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土砂災害の前兆に注意 鶴岡市の災害を教訓に 「大みそかの異変」③

2023年12月27日 17:00
土砂災害の前兆に注意 鶴岡市の災害を教訓に 「大みそかの異変」③

シリーズでお伝えしている「大みそかの異変」。専門家は鶴岡市の土砂崩れ現場のような地質は山形県内各地にあるといいます。3回目は冬の土砂災害から身を守るための注意点や備えのポイントについて
取材しました。

鶴岡市西目で発生した土砂崩れー。
これまでの専門家の調べで土砂崩れが起きた要因は▽現場の地盤が年月の経過に伴いもろくなる「風化」が進んでいたこと、▽さらにもろくなっていた地盤が現場でおよそ50年前に行われていた掘削工事の影響で不安定な状態になっていたこと、▽その後、去年までの年月の中で地盤に亀裂が生まれ、大きくなっていったこと、▽さらに去年12月、記録的な大雪が降って雪解け水となり、地盤に圧力が加わったことが重なったためと考えられています。
山形大学災害環境科学研究センター所長で地質学を研究する本山功教授は、今回の土砂崩れが発生した原因を調査しています。本山教授は現場の地盤の岩石が非常にもろい状態になっていたと指摘します。

本山教授「10メートルはいかないが5、6メートル下から採取した。元は同じ岩石だが赤いのは風化したもの。こう…少し指で力を入れるとどんどん割れてしまって粉々に潰れてしまう。やはりあそこまで大きな崩れになるのは地盤が相当脆くなっていたことが大きな要因だと思う」

本山教授は、鶴岡市の土砂崩れ現場と同じような地質や気象環境で地盤の風化が進んでいる場所は県内各地にある可能性を指摘します。

本山功教授「西目と似た地質は庄内地域にもありますし、最上も村山も置賜も全部あります。去年8月に豪雨災害を受けた飯豊町や小国町も西目と同じような時代の地層が分布している。地質学的に山形県全体が似たようなもので出来ている。全体的に同じような時代にできていて凝灰岩、火山噴出物、海にたまった物などで形成されている。気象条件については、山形県全体で特にこの地域が特段雨が多いとか日照時間が違っているとかそういう風なことはないのでほぼ同じ条件と考えていい。特に西目だから風化が進んでいたわけではなくどこでも風化は起こりうる」

鶴岡市では発生直前、記録的な大雪が降っていて、大量の雪解け水が地盤の亀裂を大きくし土砂崩れにつながったとみられています。冬は、雪解け水が土砂災害につながるケースがあるとした上で、冬の土砂災害は発生の予測が難しいと話します。

本山教授「大雨のようなものが雪解けという形で繰り返されている。大雨の時だと大雨が降っている時に警戒心が高まるが雪解けの時期は雪解けがいつか分からないところが難しい。1、2か月間、雪解けが終わった後でも少し浸透に時間がかかってから土砂災害が起きる可能性がある。少し長いスパンで注意が必要」

土砂災害の前兆には▽湧き水の量の変化や濁り▽斜面の亀裂▽山の樹木などが傾く▽小石が落ちてくるなどの現象があります。
一方、冬は雪に覆われて斜面の状態が見えづらいこともあり土砂災害の前兆に気付くことも難しいといいます。
今回の鶴岡市の土砂崩れでも現場付近の住民で前兆に気付いたりした人はいませんでした。

本山教授「なかなか難しい…今回も前兆現象のようなものは見つかっていないとなっているが、非常に微弱な変動で地面が少しずれたりとか肉眼で見られないものがもしかしたらあったかもしれない」

その上で、備えとして重要となるのが「日頃のちょっとした変化に気付く」警戒心と災害が発生した際の対応を確認しておくことだといいます。

本山教授「土砂災害警戒区域に指定されているような所では普段から前兆がないか住民の方が監視するということが大切。通学路や通勤路などでも危険な場所がどこにあるか、知っておくことも重要。建物内では逃げられない時には垂直避難で2階に上がるなどそういったことを心掛けていくことがいざというときの備えになる」

県内の土砂災害警戒区域は11月17日現在「5186か所」に上ります。いつ、どこで起きるか分からない、冬の時期の土砂災害。日ごろからの備えが私たちの命を守ります。

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