解散命令に“統一教会”「悪質な団体ではない」と反論会見 即時抗告へ “被害者”や信者は…
宗教法人の世界平和統一家庭連合、いわゆる“統一教会”に対し、25日、東京地裁は解散命令を出しました。これを受けて25日夜、教団が会見を開き、「解散させなければならないような悪質な団体ではない」と反論しました。
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25日夜。約80分にわたる会見で“反論”を展開した「世界平和統一家庭連合」、いわゆる“統一教会”。
“統一教会” 田中富広会長
「当法人の主張が認められず、非常に残念な結果でありました。今の家庭連合が解散させなければならないような悪質な団体ではないことは明白です。正しい民主主義国家、法治国家として正しい判断を下していただくために、最後まで戦ってまいります」
25日に東京地裁が決定した「解散命令」について、東京高裁に即時抗告をする考えを明らかにしました。
──解散によって法人格を失わせるほかに有効な手段は考えられないと裁判所に言われた事実に関して、率直にどう思う?
“統一教会” 田中富広会長
「もちろん不当だと思っています。あり得ない。なので、そう出されたことにどう思いますかというよりは、出されたことを不当として私たちはとても受け入れられない。教団にとってみたら、法人にとってみたら(解散命令は)死刑です。本当にそこまでいける、今の教団の実態ですかということは、本当に見極めていただきたい」
その教団側は、さかのぼること4時間ほど前…
記者(東京地裁前、午後3時前)
「教団側の弁護士が東京地裁に入ります」
「解散命令」について司法の判断を聞くために裁判所に呼ばれました。約20分後…。
──命令について教えてください
“統一教会” 福本修也顧問弁護士
「解散、解散。法治主義の国家としてあり得るんですかね、こういうことがね」
東京地裁が下したのは教団への「解散命令」でした。
元妻が信者で、教団に家庭を崩壊させられたと訴える橋田さんは、決定の瞬間…
──“統一教会”東京地裁が解散命令を出しました
元妻が“統一教会”信者 橋田達夫さん
「よし」
笑顔に。
元妻が“統一教会”信者 橋田達夫さん
「努力が実りました。これからがスタートです」
一方、現役の信者・小嶌さんはほぼ表情を変えることなく…。
“統一教会”現役信者 小嶌希晶さん
「うーん、まあそうなんだなと。次の高裁に向けて、また戦いが始まるんだなって」
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“統一教会”韓鶴子総裁(2023年9月公開)
「私がワンオンマ(王なる母)だ!母とひとつにならなければならない」
いわゆる統一教会は、韓国で創立されたキリスト教系の新宗教団体。日本でも「合同結婚式」などで知られ、国内に60万人の信者がいるといわれています。(※教団による)
教団の問題が再び注目されたのは3年前。教団の友好団体にビデオメッセージを送っていた安倍元首相が、演説中に銃撃された事件です。
山上徹也被告(逮捕直後の供述より)
「母親が教団に多額の寄付をするなどして家庭がめちゃくちゃになった」
被告の男が口にしたのは“教団への恨み”。教団をめぐっては長年、多額の献金や霊感商法などの被害を訴える声が相次ぎました。
81万円する着物も。
“統一教会”元信者 鈴木さん(仮名)
「これ(着物)を買わないと、あなたの先祖は一生霊界で苦しんだまま地獄にいることになるからと」
佐藤梨那アナウンサー
「この着物って着ますか?」
“統一教会”元信者 鈴木さん(仮名)
「着ないですね、はい」
高額献金などが原因で家庭が崩壊したと訴えるケースも。
元妻が“統一教会”信者 橋田達夫さん
「相手の家庭まで入ることは絶対したらいかんことなんですよ」
教団による被害を訴える声が強まる中…
盛山文科相(当時)2023年10月
「旧統一教会の行為は解散命令事由に該当すると認めます」
2023年、政府は教団に対する解散命令を東京地裁に請求。これを受けて地裁は、教団側、国側の双方から直接、意見を聞く「審問」を4回経て25日、教団に対する「解散命令」を決定したのです。
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迎えた、大きな節目。元妻が信者で約1億円にのぼる高額献金をし、家庭が崩壊したと訴え続けてきた橋田達夫さんは…。
元妻が“統一教会”信者 橋田達夫さん
「本当に今までやってきて、やっと結果が出た。統一教会の悪さは僕自身が一番わかっている。解散しないといけない団体、彼らがそれを全くわかっていない。祈るんだったら被害者のために祈りなさいと」
──これからどう変わっていってほしい?
元妻が“統一教会”信者 橋田達夫さん
「この統一教会に対してやっぱり、被害者は被害者ときちんと認めてもらって、2世の問題にしても、心のケアを行政がしてあげたり行政にどんどん動いてほしい」
両親が教団の現役信者で、自身も元信者の田中さんは。
宗教2世の元信者 田中さん(仮名・30代)
「安堵(あんど)しましたし、当然の結果だと思いました。あくまで通過点だと思っています」
両親が献金を続けていることで幼少期から貧しく、田中さんが生活費を工面せざるをえなかったといいます。
宗教2世の元信者 田中さん(仮名・30代)
「今までの被害者に向き合って、解散命令はしっかり受けるべき」
一方、現役信者の小嶌希晶さんは、「解散命令」決定を受けて…
“統一教会”現役信者 小嶌希晶さん
「ショックですね。教団側の『法治国家としてあり得ない』という主張はわかる気がする。真摯(しんし)に向き合って返金したり、大変な信者がいないか話を聞いているのに、解散しないといけませんと国から言われることは疑問です」
その上で…。
“統一教会”現役信者 小嶌希晶さん
「解散してもしなくても信仰は死ぬまで続くので、いかにいいものを残していけるか模索していきたいなと」
“ショック”の声は、ほかの信者からも。
現役2世信者 “統一教会”職員(29)
「ショックは大きいですね。ただ我々がやっていることがすべて悪かのような捉え方をされてしまうと、1人の国民として生きづらくなってしまう」
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法令違反を理由に解散命令が出されたのは、「オウム真理教」と「明覚寺」に続いて3例目。「民法上の不法行為」を根拠とした解散命令は初めてです。
理由に関して、東京地裁は教団側の不法行為を認めた32件の民事判決などに触れた上で、「違法な献金の勧誘行為の多くは、教団の宗教活動として行われたと評価できる」とし、「長期間にわたり類例のない膨大な被害を生じさせ、2009年のコンプライアンス宣言以降、被害は縮小傾向にあるものの、途切れることなく続いている」などと指摘。
その上で「違法な勧誘による献金収入について、法人格を利用して税制上の優遇措置を受けている」「法人格を与えたままにしておくことは極めて不適切」などとしました。
解散命令を受けて教団がホームページに載せたコメント。そこには国民などに対し「心からお詫び申し上げたい」と、謝罪がつづられていましたが、1時間ほどで更新されたコメントには、そのお詫びの部分などが消されていました。
「news zero」がそのワケを教団に聞くと。
──なぜ「お詫び」削除?
教団・広報局の回答
「東京地裁から出された決定文があまりにもひどく、お詫びを申し上げるより改めて強く抗告していくために、お詫びという言葉を外しました」
「即時抗告」をする考えを明らかにしている教団側。仮に、東京高裁でも改めて解散命令が出た場合、教団側は最高裁に不服を申し立てることもできます。今後について専門家は…
宗教法人法に詳しい 近畿大学法学部・田近肇教授
「(Q .“統一教会”今後は?)短期間で最高裁の決定までたどり着くことはおそらくなくて、決着を見るのは半年とか1年とかそのぐらいの期間が必要になるのでは」
仮に解散命令が確定し、宗教法人でなくなった場合の教団の活動については。
近畿大学法学部・田近肇教授
「(財産の清算で)宗教活動をするために、使っていた施設も全部失うことになる。誰かの家に集まってやるとか集会場を借りるということであれば、活動を続けていくことはできる。引き続き我々としても社会としても、注視していく必要があるのではないか」
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解散命令を請求した文部科学省は。
阿部文科相(25日)
「私どもの主張が認められたものと受け止めております。旧統一教会への対応につきまして引き続き万全を期してまいります」
(3月25日放送『news zero』より)