「足場はかけているが、工事の音は全く聞こえない」台風10号・竜巻被害からの復旧進まぬ宮崎市
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台風10号が襲来してから1カ月が経ちました。
8月28日から29日にかけて、宮崎市内では竜巻が発生し、各地で大きな被害をもたらしました。
今回は、特に竜巻の被害が大きかった宮崎市の城ヶ崎地区に焦点を当て、その復旧状況を取材しました。
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台風10号による竜巻は、宮崎市内で住宅やインフラに大きな損害をもたらしました。
現在までに住宅の被害は、全壊・半壊が23棟、準半壊が74棟、一部損壊が750棟に達しています。
また、罹災証明書は660通以上が発行され、現在も多くの住民が避難生活を強いられています。
復旧が進まない城ヶ崎地区の現状
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宮崎市の城ヶ崎地区は、風速65メートルにも及ぶ竜巻の直撃を受け、大きな被害を受けました。
1カ月が経過した今でも復旧は進まず、多くの家では足場が組まれているものの、修理に着手できていないのが現状です。
城ヶ崎自治会の河野一平会長によると、業者や資材が不足しており、修復作業はほとんど進んでいないといいます。
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「足場はかけているが、工事の音は全く聞こえない」と語る河野会長。
被害を受けた30棟の住宅のうち5棟の解体が決定していますが、いつ作業が始まるのかはまだ見通しが立っていません。
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折れた電柱もそのままの状態。
電気が復旧していないため、付近の住人は家で暮らせない状況が続いています。
被災者の苦悩と避難生活 見えない被害
被害を受けた家に住めなくなった住民の一人が取材に応じてくれました。
外からはあまり被害を受けていないように見えますが、家の中はガラスや瓦が飛び散り、住める状態ではないといいます。
特に、2階の部屋は雨水の重さで天井が落下し、雨漏りによって家屋内が大きく損壊しました。
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被災した住人は、市が用意したホテルを転々としながら自宅に通って片付けを続けていますが、38年間住み続けた家が一瞬で壊れ、家族の思い出の品を失ってしまったことに大きな喪失感を抱いています。
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「家は財産というより、38年間の思い出が詰まっている場所。何とかここに戻りたい」と話しますが、保険手続きがまだ進んでおらず、自宅の再建についても家族と相談しながら決める必要があります。
一見、元の生活に戻ったように見えても、被災者の多くは未だに大変な生活を強いられています。
一人暮らしの男性の家では、居間の畳が雨漏りによるカビで汚れている状態でした。
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修理の見積もりもまだ立っておらず、肉体的・精神的に限界を感じていると話します。
復旧の課題と今後の支援の必要性
1カ月が経過したとはいえ、復旧の進展は遅れ、生活再建にはまだ時間がかかる状況です。
竜巻の被害は想像以上に深刻で、これからも継続的な復旧支援が求められます。
被害を受けた住民が1日も早く平穏な日常を取り戻せるよう、行政や地域社会が手を取り合って復旧を進めていくこと、そしてこの経験を風化させず、次に備えた防災意識を高めていくことも必要です。