十周年追悼式 岩手県御遺族代表のことば
「東日本大震災十周年追悼式」岩手県御遺族代表のことば。岩手県遺族代表・佐藤省次さん(71)
「行ってくるよ」「行ってらっしゃい」。十年前の三月十一日の朝、母と交わした最後の言葉でした。私たち家族は、私と妻と長男、そして父と母、叔母の六人が暮らしていましたが、両親と叔母の三人を含め、十一人もの親族が津波の犠牲になりました。
あれから十年がたちました。よく「十年一昔」と言いますが、私たち家族にとって、この十年は、いろいろな思いが交錯する長いようで、また短いような複雑な思いが駆け巡る歳月でした。
今、私たち家族は自宅が被災した岩手県山田町の隣の宮古市に住んでいますが、山田町を訪れる度に、津波に襲われた故郷の海の景色を、大震災の前とは違った思いで眺めています。
最近も各地で、地震や台風、大雨などによる被害が続いています。その被害の様子が報道される度に、十年前のことを思い、被災地の皆さんに「負けるな、負けるな」と語りかけています。
十年前のあの被災地で、昼夜を分かたず懸命に行方不明者を捜索していただいた自衛隊の皆様、海上保安庁の皆様、警察の皆様、消防団の皆様、そして、全国から駆けつけて町の清掃などに尽力していただいたボランティアの皆様、誠に有り難うございました。いつまでも忘れません。
私たち家族も、全国や諸外国からの温かいご支援に感謝し、また平穏な日常に感謝し、強く生きていくことを、犠牲となられた御霊にお誓いし、遺族代表の言葉といたします。
令和3年3月11日 岩手県遺族代表・佐藤省次