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生成AIブームから考える「人間らしさ」とは【SENSORS】

2023年7月4日 21:07
生成AIブームから考える「人間らしさ」とは【SENSORS】

チャットで文章作成など様々な指示ができる「ChatGPT」や指示通りに画像を作る「Stable Diffusion」や「Midjourney」などの生成AI(ジェネレーティブAI)についての話題は、毎日のようにニュースで報道されるほど注目されている。

人間が生み出したコンテンツやモノの特徴を学び、人間に求められることを予測して文章や画像を作り出す生成AIは、人間を超える存在というよりは、人間により近づいているとも言える。

では、生成AI時代における人間らしさ・人間性とは何なのか。生成AIの最前線に立つ4人が語った。

■制御不能なことをしでかすことが人間性

Aww Inc.のジューストー沙羅さんがプロデュースするバーチャルヒューマン「imma」は生成AIも活用して生み出された、人間そっくりのCGモデルだ。ピンク色のボブヘアが特徴のファッションアイコンとしてフォロワー数アジアNo.1を誇るインフルエンサーである。

immaをリアルな人間だと勘違いするフォロワーも多いが、immaの「人間らしさ」を形成しているのはエゴだという。生成AIの特徴は質問に対して的確に答えることだが、その期待を覆すことが人間らしさに繋がる。

「例えば『別に私はそれに答えたくない』とか。人間のエゴイズムみたいなものが人間らしさのポイントです。エゴって『この人と話したいな』とか『この人のツイートいつも見たいな』という感情につながると思うんですよ。ただの便利な相棒じゃなくて、人間のエゴをAIで作れることが当たり前になったら、すごくおもしろいですよね」

そもそも、AIとは違う「人間らしさ」とは一体何なのだろうか。人間性とは「機械にはできない特質」であり、「エゴに基づいて予定調和を崩すことである」と語るのは、株式会社 THE GUILD 代表でインタラクションデザイナーの深津貴之さんだ。

「機械と対比して、人間性というものがあるとすれば、機械にできない特質を人間性と呼ぶと思います。今の生成AIはいろんなデータの真ん中ぐらいにありそうなことを確率的に出すことが得意で、これがAI性だとすれば、逆側を人間性と置くのがいいと思います。ど真ん中ではないところ、端っこの部分を探索したり、ノイズを起こしたり、制御不能なことをしでかすことが人間性ではないでしょうか」

■AIは身体を持てるか。世界に参加するために必要なこと

一方で、東京大学生産技術研究所特任教授の三宅陽一郎さんは、人間性とは“身体を持って世界に参加すること”であり、今のAIが持つのは表面的な人間性でしかないと語る。

「AIは人間に大きな影響を及ぼしますが、コンピューターの中だけにいて、実はこの世界に参加できていないんです。どんどん人間らしくなっているのに、大して人間のそばにいなくて、可哀想に思えるときがあります。AIに身体や感覚を持たせるには、すごく長い研究と開発時間が必要です。それができるようになると、ようやくAIもこの世界に参加できるようになります」

■生成AIが生み出す、ウソと真実のはざま

AIの進化に伴い、時折フェイクニュースを作って世間を騒がせるという問題も起こる。これもまた、人間らしさに近づいてきた証しであり代償ともいえると三宅さんは語る。

「今でも人間が文字を書きさえすれば、ウソをつけるわけです。ウラを取れば事実ではないとわかるものですが、発信するのがAIになっただけなんです。フィクショナルなものを人間だけが作るんじゃなくて、AIもフィクショナルなものに言及できるようになってきたっていうことですね。だから、ウソの絵も描くし、ウソの動画も作る。AIは人間の延長ですから」

沙羅さんは「現実・リアルとは何か?」と問いかける。

「人間が思う事実ってすごく曖昧ですよね。私たちは世界のことを脳にインプットして、脳の中で現実を作っているので、immaちゃんなどのバーチャルヒューマンだって、もちろんリアルではないんですが、フェイクとまでも言えない気がするんです。CGで作られた映画を見て泣けるのは、目の前で展開されているものが事実のように見えて感情移入ができるからですよね。それが人間の美しいところだと思います。宗教や好きなキャラクターもそうで、自分自身が信じるものこそが現実じゃないかと思います」

■リアルかフェイクかわからない前提で向き合う

これからの社会において「この世にある情報はすべてインチキだっていう前提で生きたほうが楽な気がします」と話すのは、深津さんだ。

「AIによってコンテンツの生産性が上がった場合、基本的にはウソのほうが多くなるというか、真実が保証できない情報がほとんどだという前提で行動するほうが安全ではないでしょうか。“ウソを言う”のは簡単だけど、“ウソを言わせない”のはすごく難しいですし、“ウソだと主張する”のは簡単だけど、“ウソだと証明する”のはすごく難しいですから」

沙羅さんと深津さんの話を聞き、生成AIをはじめとしたテクノロジートレンドをクリエイティブ目線・ビジネス目線でプロデュースするHEART CATCH代表の西村真里子さんは、「他人を信じるよりも、自分で見極めるとか、自分自身がどうあるかがより大切になってくるのですね」と共感を示す。

ウソを規制するのはおそらく不可能に近い。リアルとフェイクの混在が防げないという前提で、いかに行動するかがカギだと深津さんはいう。

「例えば、Zoom会議をするときに、コンピューターの先にいる相手が本物でもAIでもどちらでもいいようにコミュニケーションを取るというようなことが大切です。AIネイティブと呼ばれる世代の子たちは、すでにそうしているような気がします」

    ◇   ◇

AIは、人間から学び、人間に近づいている。だからこそAIには、これまで私たち人間が気づいていなかった「人間性」が投影される。生成AIによってますます顕在化していくであろう人間の本質から目を背けずに、私たちの行動や考え方を変化させていくことが重要だ。