熱海土石流…一家で避難生活「きついです」
6日午後3時半ごろ、大規模な土石流が発生した静岡県熱海市で、捜索の現場に動きがありました。
重機のすぐそばで、警察がブルーシートを囲んでいました。およそ1時間後、救急隊員がブルーシートの中に入りました。関係者によりますと、女性とみられる遺体が見つかったということです。
6日、新たに男性1人、女性2人合わせて3人の死亡が、確認されました。これまでに7人が亡くなり、そのうちの1人が小磯尚子さん(61)であることが6日夜、分かりました。熱海市と県警によりますと、いまだ27人の安否が分かっていません。
捜索は当初、午後6時までの予定でしたが、午後7時半ごろまで続けられ、新たに女性の遺体を発見したということです。
土石流の発生から4日目、84時間以上が経過しています。
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海からすぐ近くの場所には、土砂とともにマットレスや自動販売機など、かなりの量のものが押し流されてきていました。泥は、足をあげるのが困難なほどの粘り気がありました。
茶色く濁った水が勢いよく流れる中、6日も警察と消防、自衛隊による救助活動は、1100人態勢で行われました。
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いとこだという太田洋子さんの安否が分からない高橋薫さんは─。
高橋薫さん
「色々と情報聞いたら、(流された)家の中にいとこの洋子がいたと。洋子とはいとこの中でも一番仲がいいし、普段も洋子のうちには月に何回かいろんな食べる物、果物とか野菜とか持って行ってあげたり」
「悔しいです。悲しいです。本当に今は何とか早く見つかってほしいです。思い出しちゃって」
「同級生も出てこないんですよ(安否不明の)小川徹が。まだ見つかっていないし。何とか早く見つかってほしいです。きょうも電話したけど出ないです」
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規制線の中には、妻の路子さんを捜す田中公一さんの姿がありました。
田中公一さん
「今、自宅のところに皆さん入ってくれているもんで、いろんなものを出しながらそれを上から見ているという。静観するしかないんです。早く出してあげたいなっていう、その気持ちしかありません」
少しでも近くでと、自宅の様子を見に向かいました。
近所に住む、路子さんを知る人は─。
田中路子さんを知る人
「若々しくて明るくて、お孫さん来て遊んでいたりとか、いつもエプロンかけて。本当に早く見つけてあげてほしい」
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泥がこびりついた家の片付け作業に追われる住人は─。
「誰のか分からないんですけど」
「(Qこれは流れ着いてきたもの?)そう、流れ着いてきたもの」
見せてくれたのは、持ち主の分からないアルバムです。
「きれいにして、保存しておこうかと思ってまして」
こう話す男性の知り合いにも、安否が分からない人がいるといいます。
片付けていた住人
「私の同級生のお姉さんの夫婦、松本さんという夫婦が行方不明です。連絡が取れていないので。ご夫婦の娘さん、30代の方なんですけど、その方も巻き込まれたんじゃないかって言われていて」
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家が崩れ、橋から土砂があふれ出ていた逢初橋付近で、建物の1階部分が埋まるほどの高さまであった泥は、6日、重機によって撤去されました。それから道路は、表面が見えてくるようになりました。
店が土砂に埋まった岡本尚子さん(68)
「(Q今どういった作業を?)今、作業員の方が土砂をみんな出してくださったので、あとはもうお水が出ないと。全部洗わないとどうしようもないし」
家族で70年、クリーニング店を営んできた岡本さんは、当時─。
岡本尚子さん
「(窓ガラスが)割れて(土砂が)自分の膝すぎて腰の近くまで来た。もう四つん這いで向き変えて、四つん這いで必死に逃げました」
土砂がもう少し奥まで来ていたら、命は無かったといいます。今は、毎日、泥と暑さと戦っています。
岡本尚子さん
「ガスはずっと止まってます。水道はタンクつかって、飲料水だけ運んでます。日常とはほど遠いけど、早く復興して、行方不明の方も見つかってほしい」
伊豆山地域のおよそ1100軒で、断水が続いています。
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規制線の先にある自宅に一度荷物を取りに戻る人の姿も見られました。着の身着のまま逃げたという女性は─。
避難生活を続ける女性
「パジャマのまんまで『早く逃げろ』って、言われて出てきちゃったので」
「(きょうはどういったものを取りに自宅に?)お財布とかも何も持ってこなかったので、お財布と薬と。近所のおじさんも薬が無くて困っていたので、薬取ってきてって言われて薬持ってくるのと、足が悪いので杖という感じ」
荷物を取りに来た鉄地河原さんの自宅は─。
鉄地河原淳さん(48)
「奥が家なんですけど、駐車場のところまで当時は土砂が。直撃してたら、僕らも助かってない」
家のギリギリ手前まで、土砂が押し寄せていました。
「お向かいさんの家は、完全に土砂で入れない状況になっています」
今は、家族4世代9人で、妻が働くホテルで避難生活を送っていますが─。
一家9人で避難生活する妻・由香さん(44)
「私たちのいるところが、市の指定している避難所じゃないので、救援物資が一切来ない」
救援物資が無いため、6日は買い出しに来ていました。
一家9人で避難生活する鉄地河原淳さん(48)
「今回は保存がきくのを買わないと。調理ができないのでね」
9人家族の避難生活で、一番大変なのが食事だといいます。
男性「(Qこれでおよそ何日分?)何日どころか4食分くらい」
女性「明日の夕飯まであればいいかなって」
男性「(この生活続くと)きついですね」
子供「オムライス食べたい、ママの」
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6日午後7時時点、ホテルや避難所に避難している人は578人、被災した家屋は122棟にのぼるということです。
7月6日放送『news zero』より。