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”シカ”と”スズ” 能登半島地震から半年…二つの町の原発への思い

2024年7月19日 18:53
”シカ”と”スズ” 能登半島地震から半年…二つの町の原発への思い

石川県内には、原発のある町と、建設が計画されながらもできなかった町があります。能登半島地震の発生から半年あまり。それぞれの町の住民の思いや原発を取り巻く状況を取材しました。

志賀原発がある 志賀町赤住地区。
7月5日、地元と北陸電力との会合が開かれていました。

電力会社側が定期的に志賀原発の状況などを報告する会合で、元日の地震の後、初めての開催となりました。
志賀町では能登半島地震で最大震度7の揺れを観測し沿岸には津波が襲来。志賀原発では原子炉建屋の地下で震度5強の揺れを観測し、変圧器やタービンに損傷を受けました。

しかし幸い、放射能が漏れるなどの深刻な事態には至らず、赤住地区も甚大な被害は免れたといいます。
そうした中、今、原子力規制委員会で審査が進められている志賀2号機の再稼働について地元の住民は…

地元の若い住民
「僕が生まれた時からすでに原発は立っていたので。家族もいますし、安全面をしっかり、北陸電力には考えてほしい」
田村実 区長
「原発がいいとか悪いとかではなくて、止まっているために、(対応が)1時間で済むものが1日放置されるということも出てくる。管理のためにも動かしていただければ一番いいと思う」

志賀原発は1号機、2号機ともにこの13年間、停止状態。それでも原発は地域の中にあり、住民たちは共存していくしかありません。

一方、原発の建設が計画されていたものの、できなかった場所があります。
珠洲市高屋町。海沿いの静かな集落です。

原発の誘致をめぐり、推進派と反対派で町は割れていました。しかし、珠洲原発の計画は2003年の暮れに凍結。電力会社の経営環境の変化や反対運動などが理由で、事実上の断念でした。

それからおよそ20年。元日の能登半島地震は、高屋町付近が震源でした。住民たちは一時孤立し、その後、ほとんどが珠洲市の外へと避難しました。

高屋町で代々続く寺の住職 塚本真如さんです。この日、避難先の加賀市でかつての珠洲での原発計画について話していました。

「これ(原発)は人間とは共存しない、分かってくる…勉強すると」

塚本さんは反対派の中でも中心的な存在。反対派の住民たちは集落に出入りする電力会社の動きを見張るなど、阻止行動に明け暮れましたが…

塚本真如さん
「勝ち負けではないですよね。原発というのは。どっかから降ってわいたような話。(計画を)やめるのもここの人が決めたのではないですし。自分の力で思考して、モノを生み出していこうと言う思考力が欠落させられたというか…」

原発の計画が消えても虚しさが残りました。
その高屋町は今…
港の亀裂などは元日のまま。至る所に地震の爪あとが残っていました。
塚本さんのもこの日、地元に戻っていました。お寺は全壊していて、今は友人らの手を借りて必要なものを運び出す作業中。この先、寺を再建するつもりはないといいます。

一方、港に仮設住宅が完成し、この日は入居する住民への説明会が開かれました。

珠洲市職員
「高屋町第1団地となります」

「自分は最後でいい」と、ほかの住民を優先させる考えだった塚本さんですが、辞退する人が出たため、思いがけず入居できることになったのです。

塚本さん
「これが俺の部屋か。上等やな。2軒か3軒やね、戻ってこん人は。こんな所に誰が帰ってきたいと思うかしらんけど、不思議やね。不思議や」

およそ50世帯が暮らしていた高屋町。仮設住宅ができたことで住民が戻り始めています。しかしもし、この町に原発ができていたら…

能登半島地震を機に、志賀原発への風当たりが強まっていました。そして、かつての珠洲原発の反対運動が改めて注目されています。金沢市で開かれた原発に反対する団体による全国集会。

「能登半島地震は最後の警告」と、原子力政策の転換を求めています。しかし、政府は今安全確保を前提として原発の再稼働を進めるスタンス。

齋藤 健 経産相
「柏崎刈羽原子力発電所の再稼働は極めて重要であると、大臣として認識をしています」

新潟県にある東京電力の柏崎刈羽原発7号機は6月、再稼働に向けて技術的な準備が整った段階に。
また、お隣りの福井では新たな規制基準をクリアした関西電力の運転可能な原発7基全てが再稼働に漕ぎつけています。

そして、北陸電力は…
北陸電力・ 松田光司社長
「電力の安定供給を前提にしながら、どうカーボンニュートラルを目指すか電力事業の大きな経営の課題になると思う。脱炭素の対策をしっかり進めていくことが重要だと考えております」

「脱炭素」の流れが世界的に進む中、国と電力会社は原発は重要な電源と捉えています。志賀原発の再稼働は能登半島地震の影響により、審査の長期化が避けられない見通し。

地元にとっては事故があった際の避難計画なども課題で、安全性に対してより一層厳しい目が向けられています。

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