G7広島サミットから半年 経済効果はあったのか? 日銀広島支店長が徹底解説!【アナたにプレゼン・テレビ派】
広島テレビのアナウンサーが、気になるテーマを自ら取材して、お伝えする『アナたにプレゼン』。G7広島サミットから半年。その経済効果などについて、宮脇靖知アナウンサーが、日本銀行広島支店の支店長の井上広隆(いのうえ・ひろたか)さんに聞きます。
そもそも「経済効果」とは?
■広島テレビ 宮脇靖知アナウンサー
「経済効果とは、プラス要素とマイナス要素があるんですね。」
■日本銀行広島支店支店長 井上広隆さん
「あるイベントの経済効果を考える時には、プラス要素。例えばサミットであれば、道路整備、あるいはその警備にかかったお金、また、各国からの訪問者が広島で使ったお金、これはプラス要素になります。一方、マイナス要素としましては、開催期間中に、どうしても観光についての制約があったというところが、マイナスにカウントする。このプラス要素からマイナス要素を引いたものが、経済効果として、計算のもとになるという事になります。」
■広島テレビ 宮脇靖知アナウンサー
「その経済効果が、今回のサミットでどういう形として表れているのか。広島サミット県民会議の数字で見ますと、かかった費用が526億円に対して、経済効果は1217億円あったという事なんですね。このあたりいかがでしょうか。」
■日本銀行広島支店支店長 井上広隆さん
「費用と効果を直接比べるのは、なかなか難しいところではあるんですけれども、そう申し上げたうえで、明らかにかかった費用を上回る経済効果があったといってよいと思います。特に、広島県内にもたらされた経済効果が非常に大きかったという事がポイントですし、広島県内での費用が120億円に対して、効果が725億円という事で、広島県にとっては、とても大きなメリットがあったと考えています。」
■日本銀行広島支店支店長 井上広隆さん
「経済波及効果について言うと、道路整備や警備で使われたお金は、直接に地元の経済を潤すだけではなく、これがきっかけとなって、新たな経済活動を生み出します。例えば、警備のため全国から集められた警察官の方々が毎日食べる食事を作る必要があります。そして、食事代として支払われたお金は、地元の方々の所得となって新たな消費を生み出します。」
伊勢志摩サミットと比較して見ると…
■広島テレビ 宮脇靖知アナウンサー
「その他のサミットとも比較してみたいんですけれども、7年前の伊勢志摩サミットと見てみても、その時よりも、経済効果は広島が上回っているという事なんですけれども、このあたりの数字から、特長見えることなどありますか?」
■日本銀行広島支店支店長 井上広隆さん
「全体の数字も広島サミットの方が大きかったんですけれども、県内と県外を比較しますと、伊勢志摩の時は県外の方が効果が大きかったのに対して、今回は県内が大きかったのが、大きなポイントだと思います。」
■広島テレビ 宮脇靖知アナウンサー
「伊勢志摩サミットよりも、県内に経済的効果がもたらされた。この要因はどういうふうに見てますか?」
■日本銀行広島支店支店長 井上広隆さん
「1つの仮説としましては、今回の広島サミットが街なか、市の中心部で開かれましたので、色んな警備も含めて、広島市、あるいはその周辺にたくさんの方がいらっしゃったと。そういった方が地元でお金を使うというところが、県内での経済効果の大きさに繋がった面があろうかと思います。」
今後の経済のカギとなるのは、やはり…!?
■広島テレビ 宮脇靖知アナウンサー
「今後への期待ということで、今後5年間でどういう風になると予想しているかといいますと、観光客、それから観光消費額、そして経済効果約1649億円。特に、この観光という数字が大きいですよね。」
■日本銀行広島支店支店長 井上広隆さん
「やはり、観光がカギになってくると思います。この数字は、サミットの次の月、6月だけの数字から引っ張ってきたものなので、これからどうなるかわからないところでもあります。しかし、そのあと、皆さんが感じていらっしゃるように、県内の観光、すっかりペースを取り戻しています。そういう意味では、非常に上々のスタートを切ったと言えるのではないかと考えています。」
■日本銀行広島支店支店長 井上広隆さん
「そう申し上げたうえで、将来の経済効果について考えるうえで、注意すべき点がひとつあります。それは、広島における伸び率と全国における伸び率との差こそが、重要という点です。例えば、広島を訪れるインバウンド観光客数が2倍に増えたとしましょう。ただ、その時に全国を訪れるインバウンドも2倍に増えたとすれば、言い換えると広島が全国と同じペースでしか増えていないとすれば、サミット効果があったと言えるのでしょうか。サミット効果があったと言えるためには、全国を上回る伸び率になることが大切ですし、そうなることを期待しています。」
■広島テレビ 宮脇靖知アナウンサー
「この数字がこれからどうなっていくのかというところ、プラスアルファ、日銀広島支店長としての数字も、お示し頂きたいという風に思っておりますが。まず1つ目に関して言いますと、観光客というところですよね。インバウンド観光客の需要がどうなるのかという事ですね。」
■日本銀行広島支店支店長 井上広隆さん
「前回の伊勢志摩サミットの後のインバウンド観光客、これ三重県の客をみたものなんですけれども、確かに増えてるようにはうかがえると。」
■広島テレビ 宮脇靖知アナウンサー
「伊勢志摩サミット以降に増えているようには見えますよね。右肩上がりにはなっています。ただこれ、全国と比較してみるとというところなんですよね。」
■日本銀行広島支店支店長 井上広隆さん
「全国で、ちょうど、この頃ってインバウンド観光が一番盛り上がった時期ですんで、全国の増え方と比べると、伊勢志摩サミット後の三重県が、それほど増えたとまでは言えないのではないか。そういう面もあろうかと思います。」
■広島テレビ 宮脇靖知アナウンサー
「サミットの効果はあるとはいえるけど、全体的なインバウンド需要もあるので、それは定かではないところというふうに、直接的につながっているとは、いいがたいという数字が出ていると。」
■日本銀行広島支店支店長 井上広隆さん
「インバウンド観光客数という観点からは、サミット効果は明らかでないように思います。言い換えると、サミットを開催したからと言って、一般的なインバウンド観光客が、その街をわざわざ訪れるかというと、必ずしもそうでもないのかもしれません。」
国際会議の件数に注目すると…!
■広島テレビ 宮脇靖知アナウンサー
「サミット効果について、もっとわかりやすい数字があるんですよね。」
■日本銀行広島支店支店長 井上広隆さん
「私としては、国際会議の数に非常に注目しているんですよね。三重県の伊勢志摩サミットと、その前の北海道洞爺湖サミット、どちらを見ても、その前の5年間と、あとの5年を比べると、国際会議の数は非常に増えている。しかも、全国での増え方よりも、はるかに大きな高いペースで増えているのが特徴だと思っているんです。」
■広島テレビ 宮脇靖知アナウンサー
「国際会議は、伊勢志摩サミットで見てみますと、開催する前の5年間は平均して1.8回、それが11回に年間増えて、6倍の数になっているということなんですね。ただ、実数が三重の場合は少ないので、北海道の数字も見ていきましょうということで、北海道を見てみても、ご覧のように、開催後と開催前を比べると、約1.5倍という事なんですね。全国が約1.3倍なので、全国よりも伸びているという事ですかね。」
■日本銀行広島支店支店長 井上広隆さん
「やはりG7サミットを無事に開催できたということは、その都市が大きな国際会議を開催するだけの能力、キャパシティがあることが証明された訳です。その意味で、サミット開催は国際会議の誘致に効果があると思われます。」
広島への期待と可能性
■広島テレビ 宮脇靖知アナウンサー
「広島に関しては、どういったことが期待されますか。」
■日本銀行広島支店支店長 井上広隆さん
「広島では、国際会議の件数自体は同じような規模の都市と比べて多いわけではありません。「札仙広福」という言葉がありますが、札幌、仙台、福岡と比べても、件数自体は多くありませんが、それだけ伸びしろも大きいと言えます。広島の国際会議は、医学、お医者さんの学会とか、あとは製造業が強いので、産業技術関係の会議もたくさんあります。8月には、平和軍縮関係の国際会議がたくさん開かれるっていうのも、広島の特徴なんだと思います。今回の広島サミットで、広島のブランドがさらに高まったことを考えると、来年再来年と国際会議の数が一段と増えてくるのではないかと期待しているところです。」
■広島テレビ 宮脇靖知アナウンサー
「これからの広島の可能性という点について、お話頂ければというふうに思います。」
■日本銀行広島支店支店長 井上広隆さん
「広島っていうのは、製造業がすごくあるんですけれども、サービス業、観光、こういったものをいかに伸ばしていくかっていうのが、ポイントだと思うんですよね。これから、滞在型の観光という意味では、東西の軸、南北の軸、東西の島を使った観光、そして南北はしまなみ海道から、三次、庄原を使って、島根県まで達するような、そういった形で、長い滞在期間をですね、確保できるような観光を伸ばしていければと思っております。」
【テレビ派 2023年11月20日放送】