冬に要注意「ヒートショック」防ぐには
冷え込みがぐっと厳しくなってきましたが、この時期、特に気をつけたいのが、家の中でも温度差が激しい場合に起こる「ヒートショック」です。どのような人がなりやすいのか、どうすれば防げるのか、詳しく解説します。
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■「ヒートショック」どういう状況で起きやすい?
14日朝の東京都心の気温は3.6度と、今季一番の冷え込みとなりました。朝晩中心にかなり寒くなってきました。
今後1週間の予想気温を見てみます。15日は最低気温が3度まで下がる予想で、16日は4度、17日は6度と少し上がります。ただ、その後は18日が3度、19日は2度となる予想で、師走らしい冷え込みとなる見通しです。
これだけ寒いと、温かいお風呂に入りたくなりますが、ここで注意が必要です。
急激な気温の変化によって、血圧が乱高下して心臓や血管の疾患が起こることを「ヒートショック」といいます。最悪の場合、死に至るケースもありますが、このヒートショックは、寒い冬に起こりやすく、家の中でも特にお風呂が危険です。
消費者庁が発表した資料によると、65歳以上の高齢者で入浴中に気を失うなどして浴槽内で亡くなった人数は、夏場と冬場で大きな違いがあります。1番多い1月は、8月の約9倍です。
年間では5000人以上が亡くなり、これは交通事故の死亡者数の2倍以上にあたるということです。
ただ、ちょっとした工夫でリスクをかなり下げることができます。
まずは、ヒートショックがどういう状況で起きやすいのかを見ていきます。
暖房のきいた暖かい部屋から、寒い脱衣所で服を脱いで、寒い浴室に行く。その後、熱いお風呂に入る、といった行動で、血圧はどうなるのでしょうか。
国際医療福祉大学の前田眞治教授によると、人は寒さや暑さに直面すると、無意識にぐっと息を堪えて身構えるそうです。これにより血管がキュッとしまって、血圧が上がりやすくなってしまいます。
例えば、暖かい部屋では血圧は安定していますが、寒い脱衣所で服を脱ぐと、体が熱を逃がさないように血管をぐっと収縮して、血圧が一気に上昇します。そして、寒い浴室でさらに血圧が上昇します。
その後、熱いお湯に入る時にも、お湯の熱が一気に全身に回らないように血管を引き締めて、血圧が上昇します。そして、体が温まってくると、それまで縮まっていた血管が急速に広がって、急激に血圧が下がるということです。
こうした急激な血圧の変化によって、一時的に脳内に血液が回らない貧血の状態になり、一過性の意識障害を起こすことがあります。
この意識障害が、浴槽内で溺れて死亡する事故の原因のひとつだと考えられています。
■寒い・暖かい地域 リスクに違いは?
高齢者が「ヒートショック」に気をつけたほうがいい、ということは知られていますが、その他にどのような人にリスクがあるのでしょうか。
まず、住んでいる地域によって、リスクに違いがあるかをみていきます。
東京都健康長寿医療センター研究所による、高齢者1万人あたりで入浴中に心肺停止状態となった件数を都道府県別にみると、発生件数が多い順から香川、兵庫、滋賀、東京、和歌山となっています。
反対に最も件数が少ないのが沖縄です。その次が北海道で、山梨、青森、高知…という順番になっています。
寒い地域で起こりやすいわけではないということです。寒い地域ほど、家の中を暖かくする環境が整っていることが、要因のひとつと考えられています。
つまり、どこに住んでいても危険はあり、過度な寒さ対策は必要ないと油断しないほうがいいということです。
これをおさえたうえで、杏林大学医学部付属病院の須田医師によると、次のような人はヒートショックが起こりやすいので、要注意ということです
1.心臓や脳に持病がある人、肥満や高血圧、糖尿病や不整脈などがある人
2.「一番風呂」に入ることが多い人
浴室がまだ温まっていない状態で入るので、温度差が激しいためです。
3.熱めのお風呂で長湯するのが好きな人
4.飲食後に入浴する人
特に飲酒後は、体温の調節機能が鈍ることがあるため、要注意ということです。
■ヒートショックを防ぐ5つの方法
では、ヒートショックを防ぐためには、どうしたらいいのでしょうか。
1.入浴前に脱衣所や浴室を暖めておく
暖房器具を使うのが難しい場合や無い場合でも、お風呂をかきまぜて蒸気を立てて、ふたをはずしておくということや、服を脱ぐ前にシャワーを出して暖めておくことで、寒暖差がなくなるように工夫することが大事です。
2.お湯の温度は41度以下・つかる時間は10分まで
寒い時期は熱いお風呂に入りたくなりますけど、41度以上で10分入浴すると、体温が38度近くに達して、意識障害を起こす危険が高まるそうです。
3.浴槽から急に立ち上がらない
4.食後、飲酒後、薬の服用後すぐに入浴するのは避ける
5.お風呂に入る前に家族にひと声かける、入浴している家族の動向に注意する
異変に早く気づくことが大事です。「長く入っている」「音が全くしない」「突然大きな音がした」など何かおかしいと感じたら、ためらわず声をかけるようにしましょう。
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世界的にみても、日本は家の中の温度差が大きく、特にヒートショックの割合が高いと言われています。命に関わる重大な健康障害につながる危険性もある一方で、ちょっとした工夫や心がけで、リスクを大きく減らすこともできます。今回お伝えした注意事項をぜひ試してみてください。
(2021年12月14日午後4時ごろ放送 news every.「ナゼナニっ?」より)