【同性婚訴訟】「好きな人と家族として」思いは届くのか 福岡高裁が13日に判決へ 別の違憲判決で一歩を踏み出した人も
戸籍上の性別が同じカップルの結婚が認められないのは憲法に違反しているとして、同性カップルが国に損害賠償を求めた控訴審についてのニュースです。福岡高裁は13日、判決を言い渡します。未来を明るくしたいと裁判を続ける、福岡市の同性カップルの思いです。
■まさひろさん
「牛すじ大根を作ろうと。お酒に合いそうですね。」
■まさひろさん
「料理は普段、こうすけが得意やね。」
■こうすけさん
「そんなことないでしょ。」
仕事の休みが合えば、よく一緒に台所に立つという2人。まさひろさん(37)と、こうすけさん(35)です。7年前から、福岡市の自宅で一緒に暮らしています。
■まさひろさん
「付き合っている期間の半分が裁判という、なかなかないこと。」
■こうすけさん
「法制度が変わってもらえれば助かるのですが。裁判もやりたくてやっているわけではないので。」
2人が望むのは「ふうふ」になること。しかし、今の日本では「男・女」の婚姻が前提で、戸籍上、同性同士の2人が法的な婚姻関係を結ぶことはできません。
■こうすけさん
「いつから男性が好きなんですかと言われることがあるのですが、じゃあ、あなたはいつから異性が好きなんですか。自分で選んだものではない。」
愛する人との結婚が、なぜ等しく認められないのでしょうか。
■まさひろさん
「今の立っている地面が平等じゃない。」
■こうすけさん
「私に何かあった時に、そのあとも、彼のサポートをしたい。」
2人が声を上げたのは5年前です。同性同士の結婚が認められない法律は、憲法で定める「法の下の平等」や「婚姻の自由」に違反しているとして損害賠償を求め、国を訴えました。その中で、特に2人が求めたのは、裁判所がはっきりと今の法律が「憲法違反である」と示すことです。裁判所が現行の法律を「違憲」と判断することによって、法律が変わる、つまり、同性同士の結婚が認められるようになると考えています。
しかし、去年6月。4年に及んだ裁判で福岡地裁が下した判決は、憲法違反とまでは言えないとする「違憲状態」というものでした。結婚についての社会通念や価値観が変遷しつつあると言えるものの、同性婚が「社会的承認が得られているとまでは認め難い」と判断しました。
■まさひろさん
「なぜもう一歩、踏み込んでくれなかったんだろうと思っていて。」
■こうすけさん
「何をもって社会的承認が形成されたという判断をするのか。非常に疑問があるところではあります。」
■まさひろさん
「両親が、まだ生きているうちに結婚して幸せだよっていうのを見せてあげたい。」
2人は裁判を続けていくことを決めました。
性的マイノリティーをめぐる別の「違憲」判決で、新たな一歩を踏み出せた人もいます。
弁護士の太田信人さんは、いまは「男性」として生活するトランスジェンダーです。戸籍上、女性として生まれましたが、幼少期から違和感を覚え「男性として生きていきたい」と思い続けていました。太田さんが戸籍上「男性」になるためには法律上、子宮の摘出など生殖機能をなくす手術が必要でした。
去年10月、最高裁大法廷が性別変更をするための手術を必要とする法律は「違憲」で「無効」と判断を示し、法改正につながりました。体への負担も考え、手術を望んでいなかった太田さんは、戸籍上「男性」になりました。長年、待ってくれていた女性との婚姻届が11月、受理されました。
■太田信人さん
「(他人は)結構、簡単にあんなの紙切れ1枚だからって言うんです。ただ、その紙切れ1枚を出すのに私やっぱり眠れなかった。うれしくて。自分がきちんとこの人を守っていかなければいけないと、意識が変わった。(平等に)経験をすべき、1つの人生のイベントだと思っています。」
太田さんは、まさひろさんとこうすけさんたちのいわゆる“同性婚訴訟”では、弁護団の一人として活動しています。
■太田信人弁護士
「私はその司法の判断で、結婚という一つの目標にたどり着いているので。希望としては違憲判決が出てほしいというのもありますし、出るだろうとも思っているので、いい判決が出てほしい。」
一方、国は福岡高裁の控訴審で「異性間のカップルと同視し得るほどの社会的な承認が存在するとは、必ずしも言えない」などとして控訴棄却を求めています。
このような裁判は全国各地で行なわれていて、地裁ではこれまで判断が分かれていましたが、札幌高裁と東京高裁はいずれも違憲判決を出しました。福岡の原告である、まさひろさんとこうすけさんは。
■まさひろさん
「違憲って言われるだけで、自分の人生をちゃんと生きてていいんだなって思える。肯定感がすごく高まるというか、自分の人生のマイナスに見なくてよくなるというか、本当に救われる気持ちがあると私は感じています。」
■こうすけさん
「自分の好きな人と、堂々と胸を張って法的にも家族として安心して暮らせるような、そんな国になってほしい。判決では違憲と言ってもらって、法制度をつくってほしいと思います。」
13日に迫った福岡高裁の判断。「愛する人と歩んでいく未来を思い描きたい」という思いは、届くのでしょうか。