相対的貧困 ~扉の中のSOS~
扉の中の見えない貧困…フードバンクの1箱が、笑顔をそっと届けます。
土田雅穂さん。5年前貧困家庭の子どもを救いたいとフードバンクを立ち上げました。部屋の中に積まれたたくさんのお米、缶詰や調味料…すべて寄付されたものです。集まった食料品は経済的に困っている家庭へと配られます。
土田さん「子どもにおかわりさせてあげられない。なんてつらい。こんな現実、誰も知らないと思いますね」
支援している家庭は200世帯ほど。
被支援者「ああ、すごい(笑)ありがとうございます」
土田さん「このネギおいしい!」
被支援者「へ~この前いただいたのもすごいおいしかったです」
渚さんも、支援を受けている1人。夫と離婚し小学生の娘と2人暮らし。
渚さん「きんぴら大好きで、好物をいっぱい作れるっていう、材料がいっぱいあるので。超大盛り!大家族みたい!」
娘さん「え、すごーい」
フードバンクの食材がこの日の温かい夕食に。
娘さん「なんかいつもよりおいしそう!ん!おいしい!お肉やわらかい~」
ふびんな思いはさせられないと休みなく働きましたが、持病のリウマチが悪化。働けなくなると生活は困窮。
渚さん「どん底に落ちた気分でした。子どもどんどん大きくなるのにどうしようみたいな…」
思うように働けず、月の収入が5万円ほどの時も。貯金が底をつきかけた時、フードバンクの案内を目にして、支援をお願いしました。
障害者の福祉施設で週5日。臨時職員として働いている渚さん。月の手取りは11万円ほどです。桜の季節…困窮する家庭は“進学時の負担”に追い詰められます。この日は進学する中学校の制服採寸会。
渚さん「一気にお姉さんになりますよね」
娘さん「これは結構ちょうどよかった」
娘のために半年以上かけて、費用を準備してきましたが…
渚さん「思ったよりもいってました。まぁでも、しょうがない。(体操着)2枚ずつ買うって頭がなくて…そうだね~洗い替えいるもんね」
いま日本で所得が低く標準的な暮らしができないとされる相対的貧困にある子どもはおよそ7人に1人。
土田さん「新発田だけでこんなあるでしょ。もっと本当にいるんですよ。フードバンクがもっと盛んになって個々の人たちにどんどん携わっていく。そういう社会をつくっていかなきゃいけないんじゃないのかな」
子どもの未来を閉ざさぬように…土田さんは、1箱の食料を届け続けます。
「土田です。これお米ね!」
入学式の日を迎えた渚さん親子。中学校生活に必要なものは、何とかそろえることができました。
渚さん「きのうも(娘が)赤ちゃんの時の夢とかみて。あぁ中学生だった!と思って起きて。大きくなったなぁと思って…」
扉の中のSOS、聞こえますか?懸命に生きる親子の明日が明るいものでありますように。
2020年7月26日放送NNNドキュメント『相対的貧困~扉の中のSOS~』(テレビ新潟制作)を再編集しました