「首都直下地震」10年ぶりに被害想定を見直し 私たちが備えるポイントは?
今後30年に70%の高い確率で発生が懸念されている首都直下地震ですが、東京都は10年ぶりに被害想定を見直し、公表しました。耐震化などが進んだことで、死者や倒壊する建物は減少しましたが、どんな対策が行われているのでしょうか。
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25日、首都直下地震の被害想定が10年ぶりに見直されました。
東京都 小池知事
「大規模地震の発生が、一層、現実的なものとなっております」
都心南部を震源とする直下地震が発生した場合、震度6強を示す範囲が23区の東部や大田区など広範囲に広がり、区部の約6割にも及びます。さらに、江東区など湾岸地域では、震度7の揺れを観測する場所もあるということです。
最悪の場合、死者は6148人、建物被害は19万4431棟にのぼり、死者のうち、火災が原因で命を落とす人が約4割を占めるといいます。このため、火災対策には特に力を入れています。
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新宿区が「防災街区」として整備を進めているタワーマンション。以前、この場所には――
新宿区防災都市づくり課 竹内英央課長
「古い木造の建物ですとか、耐震性を満たさない建物も多く存在していました」
実はここ、かつて、木造住宅や店舗50戸あまりがたち並ぶ“木造住宅密集地域”でした。こうした場所は災害時、火災が広がる可能性があります。
竹内課長
「周辺の人たちも万が一の時、災害時には整備された公園を一時的な避難に活用できる。建物の中にも、帰宅困難者施設が緊急時には用意されますので」
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道路周辺の耐震化も進められています。練馬区を東西にはしる目白通りは、「特定緊急輸送道路」に指定されています。特定緊急輸送道路とは災害時、救命活動や支援物資の輸送に使われる重要な道路です。今回、都は「特定緊急輸送道路」沿道にある建物の“倒壊リスク”を初めて公表しました。特定緊急輸送道路の全壊棟数分布によると、倒壊するおそれがある建物が多い道路は、赤や黄色で示されています。
練馬区防災まちづくり課 藤本利治課長
「このあたり一帯は比較的、耐震化が進んでいるエリアになります。建物が道路側に倒壊して、道路をふさいでしまうことがあるので」
区内にある環七通りや、目白通りなどの沿道にある建物の約96%が耐震基準を満たしているといいます。
藤本課長
「その沿道の建物が、どれだけ耐震化が進んでいるのかを知ってもらうことで、『その道路は安全に避難できる』とか、判断の材料の一つになればいいのかな」
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私たちが備えるべきポイントはどこでしょうか。被害想定の作成に携わった専門家である、工学院大学・建築学部の久田嘉章教授は「室内の安全対策と備蓄もしっかりやって、家にとどまって、できれば隣の人も助けてあげてください」と話しました。
災害後、家が無事であれば避難所が混雑しないよう、自宅にとどまることが重要だといいます。
工学院大学建築学部 久田嘉章教授
「家の強さ弱さをちゃんと理解して、高層マンションは古くても非常に丈夫につくられているので、火が出たら逃げますけど、基本的に逃げる必要はない。まず落ち着いて対応してください」
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首都直下地震では、23区の大半が震度6強以上ということで、経験した事のない激しい揺れに見舞われます。今回、都は死者数だけでなく、どのような事がおきるのか、被害の様相を示しています。
それによると、発災直後からライフラインが寸断され、生活に大きな支障が出るとされます。例えば、電気ですが、広範囲で停電がおき、その後も計画停電が実施される可能性があります。
下水道では、排水管の修理が終わるまでは、水道供給が再開してもトイレの利用はできなくなります。
携帯電話も基地局も電源の不足により、つながらないエリアが拡大する可能性があるとしています。
飲食料などの生活必需品の確保が、品切れで困難になるとされています。
東京都はこうした災害のシナリオを参考に、被害のイメージをもってもらい、改めて対策や備蓄をするように呼びかけています。例えば、すぐにできることとしては、携帯電話の充電器があるかどうか、簡易トイレの備蓄などがあるか確認をしてみてください。