「働き方に疑問を持って」遺族が涙ながらに訴え 中学教諭“過労死”…約8300万円の賠償命令 富山
2016年に富山県滑川市の市立中学校の男性教諭が過労死し、遺族が県や市に1億円の賠償を求めた裁判で、富山地裁は5日、約8300万円の支払いを命じる判決を言い渡しました。男性教諭の妻は、会見で「働き方に疑問を持っていただきたい」と訴えました。
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5日、亡くなった男性教諭の妻が私たちに疑問を投げかけました。
亡くなった男性教諭の妻
「本当にそれは、自分の命を削ってまでやらないといけない仕事なんでしょうか」
中学校教諭だった夫は7年前の2016年、妻と娘、そしておなかの中にいた息子を残し帰らぬ人となりました。まだ42歳、「過労死」でした。
男性は、富山県滑川市の市立中学校に勤めていました。2016年7月、突然「くも膜下出血」を発症しました。
裁判資料によると、亡くなる前の男性の勤務状況は、直近1か月間ではほとんどの日が1日10時間以上勤務で、休憩時間は常に「ゼロ」でした。さらに、休みは発症する前日までの53日間で1日だけでした。
男性は「クラス担任」や「ソフトテニス部の顧問」を担当していたといいます。時間外労働は、ひと月あたり最高で155時間。過労死ラインとされる月80時間を大きく上回っていました。
亡くなった男性教諭の妻
「なかなか帰って来られないので、娘に『パパ早く帰ってきて、待ってるよ』と動画を毎日送らせていた。本当に(娘を)かわいがってくれて、ちょっとでも家族と過ごす時間を取ろうとしてくれていましたけど…すみません…もう無理です」
遺族は、市が長時間労働を抑える安全配慮義務を怠ったなどとして、県と市に約1億円の慰謝料などを求める訴えを起こしました。
5日、富山地裁は市側の安全配慮義務違反を認め、約8300万円の支払いを命じる判決を言い渡しました。
原告側の弁護士
「判決はパーフェクトに原告勝訴の判決です」
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教育現場は“子どものため”と無理に働いてしまうケースが多いといいます。過重労働をどう防げばいいのか。専門家に話を聞きました。
教員の労働問題に詳しい名古屋大学大学院 内田良教授
「実は過労死に至っている人って、今回のケースもそうですけど、『頭痛がする』とか“自覚症状”があります。本当に悪循環で、忙しくて頭が痛くなる。でも、病院に行くかっていうと行く時間がない。働き続けなければいけないプレッシャーがあると理解しなければいけません。だからこそ、『管理職』『市町村』が介入して、『病院に行きなさい』と強制力を持つくらいに長時間労働に対して厳しく介入しないといけない。今回の判決は、『そうすべきだよね』と『管理職』『市町村』に教えてくれたと」
亡くなった男性教諭の妻
「『こういう働き方はおかしい』と働いている主人自身、現在教職の職についている先生方、全ての方が自覚していただければ、こんなことは起きなかったのかなと」
「もう二度と私たち家族みたいな思いをする人を生んでほしくないので、どうか今一度、自分の働き方に疑問を持っていただきたい」
(7月5日放送『news zero』より)