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『シリーズ人口減少』⑮女性の活躍 地方に残る無意識の偏見 女性が活躍する社会へ【高知】

2025年3月20日 19:06
『シリーズ人口減少』⑮女性の活躍 地方に残る無意識の偏見 女性が活躍する社会へ【高知】
人口減少が進む高知県内で、より良い高知の未来を考える人口減少シリーズ。今年度最後は「女性の活躍」をテーマにその意義について考えます。

国の調査で去年、高知県は転出者が転入者を上回る「転出超過」が、人口比で全国で最も多い3121人でした。このうち15歳から34歳までの若い女性は1368人と全体の4割を超えていて、進学や就職による若年女性の転出がいま大きな課題となっています。

県では去年、県内外在住の若い女性100人にアンケートを実施。すると、大学など進学時には「将来の就活時での企業や業種の選択肢の多さ」、また「多様な価値観や文化に触れる」といった理由が多く、就職する際には「スキルアップ」や「企業の将来性、給与面」などが理由として上がりました。

若い女性が高知から出ていく背景についてジェンダー問題などが専門の高知大学の森田美佐教授は、地方にある『無意識の偏見』を指摘します。

■森田教授
「やっぱり女性を生かす場がなかなか少ないというか、無意識の思い込みっていうんですかね。バイアスってありますけど、女性が何かしたいというと、ここからここまでだろうというふうに、ひょっとしたら組織の方でも思い込んでいるのかもしれないので。例えば結婚したらもう無理だよねとか、そういうことをちょっと思っていないかどうか」

これについて、高知放送でも3月にアンケート調査を実施し、年齢や性別を問わず600人を超える人から回答を得ました。『女性が活躍できているか?』という問いでは「活躍できていない」が約4割を占め、理由としては「女性が家事育児を優先せざるを得ない」が最も多く、ついで「女性は男性に比べて重要な業務に携われる機会が少ない」、「役員・管理職に女性がいない(少ない)」の順に多くなりました。

森田教授はこの結果について、女性が活躍できない背景には昔ながらの働き方があるからだと指摘します。

●森田教授
「ある意味(夜)7時、8時、9時まで仕事をしないといけないとか、土日呼び出しがあるとか、そういう時に子供も熱を出しますし、自分は体調が悪かったりする、でもそういうものを全部押し殺してでも仕事を優先しないといけないというような価値観がある中で、そもそもこの(管理職の)働き方自体が私たちの暮らしの中のいろいろなことに寄り添う姿勢に欠けているという、そこを私たちは読みとらないといけない」

また、管理職や役員に女性が少ない点についても次のような風潮があるとしました。


■森田教授
「今までの管理職とか役員の方々の意思決定ですよね。無意識のうちに過去にならえでずっとやってきたっていうとこが一番大きいのかなというふうに思います。過去にならえで決めてきた結果、男性になってしまったというような。あともう一つは管理職、日本の働き方そのものだと思うんですけど、上層部の働き方そのものが暮らしと相容れない」

また、森田教授は今の若い人たちは家事、育児を性別に関係なく担う考えを持っていて、就職活動で重視するのは福利厚生が充実し休暇がしっかりとれるかだと指摘。そのため、地方に根強い古い慣習や古い働き方の職場はもはや選ばれないというのです。

そんな中、県内では女性の活躍を積極的に進めようとする企業も出てきています。
国が女性の活躍を進める企業を公式に認定する「えるぼし」制度。高知労働局によりますと、県内16社が取得しました。

2017年、県内で初めて取得したのが高知銀行です。
高知銀行では694人の従業員のうち約半分が女性で、女性役員の割合は16・6%、女性管理職の割合は27・5%です。

高知市の高知銀行春野支店で3年前から支店長を務める西村典子さんは、県外の大学を出たあと高知銀行に入り、14年目に管理職となりました。

■西村支店長
「私自身、育児休業を取得して復職後は職場、家族の協力を得ながら仕事を続けてこれた」

高知銀行では結婚を機に離職する女性を防ごうと独自の取り組みを実施。育休者を対象にした遅出・早退制度や女性管理職育成を目的とした研修。また時間単位で取得できる有休もいち早く2019年から導入しています。
西村さん自身が子育てと管理職業務を両立したことで、現在子育て中の部下などに配慮もできているということです。

若い人たちへの効果について人事部門はー。

■人事部門 濱田さん
「支店の店舗に行っても、管理職の女性の方が必ずいるような環境で働くようになるので、ご自身の5年後10年後そういったものは想像しやすい、目指す姿が想像しやすい環境で働けるような今は状況にはなっているかと思う」

県外へ若い女性が流出している状況について西村支店長はー。

■西村支店長
「実際高知でも地域に貢献できるというところ(企業)は数多くあって。ぜひ若い人たちにも高知、地元 で活躍してもらいたいと思います」

一方、女性活躍は意外な業種でも進みつつありました。
高知市で土木業を営む高陽開発は、去年「えるぼし」を取得しました。いま土木や建設業界では人手不足が特に深刻で、高陽開発では、業界のイメージとされる3K(きつい・汚い・危険)といった職場の印象を変えようと取り組みを進めてきました。

■高陽開発・玉木社長
「新3K(給与が良い、休暇が多い、希望が持てる+かっこいい)ということを目指して、若い人女性の方が活躍していただけるように改革していこうと」

改革は、いまの若い人の常識に合わせるだけでなく、玉木社長自身が望んでいたことでした。

■玉木社長
「自分たちが若い時に現場やって会社へ6時過ぎに帰ってきて、それから書類の整理をする、ということは帰りが9時10時になり、当然疲れるし、休日なんかも書類に追われて、休日出勤なんかもせないかんと、それが非常に嫌だった」

そこで、従業員が定時で退社できるよう、書類整理など工事のサポートをする部署を5年前に作りました。現在、その部署で課長を務めるのが初の女性管理職・川村未来さんです。川村さんは県内の工業高校を卒業後、建設会社に勤めていましたが、結婚を機に退職しました。しかし、この業界が好きだったため、子育てが落ち着いた7年前、高陽開発に入社しました。

■川村さん
「現場が竣工した時とかすごい感動する。やっぱりものづくりって何もないところから物ができる」

川村さんは1級土木施工管理技士の資格を持っていて、工事書類の作成補助から工程管理や品質管理などの施工管理のほか、現場を回って従業員の健康管理や安全管理を行っています。

■川村さん
「一番大事にしたいなと思ってるところが従業員の方の表情を見て、お話をして、変わったことがないかどうか、体調が悪くないかどうかとか」

土木は現場での業務が多く、いま女性は6人ですが現場監督を務める人もいて、川村さんは初の女性管理職としての経験を活かしたいと考えていました。

■川村さん
「下の子(若い世代)が育っていけるように一番手じゃないけれど、そういう風に道を作れたら一番いいのかな。自分のやるべきこと、仕事をしやすい環境を作るであるとか、そういうことを目標にして、長く働きたいと思ってます」

県内企業で少しずつ進み始めた女性の活躍。その本質的な意義について、高知大学の森田美佐教授は重要な考えを示しました。

■森田教授
「私は女性が働いて偉くなることがこの社会に必要ですっていうわけではなくて、それよりも組織とか社会全体が強くなるために(女性活躍は)あると思っていますので、これまでは似たような年齢の似たようなライフスタイルのものの考え方、価値観も似通っているので、そういう人たちが地域とか職場とか政治とか、いろんなところで物事を決めてきた。しかし、これからというのは先が見えにくい時代だと言われていますよね。『女性』という、あえて『』つけます、異質っていうかそういうものが入ることで、組織はこれまで気づかなかったようなことが見えるようになる」

女性が活躍できるような取り組みを進めることで、若い世代が求める働き方や多様な価値観が根付き、組織にとってもプラスになるということです。若い世代が都会ではなく高知で働きたいと思えるような未来を作るため、私たちはこれまでの在り方を早急に見直す必要があるのではないでしょうか。
最終更新日:2025年3月20日 19:06
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