スーパー居座りのクマ捕獲で…「殺さないで」抗議相次ぐ 街への出没どうする? 自治体“丸投げ”で課題も【#みんなのギモン】
そこで今回の#みんなのギモンでは、「クマなぜ街に居座る?」をテーマに解説します。
近野宏明・日本テレビ解説委員
「11月30日から秋田市のスーパーに居座っていたクマが、2日昼すぎにようやく捕獲・駆除されました。しかし、その日の夜にスーパーからわずか800メートルほどの場所で、別の目撃情報があったということです」
「警察によると、2日夜8時前に図書館の近くを通りかかった男性が、駐車場にクマと思われる動物がいるのを目撃しました。この図書館は駅のすぐ近くで、3日朝の通勤・通学の時間帯は警察が周辺の警戒を強化していました」
「近くには小学校もあり、保護者による送迎を呼び掛けたり、外での活動を取りやめたりといった対応を取っているということです」
鈴江奈々アナウンサー
「これだけ人が行き交う、人々が暮らす空間にクマが来るというのは、なかなか想像しがたいですよね」
近野解説委員
「私は新潟出身ですが、かつてならこんな所で出ますか?というような目撃情報が去年あたりから増えているのは間違いありません。市街地にどんどんクマが来ています」
「2日は福島・喜多方市の空き家にもクマが侵入し、4時間ほど居座った後に山へ逃げていったというケースもありました」
斎藤佑樹キャスター
「山のエサがなくなると街なかに下りてくるとよく聞きますが、どうなんでしょうか?」
近野解説委員
「去年は少なくともそうでした。山の中での木の実のなり方が悪いなどでクマがお腹をすかせ、街へ下りてきて目撃されるという事例が多かったのですが、今年はエサが豊作です。豊作なのに市街地に下りてくる。どうしてなのでしょうか?」
近野解説委員
「クマの生態に詳しい岩手大学農学部の山内貴義准教授は『市街地においしい物があると学習して、出没している事例が散見される』と言います」
「その理由としては、時代が進んでくるとともに山と市街地の間にあった里山が廃れ、耕作放棄地も増え、山と街の境界線があいまいになってしまい、クマにとっては街に出てきやすくなったことがあるそうです」
「また、今年は例年に比べて暑かったですよね。夏は長く、秋があったかどうかよくわからない状況でした。完全に冬になっていない場所が多いので、その結果、冬眠が若干遅れているそうです」
「その上、クマは周りにあるエサがなくなるまで食べてから冬眠に入るそうです。豊作だとエサがあるうちは食べ、なかなか冬眠に入らないということもあるそうです。まだ活発に動いているクマが市街地の近くにたくさんいるかもしれないと推測されます」
瀧口麻衣アナウンサー
「私は実家が福井県の山の近くにあって、小中学生の時はクマよけのためにクマ鈴を付けて登下校していました。今では街の方までクマが出てくるということで、怖いですよね」
近野解説委員
「クマが山から市街地まで出てくるルートをしっかりと調べた上で、私たちに近いエリアで、身を隠す場所がなくなるように草刈りをしっかりやる、茂みを整える」
「また、所々に電気柵を設置して人が住んでいるエリアと、クマが住んでいるエリアの境界線をできるだけしっかり作っていく。そんな必要があると、山内准教授は指摘しています」
森圭介アナウンサー
「なかなか大変ですけどね…」
近野解説委員
「端から端まで柵を作ることもできないですしね。そういった対策を各地で一生懸命やっているにもかかわらず、どうしても市街地にクマが出てきてしまうことが相次いでいます」
「秋田県の場合は、まずは捕まえるのではなく、爆竹などを使って山に追い戻す方法を検討するそうです。ただ、今回クマが居座ったスーパーは、全く山の気配を感じない所です」
森アナウンサー
「完全な住宅地ですね」
近野解説委員
「こういった所で全国各地で相次いでいるので、捕まえずに山までクマを追い立てていくのは危険そのものです。そういった場合は、近隣住民の安全を第一に考え、捕獲して殺処分するのが基本だそうです」
近野解説委員
「ただ、2日昼すぎにスーパーのクマが捕獲されたと報道されてから、秋田県や秋田市には『クマを殺さないで』『遠くの山に逃がして』といった抗議の電話やメールが相次いだといいます」
「秋田市には3日午前までで、40件以上の電話と20件以上のメールが来ました。こういった抗議や批判を寄せる人のほとんどが、県外からだそうです」
森アナウンサー
「動物愛護の観点からこういった反対意見があるのかもしれませんが、住民の皆さんの危険が迫っているわけですし、『もし自分の家族がクマに襲われたら』と考えたら、反対するのはなかなか賛成できかねますね」
近野解説委員
「一部にはもちろん、『命がけで対応をしてくれている。本当にありがとう。頑張ってほしい』という励ましの声もあるそうです」
斎藤キャスター
「まさに猟友会の方たちは命がけでやられています。中ではボランティアでやられている方もいます。複雑な気持ちですよね」
近野解説委員
「悩みが深いのは猟友会の皆さんも同様です。北海道では、自治体の要請で出動したハンターの男性が住宅の方向に発砲したとして、猟銃所持の許可を取り消されたケースもあり、裁判にまでなっています」
「北海道猟友会はクマの駆除依頼について、警察などと協議した上で出動を判断するよう、各支部に伝える方針を決めています」
近野解説委員
「専門家は、市街地に出るクマに対する制度や体制にも課題があると指摘します」
「酪農学園大学の伊吾田宏正准教授は、今後も市街地へのクマの出没が増加するのは間違いないとした上で、『自治体が猟友会など民間の狩猟団体に“丸投げ”しているようなケースが少なくない』と言います」
「そのため『レベルの高い専門的知識とスキルを備えた人が自分で、あるいは猟友会と連携して対処できるように、自治体などに専門職を置く体制整備が必要だ』と伊吾田准教授は訴えています」
「とは言え自治体も人材難ですので、(各自治体に)1人ずつは難しいとしても、複数の市町村で1人、広域の消防署に1人といったことを是非検討してほしいとのことでした」
鈴江アナウンサー
「市街地でクマの駆除にあたらなければならないとなると、それなりに専門的な知識も経験も必要になってくるでしょうから、対策が求められますね」
近野解説委員
「火急の用はありますが、なかなか時間がかかりそうです。やむを得ず取った措置が、クレームや批判の対象になるのは筋違いという印象が否めません」
「猟友会や自治体などが理不尽な批判にさらされ、結果として責任を背負わされることのない仕組みを考えるべき時期に来ていると言えそうです」
(2024年12月3日午後4時半ごろ放送 news every.「#みんなのギモン」より)
【みんなのギモン】
身の回りの「怒り」や「ギモン」「不正」や「不祥事」。寄せられた情報などをもとに、日本テレビ報道局が「みんなのギモン」に応えるべく調査・取材してお伝えします。(日テレ調査報道プロジェクト)