×

深刻化する“オーバーツーリズム" 富士山・京都市・鎌倉市の対策は?

2024年4月30日 20:59
深刻化する“オーバーツーリズム" 富士山・京都市・鎌倉市の対策は?

楽しいゴールデンウイークの真っ最中という方もいるかと思いますが、いま深刻となっているのが、観光客が押し寄せすぎて問題が発生するオーバーツーリズムです。各地の観光地で対策に乗り出しています。

■富士山「弾丸登山」 ゲート設置や上限数、通行料で対策へ

山崎誠アナウンサー
「年々、外国人観光客の方が増えている富士山ですが、いま富士山でもオーバーツーリズムが問題となっています。富士山では去年、過度な混雑や、『弾丸登山』、山小屋などで十分な休憩を取らずにタイトなスケジュールで登山をすることがケガにつながるといった問題も発生したということです」

「こうした問題を防ぐため山梨県は、今年7月1日から9月10日まで、山梨県側にある五合目登山口・吉田ルートにゲートを設置します。午後4時から午前3時までゲートを閉じて弾丸登山を防ぎ、1日の登山者の数の上限を4000人とすることで、登山客の過度な混雑を予防する狙いがあるといいます」

「さらに富士山に登る際、これまでは任意の協力金(1000円)の支払いがありましたが、それとは別に、7月からは1人2000円の通行料を登山口で徴収するということです。これは任意ではなく、支払う必要があります。こうして徴収したお金は、山の中で安全誘導をする指導員などに活用するということです。県は、山小屋での宿泊を前提に、余裕をもった計画で安全に楽しく楽しんでほしいとしています。」

「楽しく観光しに行く立場としても、周りへの配慮が大事です」

斎藤佑樹キャスター
「写真を撮るときに、たまに三脚を立てたりしますが、場所によっては三脚を立ててはいけない場所があります。大好きな場所だからこそルールを守って、その場所を守っていきたいという思いはあります」

山崎アナウンサー
「そういったルールの調べ方はあるんですか?」

斎藤キャスター
「ネットで調べると、有名な写真スポットほど『ここは立てちゃだめだよ』など、誰かしらがつぶやいたりしています」

山崎アナウンサー
「その場所が出しているルールだけではなく、そういったコミュニティーを調べることも大事かもしれません」

■京都市「観光特急バス」運行へ “動線”のすみ分けが狙い

山崎アナウンサー
「富士山と同じく、観光地で有名な京都ですが、京都市では路線バスが観光客でいっぱいになり、地元の住民が乗車できない事態も起きています」

「そこで京都市交通局は、今年6月から土日・祝日限定で『観光特急バス』を運行します。これは観光客向けのバスですが、京都駅と清水寺や祇園、銀閣寺などの主要観光地を結ぶ路線となっています」

山崎アナウンサー
「例えば清水寺に行きたい場合、本来はあいだに6つの停留所がありますが、京都駅で多くの観光客が乗ると、それらの停留所を使う住民がなかなか乗れません。清水寺からの復路も同様です。通過する停留所を使う“住民がバスに乗車できない”という問題がありました」

山崎アナウンサー
「『観光特急バス』は清水寺まですぐ行くので、住民は特急ではないバス、観光客は『観光特急バス』と、すみ分けをすることが狙いとされています。『観光特急バス』は、京都と清水寺を結ぶルートの場合、5分ほど早く着くそうです。こうした取組は観光客にとってもメリットがありそうです」

森圭介キャスター
「清水寺や富士山のように観光の目的地がはっきりしている場合、地元の人と観光客の動線を分けることは効果的です。観光客向けのサービスを一部、高価格化してその利益を地元の人に一部還元することで、地元の人の負担も減るのかなと思います。しかし、こういった明確な観光地ではなく、街全体の雰囲気が観光地になっていると少し難しいですね」

■鎌倉で実証実験 「大仏まで徒歩で移動」を呼びかけ

山崎アナウンサー
「神奈川県鎌倉市は、去年のゴールデンウイークには駅舎から人があふれるほど観光客で混雑していました」

「そこで国は、ゴールデンウイーク後半の5月3日と4日にJR鎌倉駅や江ノ島電鉄の鎌倉駅に誘導員を配置し、観光スポットの鎌倉大仏まで徒歩で移動するよう呼びかけるなどの実証実験を行います」

鈴江奈々キャスター
「江ノ電は通勤通学で使われている住民の方も多くいらっしゃるので、ここもうまく動線を分ける意味では『歩く』という手段は有効だと思います。しかし、鎌倉大仏までは約30分歩くので、道中の狭いところなどはうまく誘導が必要かもしれません」

山崎アナウンサー
「この取組が広がることで問題も出てくるとは思うので、少しずつ改善に向かってほしいと思います」

■そもそもオーバーツーリズムの判断基準とは?

山崎アナウンサー
「オーバーツーリズムの問題に詳しい文教大学国際観光学科の専任講師・中井治郎さんは、そもそもオーバーツーリズムかどうかの判断基準は、観光客が訪れることで『地元住民の利益になるか、ならないか』で判断するべきだとしています」

「その上で、観光客が多すぎて住民が利益にならないと感じたら、住民と話し合って必要な対策を講じることが重要だと話しています。ただ、観光する側としても配慮ある行動が必要です」

陣内貴美子キャスター
「訪れる側も、地元の人が来てくれてよかった、また来てほしいと思うような、ちょっとした心遣い、例えば大声を出さないとか、ゴミを持ち帰るといったことで、お互いがいい時間になるといいなと思います」

山崎アナウンサー
「中井先生も、観光する側としては、にぎわう場所を訪れる際に、大きな荷物はホテルやロッカーに預けてくるなど、住民や他の観光客の迷惑にならないような行動を心がけてほしいと話していました」

    • 日テレNEWS NNN
    • 社会
    • 深刻化する“オーバーツーリズム" 富士山・京都市・鎌倉市の対策は?