【解説】加賀料理を国の文化財に 野口さんの目からウロコ
北國新聞論説委員の野口強さんとお伝えします。よろしくお願いします。きょうはどんな話題でしょうか。
北國新聞論説委員・野口 強 さん:
藩政期から伝わる「加賀料理」を国の文化財に登録するため、石川県は、そのステップの第一弾として、来年夏にも、伝統を受け継ぐ地元の料理人たちの団体を設立することになりました。
野口さん:
加賀料理は、石川の美術工芸や茶道と結びついた総合芸術と言われます。
市川:
こうした分野の担い手が、一体感をもって、加賀料理の価値をアピールしたいですね。
野口さん:
そこで、きょうのテーマは、こちら。
野口さん:
「“加賀料理”を国の文化財に」
料理人の団体については、先日、開かれた金沢経済同友会と 馳知事との意見交換会で説明がありました。
市川:
文化庁から、登録にあたり加賀料理の技術を守る組織を作ってはどうかと助言があったそうです
野口さん:
登録文化財になると、国から保存に必要な支援も受けられるので、新たな組織はその受け皿としても生かせると思います。
優れた料理人の方は、概して個性が強く、何かに共同で取り組むことが少ない傾向もあります。
こうした団体を生かして、一体感のあるイベントや、勉強の場を設けることも期待したいですね。
1つ目の、目からウロコです。
野口さん:
「食材、器、料理絶妙のチームプレー」
この加賀料理、明確な定義はないんですが、市川さんはどんなイメージを持っていますか。
市川:
豪華かつ繊細な和食のイメージで、高価なイメージもあります。
野口さん:
県は、登録の準備として県内の料理店約100店に、加賀料理の特徴を聞くアンケートを行いました。
それによると、
・加賀藩のもとで保護された質実剛健な武家文化が土台
・伝統工芸の器と組み合わせた色彩豊かな盛り付け
・場を整える洗練されたしつらえ
…といったことが特徴として挙げられました。
野口さん:
今後、こうした意見を参考に特徴を絞り込むと思いますが、登録無形文化財にはすでに京都の「京料理」も選ばれていますから、違いをどうアピールしていくかが課題となります。
野口さん:
現在、県立美術館で加賀料理ともリンクする「食を彩る工芸」という展覧会が開かれています。
県内の老舗料理店や旅館で使われてきた質の高い九谷焼や輪島塗の器が展示され、合わせて、屏風など食事の場を整える美術品も並んでいます。
市川:
この器に料理を盛り付けるとなると、大変な力量が求められますね。
野口さん:
器の形や彩りと料理との調和にも気配りが必要で、器に負けないという緊張感をもって仕事をしてきたことが、クオリティーの高い加賀料理が生まれた理由だと言われます。
もう一つ、石川県は山や海が比較的、町に近く、鮮度の高い食材を多くの人に提供できることも重要です。
一流の料理人を中心に、豊かな食材と器、場のしつらえ、いずれをとっても超一流のクオリティーを持ち、それを地元の生産者と職人たちの、いわばチームプレーで賄えるところは、日本の地方ではほとんどないと言えると思いますね。
2つ目の、目からウロコです。
野口さん:
「美食を支える美酒世界遺産 追い風に」
先だって日本の伝統の酒造りが、ユネスコの世界無形文化遺産に登録される見通しになりました。
石川は日本有数の酒どころで、能登杜氏のふるさとでもあります。
市川:
お酒と抜群に相性のいい加賀料理にとっても、またとない追い風になりますね。
野口さん:
実は酒造りも、国の登録文化財になってから、その価値を世界に発信するストーリーが始まりました。
気が早すぎる話…かもしれませんが、加賀料理も登録をめざすことで、世界への道が開けるかもしれません。
野口さん:
もう一つ、地元の私たちが忘れてならないのは、質の高い食材を届けて加賀料理を支えている能登の里山里海。
地震と大雨で厳しい状況ですが、復旧途上の港からズワイガニの便りも届いています。
そんなことに思いを寄せ、少し遠回りであっても復興を応援するために、お酒とともに能登の恵みを使った加賀料理を楽しんでみてはいかがと思います。
市川:
野口さんの目からウロコでした。