クマ対策にデジタル技術生かせ 富山のいま
エブリイでは今週、県内の出来事を振り返り、今後に向けた課題を考えます。
きょうは2023年被害が相次いだクマの出没。
デジタル技術を使った対策の現状を取材しました。永井記者のリポートです。
視聴者提供動画
「おじいちゃんクマ!クマ、逃げて!」
2023年10月、富山市の中心部から14キロほど南の地区で撮影された映像です。
田んぼの中を歩くクマのすぐ先には男性の姿がありました。
この直後・・・。
カメラマン
「なにがあったんですか」
住民
「クマ!人身事故」
カメラマン
「何人ですか?」
住民
「2人!」
奥野香子記者
「いま、救急車が動き出しました」
サイレン音
「ピーポーピーポー」
クマは近くの住宅に玄関のガラス戸を破って侵入し、女性2人を襲いました。
クマに襲われた女性(75)の夫
「(妻がクマに)やられたからすぐ中に入って(自分で)電話かけたんだと思うけど…くそっ、ハァ。だけど、こんなところ…おかしい、クマっちゃ。何十年もおるけどこんなところ来るわけないんだけど…」
今年はクマによる人身被害が相次ぎました。
最初の被害は8月。登山口で男性が襲われ、けがをしました。
10月以降は富山市の郊外で立て続けに被害が発生します。
県内では2006年以来となるクマの被害による死亡者も。
2023年、クマに襲われけがをした人は9人にのぼります。
県内でのクマの出没は10月と11月で433件。
2022年の同じ時期と比べると15倍以上で、この10年では大量出没と言われた2019年に次いで2番目に多くなっています。
背景には、クマの餌となる山のドングリの不作があるとみられ、各地でクマが好んで食べるカキの木の伐採が行われました。
そしてこの秋は、デジタル技術を使った新たなクマ対策の導入が進みました。
栴檀山自治振興会 前田幸雄会長
「カメラはねこちらに設置してあるんですよ。これカメラの設置になります」
カメラを設置したのは砺波市栴檀山地区の自治振興会です。
センサーが熱を感知すると撮影し、撮った画像はリアルタイムで前田会長などのスマホに届く仕組みです。
栴檀山地区では2023年、害獣用のおりに小グマがかかっていることがたびたびありました。
近くに親グマが潜んでいる可能性もあり、不用意に近づくのは危険です。
離れたところからでもおりの状況を把握できるよう、地区の10か所にカメラを設置しました。
前田会長
「まずここにエサを入れています。エサを食べて無くなったかどうかをこれまではしょっちゅう確認しに来られてました。それが確認に行かなくてもこのカメラを通じて減ったか分かります。見えますから。(クマが)どこにいるか分からないってのがありますから、そんな現状の中(安全に)確認できるっていうのが大変にありがたいと」
おりにクマがかかった場合は、地区が導入している回覧板アプリ「結ネット」を通じて住民に、画像付きで情報発信しています。
前田会長
「『注意してください』っていう喚起にも大変役に立っていると思ってます。この結ネットの場合は瞬時に皆さんのほうにご案内できると」
ただ、クマ以外の動物がおりにかかった場合も画像が送られてくるため、1つ1つ確認するのが大変、といった課題もあります。
前田会長
「一番来るのはタヌキです。あとハクビシン。たまに鹿も来ます」
一方、富山市はクマ、シカ、イノシシなどを見分けることができるAIカメラをクマの出没が確認された場所を中心に10台設置しました。
その精度は99.9パーセントということですがAIカメラが検知して、捕獲に至ったのはこれまでに1件のみ。
原因として市の担当者は「出没範囲が広すぎて網羅できない」としています。
専門家は、クマ対策にカメラは有効であるものの一定の成果につなげるにはかなりの台数が必要だろうと指摘します。
県自然博物園ねいの里 赤座久明さん
「もし設置するんなら相当莫大な予算を投資して、ハンターが減って見回りする頻度が低くなったから、それをカメラで補おうと考えると、相当な台数を準備しなきゃいけないことになりますよね。高いやつを小数置くよりも普及品をたくさん置くほうが良いっていう場合が多いように私は思うんです」
赤座さんはクマの移動経路となる川沿いなどへ集中的に設置すると検知数が増えるのではないかと話しました。
クマによる被害は2023年だけの話ではありません。
対策の見直しや新たな対策の導入。
そして、人材の育成も急務です。
被害防止に向けて積極的な取り組みが必要です。
シリーズ21日は、6月と7月の記録的大雨による被害です。