もう時代遅れ……エスカレーターの「片側空け」 歩くとナゼ危険? 死亡事故も相次ぐ【#みんなのギモン】
そこで今回の#みんなのギモンでは、「エスカレーターで重大事故も」をテーマに、次の2つのポイントを中心に解説します。
●相次ぐ事故 身近に危険
●「歩かないで」メーカーが訴え
山崎誠アナウンサー
「12日、東京都内でエスカレーターに高齢の女性が挟まれて亡くなる事故が起きました。改めて、エスカレーターにはどういった危険性があるのか見ていきます」
「警視庁などによると、事故は12日午前10時半ごろ、西東京市のスーパー『オーケー東伏見店』で発生。警視庁などが駆けつけた際、80代の女性が、首がエスカレーターの手すり部分と床との間に挟まれた状態で倒れていました」
「女性は病院へ搬送されましたが、その後死亡が確認されました。女性は、高齢者が買い物などに使う手押しのカートを押していて、エスカレーターを降りたところ転倒し、挟まれたということです」
鈴江奈々アナウンサー
「こういったスーパーや商業施設、駅などエスカレーターは本当に身近に利用するものです。そこでこういった危険があるということを、改めて痛感しますね」
山崎アナウンサー
「普段から多くの方が利用するものですからね」
山崎アナウンサー
「エスカレーターでの事故は増加傾向にあります」
「今年3月には、茨城・JR水戸駅で72歳の男性がエスカレーターをのぼりきったところで倒れているのが見つかり、その後亡くなりました。男性はジャケットの背中の部分が手すりの吸い込み口に巻き込まれていて、死因は胸を圧迫されたことによる窒息死でした」
「去年5月には、都内の商業施設で4歳の男の子が手すりに左手を巻き込まれ、ケガをしました」
山崎アナウンサー
「日本エレベーター協会によると、2018年~2019年の2年間でエスカレーターで起きた事故は1550件ありました。単純計算すると、1日2件起きていることになります。年齢別のグラフを見てみましょう」
森圭介アナウンサー
「エスカレーターで事故が起きるという感覚があまりなかったんですけれども、数字を見るとひとごとではないなと思います。高齢の方の割合が多いということで、身近に高齢の方がいる場合は本当に気をつけてあげたいなと思います」
山崎アナウンサー
「年齢別で事故の理由を見ると、60歳以上で最も多いのが『ステップ上(乗る部分)で転倒』で419件。続いて『乗降口(乗り降りする所)で転倒』が259件と多くなっています。『挟まれ事故』は16件でした」
「16~59歳では、『挟まれ事故』が142件と最も多い一方で、『ステップ上で転倒』も104件と多い傾向が分かりました。15歳以下の子どもでは、最も多いのが『挟まれ事故』で106件でした」
桐谷美玲キャスター
「私も昔、エスカレーターを降りる時にロングスカートが巻き込まれてしまったことがありました。自動で止まったから良かったんですけど、もし止まってなかったらと思うとゾッとしますね」
山崎アナウンサー
「本当に怖い経験をなさっていることもあると思います。どうして、こうした事故が起きてしまうのでしょうか」
山崎アナウンサー
「1550件のうち、原因別では805件と半数以上を占めているのが『乗り方不良』です。手すりを持っていなかったり、止まらずに歩いたりして正しい乗り方ではなかったことが原因です。153件は酔っ払い、122件はキャリーバッグ、51件は高齢者歩行補助器でした」
河出奈都美アナウンサー
「乗っている時もそうですが、乗り降りする時も(注意が必要です)」
「立ち止まっていたとしても、最近だとスマホを見ながら足下をよく見ずに、降りようとしてつまずいている方を見かけたことがあります。後ろの人にも影響があるかもしれないので、『気をつけよう』と改めて自分を戒めたいと思います」
山崎アナウンサー
「画面に集中していて降りるタイミングを(逃す)ということもありますし、それで前後の方に影響するということもあると思います」
山崎アナウンサー
「こうした乗り方不良の事故を減らすために、企業や自治体が取り組みを強化しているのが『歩行禁止』の動きです。日立ビルシステムは5月、エスカレーターで歩くことの危険性を訴えるため、新たにウェブサイトを開設しました」
「そのトップページには、『左右どちらかの手すりにつかまり、黄色い線の内側に立って、歩かずにご利用ください』などと明記されています。さらにウェブサイトには、なぜ歩くことが危険なのか、具体的に掲載されています」
「まずは、エスカレーターのステップの高さは階段の基準よりも高くなっているため、つまずく危険があります。そもそもエスカレーターは、止まって利用するように設計されています」
「さらに、幅は一般的な階段と比べると狭く作られています。どこに立っていても、しっかり手すりをつかめるようにするためです。ただ、幅が狭いことで、歩いていると他の利用者や荷物に接触する可能性があります」
「他にも、正しい使い方をしていないと隙間に靴などが巻き込まれる恐れもあります」
鈴江アナウンサー
「改めて見ていくと、こういった危険はひとごとではなく、自分の身に起きてもおかしくないなと思いました」
山崎アナウンサー
「鉄道会社の呼びかけや、禁止する条例などさまざまな方法で注意喚起されているんですけれども、こういったことがなくならないのが現状です」
山崎アナウンサー
「(新たに)開発されたものもあります。日立ビルシステムが来年の大阪・関西万博に合わせて開発したエスカレーター。(乗降口では)緑色のLEDで矢印が表れ、『のぼり』ということも示しています。ステップの部分には、立ち位置を示す照明が2つあります」
「この2つの照明は、片側空けを抑止する目的があります。『両側に立ってください』と促すものです。このエスカレーターは、万博会場の最寄り駅である、大阪メトロ夢洲駅に設置されるということです」
森アナウンサー
「テクノロジーが人の行動を変えていくことはよくありますし、もし成功した場合は、この技術が全国各地で採用されてみんなが助かるという流れになるかもしれませんよね」
山崎アナウンサー
「モデルケースになるかもしれませんからね。ただ、片側を空ける意識は昔から根強くありますからね」
桐谷キャスター
「(東京などで)左側に寄って右側を空けるというのは、当たり前のように親からも教わってきたなという印象はありますね」
山崎アナウンサー
「私もそうですし、関東ではその流れで乗る方が多いと思うんですけれども、片側を空けること自体が時代遅れという専門家の指摘もあります」
「エスカレーターの文化を研究する、江戸川大学の斗鬼正一名誉教授に聞きました」
「日本で片側空けが根付いたのは高度経済成長期だそうです。その当時は“忙しくて急いでいる方が偉い”という流れがあったが、今は安全安心重視の価値観に世の中が変化してきている、とのことです」
「急ぐ人を邪魔してはいけない、ということではなく、利用者全員が安全を選ぶことがむしろマナーなんだという意識をみんなが持つべきだ、と話していました」
「エスカレーターを正しく使わないと自分が大ケガをするだけではなく、誰かを巻き込んで加害者になってしまう恐れもあります。エスカレーターは身近にあって普段から利用する人は多いと思いますが、改めて安全のための意識が全国に広がってほしいと思います」
(2024年6月12日午後4時半ごろ放送 news every.「#みんなのギモン」より)
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