国交省がデータ「書き換え」を指示…ナゼ
建設業の受注実績を調べる国の基幹統計のデータについて、国土交通省が都道府県に対し、書き換えを指示していました。受注が二重計上され、過大集計されていました。同省の「手引き」に基づき、どんな作業をしていたのか。都の担当者に実演してもらいました。
■大臣陳謝…「基幹統計」で不正発覚
15日の衆院予算委員会で、斉藤国交相が「国土交通省所管の統計において、こうした指摘があったことは大変遺憾であり、お詫びを申し上げます」と陳謝しました。
この日、同省の統計不正が明らかになりました。
書き換えられていたのは、建設業の受注がどれだけあったかを示すデータです。国の統計の中でも特に重要な「基幹統計」の1つに位置づけられています。
建設業者が、毎月の受注実績を調査票に記入し、都道府県が回収。それを国交省が集計する形で調査されます。今回、国交省が都道府県に対し、書き換えを指示していたことが分かりました。
■実際の作業は…「手引き」の中身
実際に書き換えを行っていたという東京都建設局の総務部用度課長に、話を聞きました。
国交省から届いた「手引き」には、「ゼロも消す」「受注高は足し上げる」という文字がありました。これに沿って、調査票に鉛筆かシャーペンで書くといいます。受注額の単位は百万円で、100万円なら「1」と記入します。
「例えば今、12月なので通常であれば11月分が提出されますが、11月分として100万円(だったとします)」と課長。実際の作業を再現してもらいました。
「この業者さんが、(仮に200万円だった)10月分は提出しそびれたけれど記入してお持ちになった場合、(調査票にある)10月分の『2』という数字を消す。2か月で300万円の工事を受注したことは事実なので、(11月分に『3』と書いて)まとめて提出します。」
現在は運用ルールが改められていますが、かつては期限を過ぎて業者から提出された際に、数か月分をまとめて最新の月の受注実績となるよう、国の手引きに則って、書き換えを行っていたといいます。
■運用変更で…「二重計上」問題に
この書き換えで問題になるのが、二重計上です。
国交省によると2012年までは、調査票が提出されなかった月は、受注実績を「0」として集計。この時も、遅れて出された分は、提出された月に合算していました。
2013年からの8年間は、国交省の運用が変わり、提出されなかった分を「推計値」として加えることになりました。ただ、遅れた分を提出した月に合算する運用は続いていたため、受注が二重計上され、実際よりも過大になっていたといいます。
■岸田首相、GDPへは「影響なし」
調査を受けていた建設業者に受け止めを聞きました。
都内の建設会社
「提出したデータがどのように扱われて、どのようになっているかは分かりません。われわれ企業としても責任を持って回答していたわけなのですが、非常に残念に思いますね」
3年前の厚生労働省の「勤労統計調査」で不正が発覚したのを受け、各省庁では一斉点検が行われていましたが、その後も書き換えが続いていました。
15日の衆院予算委で、立憲民主党の階猛議員は「当時、GDPの数字にも影響が出ていたと思うんですね。責任の所在を明確にして、再発を防ぐ。このことを総理としてやるべきではないですか」と迫りました。
「大変遺憾なことであり、至急検討し、対応したいと考えます」と応じた岸田首相。去年1月からデータを修正していることから、昨年度と今年度のGDPに影響はないと強調しました。
(12月15日『news zero』より)