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星出彰彦さんに聞く「宇宙飛行士の資質」

2021年4月21日 20:29
星出彰彦さんに聞く「宇宙飛行士の資質」

まもなく3度目の宇宙へと飛び立つJAXA宇宙飛行士、星出彰彦さん。今回は国際宇宙ステーション(ISS)の船長を務める予定にもなっている。船長としての抱負や心構えについて、元ラグビー日本代表キャプテンの廣瀬俊朗さんとともに、「宇宙キャスター」榎本麗美が話を聞いた。(前編から続く)

――この秋には13年ぶりに宇宙飛行士候補者の募集が予定されています。今回の募集では、応募要件の見直しが検討されているということですが、具体的にどのような検討がされているのでしょうか?

【星出さん】
みなさまからご意見を頂き、応募条件等の検討の参考にさせていただています。我々宇宙飛行士が宇宙に行くようになり、スペースシャトルの時代からISSで実験をする時代になり、今回のように、民間の宇宙船が宇宙に行く時代になってきました。その先には、月探査、火星探査という計画も議論しています。多様な人材雇用や働き方が社会で推進されていることを踏まえ、応募要件の障壁を可能な限り小さくし、多くの方に応募いただきたいということから、今回の応募条件等の検討につながっていると思います。

――非常に厳しい条件となっている応募の要件が、もしかしたら緩和されるのではないか、年齢制限もなくなるのではないかなどと噂されているのですが、窓口が広くなるということでしょうか?

【星出さん】
もちろん多くの方に応募していただきたいということがあります。候補者として選ばれるにあたっては、必要な能力を宇宙に行くまでに身につける必要や、それに立ち向かうことができるチャレンジ精神を持っている人である必要があります。また、宇宙飛行士だけではなく、地上の管制官や、研究者など、世界中の人たちと一緒に仕事をしますので、大きなチームで、チームワークをしっかり発揮できる人が求められているのではないでしょうか。

――次選ばれる宇宙飛行士は、月、さらに火星を目指すとおっしゃいましたが、未来の宇宙飛行士に必要な資質は、ずばり何でしょうか?

【星出さん】
チャレンジをすることを恐れないというのが大事だと思います。より遠くへ行くということは未知の領域です。60年前にガガーリン宇宙飛行士が飛行して、当時は宇宙に行くこと自体が未知の領域でした。今は宇宙や、ISSに行くことは、私たちの中では未知と言うよりかは日常に近いものだと思っています。ただこれが、月、火星に行くということとなると想定外のことが起きるのではないかと思うので、それに対応できる、あるいは対応する意志があることが大事になってくるのではないでしょうか。

――なるほど。もしかしたら、廣瀬さんは、その資質にあてはまるんじゃないかなと思うんですけれども。

【廣瀬さん】
ちょっと待ってください。僕がこの歳からチャレンジですか。

【星出さん】
大丈夫です。年齢制限はないはずです。

【廣瀬さん】
すごい興味あるし、子供のころ、宇宙飛行士ってめちゃくちゃかっこいいなと思っていましたが、自分が行けるのかなと思っていました。

――ぜひともチャレンジしていただきたいですよね、星出さん?

【星出さん】
体力は全然問題ないでしょうし、健康とチャレンジ精神と持っておられますので、是非、お待ちしています。

【廣瀬さん】
ありがとうございます。

――星出さんご自身は、宇宙飛行士の試験には3回目で合格されて、努力して夢がかなったということですが、廣瀬さんが、もしかしたら宇宙飛行士試験を受けるかもしれないので、星出さんから何かアドバイスがあればお願いします。

【星出さん】
白いジグソーパズルは完成させるっていうのが大事だと。

【廣瀬さん】
ちっちゃいやつですよね。むちゃくちゃ大変な。

【星出さん】
私の試験の時に、白いジグソーパズルが課題で出され、誰も時間内に完成させることができませんでした。私は悔しくて、試験は終わったものの、「もう一回やらせて」と言って、やっていました。

――それは合格したときの試験でということですか?

【星出さん】
そうですね。

――その粘り強さとかも評価されたのかもしれないですね。

【廣瀬さん】
成長志向とかですかね。

【星出さん】
それはないと思います。試験課題としては時間切れで、評価は終了していました。
話は変わりますが、実際に試験を受けた方々、本当にみなさん優秀な方ばかりで、未だに、なぜ私が選ばれたのか、自分自身よくわかっていません。選ばれた後に多くの失敗をし、そこから学んでいくというのが、この仕事をしていてすごくありがたいなと思うところで、実は、今日も失敗をして、そこから学びました。日々勉強だなと思います。

――星出さんがそう感じられているというのも、勇気をもらいますね。

【廣瀬さん】
そうですね。しかも、まさに今日も失敗して、そこから学ばれているんだということが、とても身近に感じられて、勇気をもらいました。

(後編に続く)