家族8人が陽性も 医療現場の最前線は今…
愛知県では、新たに624人の感染が確認され、2日連続で600人を上回りました。感染が急拡大する中、この一週間ほどで入院患者が急激に増加したという医療現場の最前線です。
ビニールカーテンには、立ち入り禁止の文字。防護服姿で行われる、回診。愛知県大口町にある、さくら総合病院のコロナ専用病床です。
医師
「息苦しい?」
中等症の患者(46)
「いま?(体温は)40.3度」
入院しているのは、酸素吸入が必要な中等症の患者。40代の男性は、撮影日の前日に入院してきました。
医師
「ご家族が10人いるんでしたっけ?」
中等症の患者(46)
「そう」
医師
「10人のうち、PCR陽性が8人?」
中等症の患者(46)
「8人」「息子や娘、若い、大丈夫ね、そんなに熱…」
医師
「出てない?そうですか」「でも、あなたも若いよ?」
中等症の患者(46)
「でも、だめ」
この日は、用意された20床のうち、18床が使用中。
さくら総合病院・小林豊院長
「多分、週明けには埋まるよ」「(入院の増え方は)一気ですね。この一週間ぐらいですよね」
満床になれば、第3波のピーク時以来。しかし、同じ満床でも、当時と今では、様子が全く異なるといいます。
高齢者
「ないね~」
看護師
「ないよ~」
高齢者
「不思議だね」
今年1月の時点では、入院が必要なほど悪化するのは、高齢者が中心でした。
看護師
「杖をさがしていました。おそらく高齢者施設に置き忘れている。認知症があるので、夕方になると、やはり不安になったり」
自分がコロナに感染していること、許可なく病室から出ては行けないことを忘れてしまう、認知症の患者もいました。入院患者の平均年齢はおよそ85歳。それが、今は60歳ほどまで下がっているというのです。10代の入院患者も――。
50代の男性は、20代の息子から家庭内感染したとみられています。
中等症の患者(52)
「毎日、熱が全然引かなくて、当然息苦しいのもあるし、食事もとれないし、もう本当に…時間がたてば良くなるものなのか。最悪、命に…危険を感じて、遺言書か何か、書いておいた方がいいかなとか、一瞬、走りましたけどね」
小林豊院長
「死がよぎった?」
中等症の患者(52)
「ときもあります」
小林豊院長
「患者が若年化しているのは間違いなくありますし、持病がない人が、結構ひどい肺炎になって入院してくることが、すごく見受けられる。第3波のときに、はやっていた病気とは違う病気に見えますね。間違いなく第4波のこの勢いは、変異株によるものだと考えていい気がする」
12日の時点では、分かっているだけで、入院患者の7割が変異株だといいます。急速に増える患者。急遽、院長も毎日、病床を見て回ることになりました。季節が変わったこともあり、勤務は過酷さを増しています。
小林豊院長
「ほら汗が、中が汗だく」
看護師
「汗だくでございます」
小林豊院長
「もうダイエットスーツ状態なんだよ」「休憩ないでしょう?」
看護師
「休憩きょうは…」「なかったですね」「15分ぐらい」
小林豊院長
「気持ちだな」
看護師
「本当、気持ちで頑張ってます」
小林豊院長
「大変だよね」
看護師
「第4波はしんどいですね」
ついには、これまでにないような救急搬送も。
小林豊院長
「豊川から救急搬送」「80キロ離れてうちまで救急車で搬送するという時点で、これが文字通り医療崩壊ですよ、完全に。平時だったら、こんな遠くから救急搬送というのはあり得ない」
そんな中。院長はこの日、患者に伝えたい情報がありました。
小林豊院長
「聞きました?濃厚接触者にあたるデイケアの利用者は、みんな陰性」
中等症の患者
「よかったです。私もそれが心配で心配で。きょう電話をもらって『大丈夫だったから』って」
小林豊院長
「安心してください」
中等症の患者
「よかった」
デイケア施設を利用中に、「夫の陽性が確認された」と連絡を受けた女性。自身も感染が確認されたため、施設のスタッフや利用者が濃厚接触者となっていました。
中等症の患者
「本当に、施設にも迷惑かけましたしね」
小林豊院長
「そんなのお互い様よ」
中等症の患者
「他の人にも本当に迷惑かけたので、顔向けがならない」
小林豊院長
「違う違う。逆に言うとね、逆の立場にもなり得るんです。こんなの大災害だもん、みんな被害者よ。『ごめんね』って言って、笑顔で(また施設に)行ってきてよ」
いつ誰が感染するか分からない今。思いやりが求められます。
小林豊院長
「元気に帰ってもらいます。そのつもりで」
中等症の患者
「ありがとうございました」