集落を堤防で囲って家屋を守る「輪中堤」の完成が延期に 3年前に大雨被害の南越前町今庄 景観の変化に戸惑う住民も
3年前に嶺北南部を襲った豪雨の被災地、南越前町今庄では、集落を堤防で囲って水害から家屋を守る「輪中堤」の工事が進んでいますが、目標としていた今年度中の完成が難しくなっています。住民の同意を得るのに2年の月日がかかった集落もあり、景観の変化に戸惑う住民もいます。
2022年8月の大雨で氾濫した南越前町の鹿蒜川。
堤防の上部まで積みあがった雪の下には、高さおよそ2.5メートルの堤防があります。
山などの地形も利用しながら、集落を囲うように整備して川の氾濫から住宅を守る「輪中堤」。
国や県などは流域の3つの集落で今年度中に完成させる計画でした。
■記者
「南越前町下新道の集落 鹿蒜川と住宅の間には、背の高いポールが立てられている 輪中堤を建設する場所の目印だというが、工事は始まっていない」
輪中堤が建設されるのは、南今庄と下新道、それに上新道の集落。
このうち下新道では、全長810メートルと最も長い堤防の整備が計画されていますが、目標としていた年度内の完成は困難な状況です。
■県丹南土木事務所 流守博課長
「南今庄・上新道は、去年7月からの整備開始ということで順調に進んでいる 下新道についても、去年10月に地元の同意を得られたので、工事に順次着手していきたい」
「Q今年度末での完了は難しいのでは? すでに令和6年度末になっている 現状としてはかなり厳しい」
工事は、地元の同意を得て用地取得の契約を結んだ後に着手となります。
下新道では去年10月に住民が工事に同意。計画が持ち上がってから2年もかかりました。
■集落の住民
「県の土木課が何度も説得に来ていた 村に21軒あるが、話がなかなか難しく、見晴らしが悪くなるとか、田んぼが潰れるのも惜しそうにしていた 先祖の田んぼに大きな堤防ができるのだから」
なかなか意見がまとまらず、輪中堤の建設にあたって土地の一部を手放す住民もいます。
■住民
「高い雪山が積んであるところに田んぼがあるけれど、向こう側が10メートルほど取られる 今の堤防よりも少し高めの堤防 輪中堤ができる 水害のためには仕方ないのかなと思う」
■住民
「人間の命を守る 財産と命を守るために必要と認識した 命を守るためにはこれが必要」
住み慣れたふるさとの変化に戸惑いながらも受け入れた住民たち。
用地取得の契約は今年度中にも結ばれる予定で、工事の開始は雪が溶けた後、4月以降となる見通しです。