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子宮移植を容認 「やっと一歩」喜びと葛藤

2021年7月15日 10:45
子宮移植を容認 「やっと一歩」喜びと葛藤

日本医学会は14日、母親らからの子宮の生体移植について、研究目的で行うことを容認しました。子どもを生む選択肢がなかった女性にとって希望になりますが、親族からの提供というハードルや、課題もあります。生まれつき子宮のない女性に胸中を聞きました。

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■子どもを生む選択肢という「希望」

生まれつき子宮がない、または病気で子宮を摘出した20~30代の女性は、国内で推計5万人ほど。30代の女性、斉藤さん(仮名)もその1人です。

「10代の時に、『あなたは子宮が見当たりません』と言われて、なんかこう、ぴしゃっと締め出されたような感じだったんです。『もう無理です』みたいな」

こう振り返る斉藤さんは17歳の時、生まれつき子宮がない「ロキタンスキー症候群」だと分かりました。

「女性としての自信が全くなかったので、なかなか恋愛するとなると、踏み出せない部分があったりとか…」と明かします。

これまで子どもを生むという選択肢を持てなかった斉藤さんにとっての希望が、子宮移植という方法です。

■「親族となると…」複雑な思いも

子宮移植とは、子宮がない女性の卵子と、パートナーの男性の精子を受精させ、受精卵を凍結しておきます。そして親族や脳死の提供者から子宮を摘出し、それを女性に移植。移植した子宮に受精卵を戻し、妊娠・出産するものです。

日本医学会は14日、この子宮移植について、母親らからの生体移植を研究目的で行うことを初めて認めました。

斉藤さん
「私みたいな子宮がもともとない人っていうのは、自分が(子どもを持つ・持たない)選択ができるっていうことが、一番喜ばしい。やっと一歩って感じですよね」

ただ親族から提供を受けることについては、複雑な思いもあるといいます。

「正直、やっぱり誰でも、特に親族となると、安易に自分のエゴで『欲しい』とは言えないし、『提供したい』と言われてもなかなかリスクもすごく大きいですし」

■脳死移植に向け「法改正」提言へ

日本医学会は、原則として他の臓器同様、子宮も脳死からの移植を可能にするよう、法律の改正を提言するとしました。

国内では慶応大学が、動物実験ですでに赤ちゃんの出産に成功しています。同大は子宮がない女性5人を対象に、母親ら親族からの生体移植を、研究として来年実施する予定です。

日本医学会は、今後も課題を検証していくとしています。

(7月14日『news zero』より)