“飲む中絶薬”メリットなど…産婦人科医は
去年1年間の人工妊娠中絶の件数は、14万5340件でした。日本での方法は手術に限られていますが、今週にも「飲み薬」について、承認に向けた申請がされることが分かりました。
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7年前、パートナーに避妊をしてもらえず、妊娠したという女性。
中絶を経験した女性(43)
「できれば出産したいという旨を(パートナーに)伝えたんですけど、(パートナーは)家族に対して自分の時間や労力を割けないと、中絶を勧めて」
1人で育てることへの不安などから、女性は悩んだ末に人工妊娠中絶手術を受けることを決めたといいます。
中絶を経験した女性(43)
「私自身、手術後自分の体とどうやって向き合っていくんだろう、すごい不安を感じていました」
そして手術後には──
中絶を経験した女性(43)
「痛みとかは全然なかったけど、すごい量の出血があって。それはかなりびっくりしました」
女性に精神的、肉体的な負担を負わせる中絶手術。
日本では、子宮に器具を入れてかき出す掻爬法と、管で吸い出す吸引法という2種類の手術が行われています。
特に掻爬法については、WHO(=世界保健機関)が「吸引法に比べて重大な合併症を起こす割合が2~3倍高く、安全性に劣る」と指摘しています。
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そうした中、イギリスの製薬会社「ラインファーマ」が、“錠剤を飲むタイプの人工妊娠中絶薬”について、今週にも厚生労働省に薬事承認の申請をすることが分かりました。
妊娠後63日目まで服用できるという中絶薬。
海外では、飲む中絶薬は70か国以上で使用されていますが、承認されれば、日本では初めてとなります。
先週には、安全で費用面の負担も少ない経口中絶薬の承認などを求める4万人以上の署名が、厚生労働省に提出されました。
経口薬のメリットについて、産婦人科医は──
産婦人科医 浦野晃義院長
「身体的な負担は大きく減ると思う。手術を回避できるという意味では、薬で中絶できるのは有意義だ」
一方で、内服薬が出ることで、手軽に中絶できるというメッセージになるのではないかとの懸念については──
産婦人科医 浦野晃義院長
「それも懸念されていることの1つだと。簡単に内服薬があるから避妊に対して敷居(意識)が低くなってほしくない」
「ラインファーマ」によると、日本国内で行った臨床試験では、93パーセントが24時間以内に中絶に至ったといいます。出血があるほか、治験では、腹痛やおう吐などの症状が6割であり、一部は副作用とみられるということです。
薬の承認の判断には、1年ほどかかるとみられます。
(12月21日放送『news zero』より)