強い揺れが来る前に携帯やテレビなどで警戒呼びかけ! 「緊急地震速報」開始から15年 視覚・聴覚障害者や外国人向けの情報伝達に課題も―
実際に発生した地震のデータから、瞬時に震源や震度を割り出して、強い揺れが来る前に私たちに警戒を呼びかける「緊急地震速報」。気象庁は一般への提供開始から、約15年が経過したことから、利活用の促進に向けて議論する有識者検討会作業部会の報告書を公表しました。精度向上のための技術改善のほか、視覚・聴覚障害者や外国人に向けた多言語に対応した情報発信の検討を進めていくとする提言がまとめられています。
緊急地震速報は、地震波の伝わる速度の差を利用して、全国に設置した地震計が、先に伝わるP波を検知した段階で、震源の位置、地震の規模を瞬時に推定します。そして、あとから伝わるS波の到達時間を予測して強い揺れが到達する前に危険を知らせるものです。
発表基準は、最大震度5弱以上の揺れが予想される地震がおきたときに、震度4以上の揺れが予想される地域を対象にテレビや携帯電話などを通じて強い揺れへの警戒を呼びかけます。今年2月からは、高層ビルを大きくゆっくりと揺らす、長周期地震動についても発表の対象に加わりました。
緊急地震速報は2007年10月から一般提供が開始されましたが、今年1月末までに、最大震度5弱以上などを予想した場合に発表される「警報」が258回、震度3以上などを予想した場合に発表される「予報」が1万6158回発表されました。
一方、気象庁はこれまで、大学など関係機関と協力し様々な技術改善を進めてきました。2011年におきた、東北地方太平洋沖地震では、震源に近い東北地方を対象に緊急地震速報を発表した一方で、当時の技術では巨大地震の震源域の広がりを予測できず、震度5強の揺れに見舞われた東京都心をはじめ、関東地方では緊急地震速報は発表されませんでした。
気象庁は従来、緊急地震速報には震源の位置とマグニチュードから震度を予測する手法を使っていましたが、新たに地震計で観測された揺れの強さから震度を予測する手法を新たに加え、併用する形で、2018年から運用が始まりました。さらに、異なる地域で、ほぼ同時に発生した2つの地震を区別できず、1つの地震とみなして揺れの強さを計算し実際の震度より過大に予測したケースがあったことを受け、震源の推定手法の改良も行っています。
緊急地震速報の、一般提供開始から約15年が経過し、社会に定着してきている一方で、スマートフォンの普及など利用環境が大きく変化したことなどを踏まえ、気象庁は今後さらなる利活用の促進に向けた課題の洗い出しと解決方法などについて有識者による検討会の作業部会で議論をおこないました。
きょう公表された報告書では、震源の推定精度向上のため、引き続き技術改善に取り組むほか、揺れの広がりの予測といった、技術開発の必要性が提言されています。一方、より多くの人に利用してもらうため、視覚・聴覚障害者や外国人にどう情報を伝えるかが課題のひとつとしてあげられていて、気象庁は今後、専門家や関係機関へのヒアリングをおこない、さらに議論を進めていくとしています。
改善が進む緊急地震速報ですが、場合によっては、震源に近い地域では、緊急地震速報が強い揺れの到達に間に合わないことがあります。気象庁は緊急地震速報の限界や猶予時間の短さも理解したうえで、日頃から地震への備えを心がけてほしいと呼びかけています。