自衛隊の“静かなる危機” 過去最大の防衛費要求も…少子化で人員不足が深刻
防衛力の抜本的強化に向け、防衛省が過去最大の予算を要求する中、焦点となるのは自衛隊が直面する“静かなる危機”です。少子化を背景にした深刻な人員不足に対策はあるのでしょうか。
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北海道室蘭市の港に、巨大な船が入港してきました。海上自衛隊の護衛艦「ひゅうが」です。さらに、陸上自衛隊の「10式戦車」や航空自衛隊の地対空ミサイル「ペトリオット」などが一斉に展開されました。
何が始まるのかというと――
札幌地方協力本部 関根大仁広報担当
「12時から17時まで一般公開になります」
一般に装備を公開するイベントです。企画したのは、自衛官の募集などを行う札幌地方協力本部です。
イベントを行う理由は――
札幌地方協力本部 関根大仁広報担当
「自衛官になっていただく方が不足しております」
自衛官の定員は法律で定められていますが、「令和4年 防衛白書」によると、定員に対し実際にいる隊員の割合(=充足率)をみると、「幹部」は93.7%、「准尉」は95.1%、「曹」は98.4%ですが、若い世代で構成される「士」は79.8%と大きく定員割れしています。少子化や高学歴化の影響で、現場を支える若い隊員が不足しているのです。
札幌地方協力本部 関根大仁広報担当
「イベントを通じて、少しでも自衛隊に興味を持っていただいて 」
来場者した大学生は、本物のヘルメットを体験して「かわいい~」「重い! 重い!」と、興奮した様子でした。
公務員志望だという高校生には、広報担当が声をかけました。
公務員志望 高校生(17)
「自衛隊って一般的にしごかれてやばいなって」
札幌地方協力本部 関根大仁広報担当
「そういう指導も必要な時はあるんですけども、愛情があるので、『この人厳しいこと言っているけど、しっかり考えてくれているんだな』って」
会場には、子供達の姿もありました。
小学4年生
「急なすごい所でもいけるんですか?」
山本遥香1等陸士(19)
「急な傾斜でもがーって上れるよ」
募集活動では、子供の頃から親近感を持ってもらうことにも力をいれています。
山本遥香1等陸士
「お姉ちゃんは操縦手だから、下のほうで運転している感じ」
小学4年生
「(中は)けっこう狭かったりするんですか?」
山本遥香1等陸士
「狭い感じかな」
小学生を案内していたのは、この戦車の操縦手でした。
山本遥香1等陸士
「人助けがしたいという気持ちと、父が自衛官なので、あこがれて入ったというのがあります」
話を聞いていると、そこに自衛官を志望する高校生が現れました。
自衛官を志望する高校3年生(18)
「人のために何かしたいなと思って、わたし泣き虫ですけど大丈夫ですか?」
山本遥香1等陸士
「わたしも泣き虫です。私人見知りなんで『話すのもどうしよう…』みたいな感じだったんです。でも、みんなすごく優しいんで、きてくれたら教えるんで、ぜひきてほしいです。待ってます」
自衛官を志望する高校3年生(18)
「頑張って受かります」
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防衛省は8月31日、来年度予算として過去最大となる、約5兆6000億円を要求することを決めました。しかし、隊員が不足したままでは、最新の装備を導入しても防衛力の抜本的な強化につながらない恐れもあります。
札幌地方協力本部 関根大仁広報担当
「人がまさに我々の力の根源ですので、人を集めるのは非常に重要な職務というか、仕事だなと」
隊員不足について来場者に聞くと――
自衛隊のイベントの参加者
「かっこいいけど大変そう」
「体使うところとかが女の子だと…」
「こういう仕事は必要だなと思っていますけど、戦争とかの方向に今動いているので、そこになると抵抗はなくはないかなとは思います」
人が礎の防衛力。隊員募集の地道な取り組みは続きます。