「ザトウクジラ」なぜ東京湾で目撃相次ぐ? 一時“絶滅危惧”も…専門家「ますます増える可能性」
29日、東京湾アクアライン付近でクジラが現れるなど、東京湾でクジラの目撃情報が相次いでいます。東京海洋大学の村瀬弘人准教授は「ザトウクジラ」とみており、「今後、ますますクジラを目にする機会が増える」と指摘しました。
◇
29日午後5時ごろ、神奈川と千葉を結ぶ「東京湾アクアライン」近くで、突如現れたクジラをカメラが捉えていました。大きな体で、夕日に染まる海を優雅に泳いでおり、海面からは水しぶきが上がる様子も見られました。その迫力に、撮影者からは驚きの声もあがりました。
動画の撮影者
「かなり大きかったです。僕の船が10mくらいの大きさなので、それくらいか、それ以上の大きさに見えた。釣りを船に乗って20年以上しているけど、東京湾の中であれだけ大きなクジラを見たことはなかったので、海の様子がだいぶ変わってきてるかなと」
東京湾では19日にも、船の乗組員から「潮を吹いたり、潜ったりしているクジラを発見した」と目撃情報が寄せられました。横浜海上保安部の巡視艇が向かったところ、クジラとみられる生き物を確認。付近で高速船などを運航する海運会社に情報共有するなどし、注意を呼びかけていました。
19日はアクアラインの神奈川寄りの湾内、29日は千葉寄りの湾内でクジラが目撃されています。
◇
東京海洋大学の村瀬弘人准教授は、背びれ・尾びれの形状から、小笠原諸島・沖縄などを生息域とする「ザトウクジラ」とみています。大阪湾に流れ着いて、その後、死んだ「マッコウクジラ」とは種類が異なるということです。
では、なぜ東京湾でザトウクジラの目撃情報が相次いでいるのでしょうか。
村瀬准教授はその背景の1つとして、「1960年代まで“商業捕鯨”が行われていまして、絶滅に近い数にまで減ったけど、その後“保護”が進んで、現在は世界的には個体数が回復している。日本の周りも、おそらく個体数が増加している傾向にある」と指摘しました。
日本近海ではザトウクジラの個体数が増加傾向にあると指摘した上で、海水温の上昇で生息域が北に拡大しているため、「将来的に東京湾で目撃する機会がもっと増える可能性がある」としています。