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ワクチン未接種 集団接種で不安な看護師は

2021年6月4日 21:00
ワクチン未接種 集団接種で不安な看護師は

全国で新型コロナウイルスのワクチン接種が進む中、東京・町田市の集団接種会場で、ワクチンの打ち手として働く看護師が、複雑な心境を明かしました。


■幼いころに入院生活。集団接種の現場で働く看護師

今月から東京・町田市の集団接種会場で、新型コロナのワクチンの打ち手として働く看護師の高橋さん(仮名・40代)。幼い頃の長い入院生活。この時のつらい経験から、看護師を目指したといいます。

「自分が看護師になったら患者の気持ちをわかってあげられるのではないか」

看護師になってからは、総合病院や在宅介護で働き、子育てをしながら医療現場に携わってきました。

去年春、新型コロナが流行しだした初期の頃は、今ほど医療体制が整っておらず、発熱した人が診療に訪れた際、現場では困惑の声が上がっていたといいます。

そして、去年4月。全国に一度目の緊急事態宣言が出された頃、高橋さんは勤め先のクリニックとの契約が終了したタイミングで、今後も何らかの形でコロナと戦う現場に携わりたいと考え、関東などの軽症者を収容するホテルで、感染者の看護をしてきました。

そんな中、今年3月に町田市の集団接種会場で働く看護師の募集を知り、応募を決断したといいます。


■決断の背景には看護師としての強い思いが…

自らワクチン接種の打ち手として集団接種会場で働くことを決めたその理由の一つに、地元・町田市での看護師としての強い思いがありました。

コロナ禍になってから様々な医療現場で働いてきましたが、自身が住む町田市での勤務はなかったといいます。

「コロナ禍になってから、ずっと地元に貢献したいという思いがありました。そんな中、ワクチン接種が始まるとなり、携わりたいと思ったんです」

この一年、看護師としてコロナの医療現場に関わってきた高橋さん。医療逼迫を目の当たりにし、現場で働く医療従事者の大変さや苦しさ、抱える問題の大きさを改めて感じたといいます。

また、医療現場だけでなく、飲食店の休業要請など、経済面にも大きなダメージを与えた新型コロナ。企業や飲食店で働く友人から苦しむ声も聞いてきました。

「医療逼迫も経済回復もワクチンに尽きる。これからは、感染させない予防という現場で関わっていきたいと感じるようになった」と高橋さん。


■ワクチン未接種のまま現場へ 家族からも心配の声

感染拡大防止のためにワクチンの打ち手として関わることを決めた高橋さんですが、気がかりなことが。自分自身はワクチンの接種をできていません。そのまま今月勤務日を迎えることになりました。 

町田市からは、当日会場でワクチンが余った場合に接種が可能だと説明がありましたが、実際に余るかどうかわかりません。

「接種をしてもすぐに免疫がつくわけではありませんので、時間がかかりますし、余ったらなんていう対応は遅すぎる。余らなかったら、じゃあいつ打てるんだという状態で、ずっと仕事をしなければならない状況ですよね」

打ち手自身がワクチンを打っていない状態で働くことで、もし自分が感染していた場合に、会場に来た高齢者にうつしてしまうのではないかと危惧しているのです。

「せっかく予防のために行っているのに、そこで感染者を増やしては意味がないと思います」

感染を広げないためにも、集団接種会場の医療従事者やスタッフらへのワクチン接種は急ぐべきではないかと話しました。

また、家族からも心配の声が。高橋さんの旦那さんは、こう話します。

「接種会場で不特定多数の人に常に接するという状態を考えると非常にリスクがあるかなと思います。看護師が少ないと言われている中で、もしこれで感染してしまったら、また一人大事な看護師が減っていくわけですから。そう考えると接種会場で働く人は打つべき対象者ではないかと思います」


■お互いが安心できるために ワクチン接種が急がれる

先月末、目黒区の集団接種の会場で、受付を担当していた運営スタッフの一人が新型コロナに感染。区によりますと、このスタッフはワクチンを接種していなかったといいます。感染経路は接種会場ではありませんでしたが、スタッフ3人が濃厚接触者となってしまいました。

高橋さんはこのニュースを聞き、いつか接種会場が感染経路になり、クラスターが発生するという最悪の事態が起きかねないと、危機感を覚えていて、一刻も早い接種が必要だと話しています。

「『なぜ現場に行くの?』と聞かれたこともありますし、医療に携わる者としてすごくつらいことを言われることもありました。ですが、医療現場が困っていたら、そこへ行って助けになれば、それでいいと思っています」

集団接種初日を終えた夜、再び高橋さんに話を聞いてみました。

「ワクチンを打つまでの緊張感と打てた安堵感から、会場で涙される高齢者の方もいました。高齢者の方にとって、予約から実際に打つまでの道のりは長く、大変だったんだと思います」

また、高橋さんは当日余った一回目のワクチンを打つことができたということです。

新型コロナウイルス終息の鍵となるワクチン接種。ワクチンを打つ側も打たれる側もお互いが安心し、感染者減少に向けてより多くの人への接種が急がれます。