史を広く伝える活動に尽力しています。
全ては、私たちのために多大なる御支援をくださいました皆様への感謝と、直接訪れていただいたお客様の楽しい食と旅のお供がしたいという思いからです。そして、私の故郷、宮古が誇る浄土ヶ浜が宝だと心から思っているから頑張ることができます。これからも、この場所で、皆様の心に残る貴重な時間のお供をさせていただきたいと思っています。
大震災から10年が経過しても、あの悲しみは決して癒えることはありませんが、私たちの手で大好きなまちを守り、未来に向けて進んでいきたいと思います。結びに、大震災で犠牲となられた皆様のご冥福をひたすらにお祈り申し上げますとともに、被災地の一日も早い復興と被災された方々のご平安をお祈り申し上げ、被災者代表のことばといたします。
令和3年3月11日 被災者代表 近江智春