予測困難「線状降水帯」精度高める研究続く
気象庁は、17日から大雨による被害を防ぐため、集中豪雨をもたらす「線状降水帯」が発生した場合に緊急の情報を出すことになりました。予測するのが難しいとされる「線状降水帯」ですが、精度を高めるため、新たな取り組みが始まっています。
◇◇◇
去年、西日本から東日本にかけて、記録的な大雨が各地を襲いました。特に熊本県では川が氾濫しました。大勢の死者、行方不明者が出る災害となりました。
この集中豪雨は「線状降水帯」によってもたらされたのです。このときの気象レーダーの様子をみると、強い雨を示す赤色が次々と九州地方にかかっています。そして、線を描くようにとどまっているように見えます。これが「線状降水帯」です。
そもそも雷を伴う激しい大雨は、発達した積乱雲が引きおこします。積乱雲は通常、移動しながら30分から1時間ほどで消滅します。しかし、風や地形などの要因で新たな積乱雲が次々と発生し、同じ場所で長い時間、大量の雨を降らせます。
危険な「線状降水帯」を事前に予測できないか、防災科学技術研究所などのチームによる研究が進められています。福岡県東峰村は、研究の実証実験に参加しています。4年前、「線状降水帯」による大雨の被害を受け、3人が死亡しました。
今、村には「線状降水帯」が発生しやすい状況にあるかを、過去の統計から予測した情報が送られてきます。「線状降水帯」の発生が予想されるエリアは、青色の楕円で囲まれています。赤色の楕円になるとすでに発生していることを示します。
福岡・東峰村の阿波康成防災管理官は「(住民の避難を)考える要素のひとつというか、いろんな情報が入ってくる中で、見える部分が増えてきますから、(予測情報は)ありがたいものではありますね」と話しています。
村では、危険な雨が降る可能性を早く知ることで、住民の早い避難につなげたいと考えています。
◇
一方、予測精度を高めるための研究もあります。福岡大学は、大気中の湿った空気の量をはかる「水蒸気ライダー」を設置しました。
福岡大学・白石浩一助教によると「どれだけ湿った空気が入ってくるかというのを、リアルタイムの情報をきちんと『水蒸気ライダー』で押さえることで、より正確な予測につながる」ということです。
積乱雲のもととなる水蒸気の量を把握することで「線状降水帯」が発生するのかどうかを予測し、精度を高めようとしています。「線状降水帯」を的確にとらえ、住民の逃げ遅れを減らすため、日夜、研究が続けられています。