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怪物“OSO18”が遺した教訓 駆除1年“忍者クマ”を追い続けた藤本さんが伝えたいこと 

2024年9月4日 11:54
怪物“OSO18”が遺した教訓 駆除1年“忍者クマ”を追い続けた藤本さんが伝えたいこと 

道東で66頭もの牛を襲ったクマ・OSO18。

あの騒動から1年が経ちました。

捕えてみればありふれた1頭のクマでしたが、なぜ「怪物」と呼ばれるまでに至ったのか。

OSO18の足跡改めて探ると、そこから得られた教訓が浮かび上がります。

展覧会「OSO18としべちゃ」で耳目を集めたものは…

(金澤記者)「OSO18の等身大パネルが展示されています。身長170センチの私と比べるとその大きさが分かります」

「OSO18としべちゃ」。

道東の標茶町で注目の特別展です。(2024年9月8日まで)

というのも、あのOSO18の本物の牙や…

致命傷を与えた弾丸をリアルに見ることができるからです。

日本中が注目・恐れたクマ…それが「OSO18」

(旭川から来た人)「クマが何でそこまで変わっていったのか、なぜ人間に恐怖を与えるまでの存在になっていったのか興味は持っていた」

(記者)「OSOのニュースは見ていましたか?」

(東京から来た人)「けっこう流れてきていて、そういうことが実際にあると怖いなと思います」

出没場所の「オソツベツ」と足跡の幅「18センチ」からついたコードネームは「OSO18」。

道東を恐怖に陥れたクマです。

2023年6月に撮影された写真には、体長2メートルほどのオスのクマが、2本足で立ちあがる様子がはっきりとー

およそ4年にわたり、標茶町や厚岸町で繰り返し牛を襲い、その数は少なくとも66頭にも及びました。

捕獲が難航した理由…

それは、人に対する警戒心の強さでした。

「神出鬼没の忍者グマ」「巨大な怪物」。

イメージだけが膨れ上がるなか、騒動はある日突然に、意外な幕切れを迎えました。

“その日”はあっさり、と突然に…

(釧路総合振興局 杉山誠一 くらし・子育て担当部長)「家畜被害をあたえておりましたヒグマ・OSO18と呼ばれるものと確認されました」

標茶の隣・釧路町の牧場で、鹿撃ちのハンターに偶然駆除されていたことが分かったのです。

「巨大な怪物」の正体は、体長2メートル10センチ・体重330キロ。

捕えてみれば10歳程度のオスのクマとしては一般的な体格でした。

(駆除したハンター)「駆除したヒグマはすぐに食肉加工業者に運ばれ、鮮度の良いうちに解体された。このヒグマの存在を物語る資料は、クマの牙と頭部を撃ちぬいた銃弾のみである」

この展示会を企画した博物館の学芸員・坪岡始さんです。

(標茶町博物館ニタイ・ト 坪岡始学芸員)「クマ撃ちとして標茶で60頭近くとった茅井さんという方が使っていた本物の銃です」

博物館には、明治から昭和にかけてクマから標茶町を守ってきた、先人の装備も展示されています。

(標茶町博物館ニタイ・ト 坪岡始学芸員)「昔は牛より馬の生産が盛んで、馬を襲うクマが多かったそうです。クマ撃ちの名人は周辺で知れ渡っていて、害を及ぼすクマがいた場合はクマ撃ちに山に入ったと聞いています」

森と人里の“境界”が、クマと向き合う人々によって守られてきた歴史があります。

しかし近年、駆除される機会が減ったこともあり、この“境界”が薄れつつあります。

薄れる“境界”「味を覚えたクマ」の恐怖

この夏、連日の出没を繰り返し、オホーツクの枝幸町に緊張を走らせたクマです。

廃棄物のホタテを食べるため現れた…と考えられています。

エサの味を覚えて執着し、繰り返し出没する姿は、まさにOSO18と重なります。

(標茶町博物館ニタイ・ト 坪岡始学芸員)「人が住むところとクマが住むところを分けなければいけないとどの方もおっしゃいます。クマも安心安全に暮らせる地域を我々の方で区分けして設定しなければいけない」

OSO18の追跡を指揮してきた藤本靖さんです。

道からの委託を受け「OSO18特別対策班」のリーダーとして活動しました。

被害の連絡があれば夏冬問わず山に入り、足跡などの手がかりを探す日々でした。

その藤本さんも、ズバリ指摘します。

(南知床・ヒグマ情報センター 藤本靖さん)「クマがエサに執着するというのがこの地図からも見て取れますね」

OSO18が駆除された後も続けているデータの分析作業。

赤い目印や、色の違う複数の線はOSO18の被害や移動ルートを示します。

いちど牛を襲った牧場に何年にもわたり足を運んでいることが裏付けられています。

さらにー

(南知床・ヒグマ情報センター 藤本靖さん)「肉食化していたということに尽きる。肉食化の原因は、エゾシカが山の中に無造作に捨てられていたこと」

“シカ”や“トド”が“ウシ”にむかわせた…?

増加の一途をたどるエゾシカ。

駆除された後、適切に処理されず、放置されるケースもあるといいます。

不法投棄されたシカで肉の味を覚えた「普通のクマ」が、何らかのきっかけで牛を襲うようになったのではないかー

藤本さんは、そう考えています。

クマ対策を担うNPOで活動する藤本さんの日課・町内のパトロールに同行するとー

(南知床・ヒグマ情報センター 藤本靖さん)「ここによく海岸に漂着するトドが打ちあげられる。トドの死骸をクマが嗅ぎとって海岸に出てくる」

海岸につくと、トドの死骸やクマの足跡を探して回ります。

トドの死骸はクマにとって格好のエサ。

においに誘われたクマが出没を繰り返したこともありました。

(南知床・ヒグマ情報センター 藤本靖さん)「シカでもなんでも死骸があれば、においでクマはすぐ寄ってくるので、クマがエサの味を覚えてしまったことで、人間に対して被害が起きてしまう、それを防げるのは人間でしかない」

藤本さんが思う「OSO18が残した教訓」。

それを伝えるために7月、追跡の様子を記録した本を出版しました。

多くの人がクマについて知ることが対策の近道と考えているからです。

(南知床ヒグマ情報センター 藤本靖さん)「ひとつの食べ物に執着するというのはどこの地域でも同じです。仮にそうなってしまったら、同じことをそのクマはどんどん繰り返していきます。それをさせないようにする努力が人間側として必要ですし、OSO18から得られた教訓は、ひとりでも多くの人にクマのことを知ってもらうことに尽きるのではないかと思います」

クマの目撃情報が相次ぐ道内。

OSO18と呼ばれたあの1頭は、クマを近づけないため、人間が守るべきことを私たちに訴えかけています。

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