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【独自解説】「辞めたほうがいいということ?」対立する日大・林理事長と澤田副学長のやりとり判明…3年連続“補助金ゼロ” 立て直しに必要なこととは?専門家が解説

2023年10月25日 14:48
【独自解説】「辞めたほうがいいということ?」対立する日大・林理事長と澤田副学長のやりとり判明…3年連続“補助金ゼロ” 立て直しに必要なこととは?専門家が解説
林真理子理事長、臨時理事会で澤田副学長の解任を提案

 「私学助成金」の3年連続全額不交付という異例の事態になった日本大学。アメフト部の薬物事件への対応を巡り2023年9月4日、林真理子理事長が澤田康広副学長に対し“辞任要求”し、その際の“やりとり”が明らかになりました。そして、10月24日に行われた臨時理事会で林理事長が、「情報漏洩」などを理由に澤田副学長の解任を提案し、理事らに検討するよう求めたといいます。弁護士・野村修也氏によると、「この『情報漏洩』というのは、“辞任要求”時の会話のやりとりが、ほとんど澤田副学長側から出たことを前提にしているのでは」ということです。問題となったとみられる二人の会話とは?立て直すには何をすべきか?野村氏と共に大学ジャーナリスト・石渡嶺司氏が解説します。

澤田副理事長が会議から閉め出し…“林理事長の暴走”か?

 澤田副学長の代理人弁護士によると、林理事長は9月4日、「警察に聴取されると、補助金(私学助成金)が交付されない可能性が高い」として、澤田副学長に辞任を要求していました。一方、澤田副学長は、「辞任する相当な理由がない」と反論。また、8月23日から9月4日にかけて、理事会などの会議を締め出されていたということです。日本テレビの取材に対し日大は、「自らの進退について、澤田副学長自身で判断するよう促した」としていますが、林理事長はこの件に関して回答していません。

Q.理事会などを澤田副学長が閉め出されることは、あって良いのですか?
(大学ジャーナリスト・石渡嶺司氏)
「これは、よろしくないです。辞任を促す話をするというのは、問題ありません。但し、澤田副学長が逮捕や起訴されたわけでもない時点で、会議を閉め出してしまうのは、明らかに大学の『ガバナンス欠如』と判断されてしまいます。会議を閉め出すということであれば、それより前に臨時の理事会を開いて解任を決議しないといけませんが、それをせずに閉め出したというのは、林理事長の暴走だったと言わざるを得ません」

 2023年7月6日、日大・アメフト部の寮で植物片が発見されました。これを受け、澤田副学長らが持ち物検査を実施し植物片などが発見されましたが、回収され、日大本部で澤田副学長が保管していました。林理事長も7月13日には植物片について報告を受けていたということですが、警察に連絡したのは7月18日で、“空白の12日間”が指摘されています。澤田副学長は8月の会見で、「(大麻なら)学生にきちんと反省をさせて、 自首をさせたいというふうに考えていましたが、その日には、まだ自首できる状況ではないという判断に至りました」と説明していました。

Q.澤田副学長が保管していたというのは、「所持」になるのではないのですか?
(弁護士・野村修也氏)
「そうですね。大麻取締法だと『所持』が処罰されますので、大麻だとわかって持っていたら、それ自体が罪になります。さらに、犯人もわかっているわけなので、蔵匿・隠避した可能性も出てきますし、その時点では証拠隠滅の可能性もあったわけです。そうなると、犯人が証拠隠滅することを手助けした可能性もあるので、私は澤田副学長の対応は非常にまずかったと思います」

 日大の組織図をみると、「理事長」は法人業務を統括し、「学長」が教学に関する業務を統括していて、業務が分かれています。そして「副学長」は学長の下に、さらに競技スポーツ部の部長などはその下に位置付けられています。

(野村氏)
「日大の理事には、『選ばれる理事』と『充て職の理事』がいます。充て職というのは、学長・副学長が理事になるという仕組みなので、理事を解任するとなると、まずは副学長を辞めてもらわなきゃいけないわけです。副学長の人事権は学長が持っていますので、学長と理事会が分裂してしまっている状態が今の状況を招いていて、事前にわかった事柄について報告があっても、『自分たちのほうでやっていますから』といった形で、理事長の関与を拒絶してきたんじゃないかなと思います」

Q.理事長が大学全体の改革をするわけではないのですね?
(石渡氏)
「田中元理事長時代は、田中元理事長が全権を担っていました。林理事長が就任してから、『法人業務』と『教学』はそれぞれ分けたという経緯があります。分離するのは悪い選択ではなかったのですが、情報伝達の“断絶”といったことが、あちらこちらで起きてしまっているなという印象があります」

Q.田中元理事長のときは分断も何もなく全権を握っていたのが、“本来の形”になったということですか?
(野村氏)
「“理事長強すぎ問題”にわざとされてしまって、理事長の役割をちゃんと整理しましょうと言ったのは、実は自分たちの“聖域”に口出しされたくなかったということです。それが結局今の形を招き、風通しが悪くなりました」

“辞任要求”時の詳細なやりとりが判明

 9月4日、林理事長が澤田副学長に“辞任要求”した際のやりとりが、明らかになりました。

(林理事長)
―「澤田先生にお引きいただくってことは、私たちにとって一番良い方法なんじゃないかなと思ってる。補助金不交付の可能性が非常に高い。澤田先生が役員として事情聴取とか、そういうことがマスコミに出ますと、恐らく交付はいただけないんじゃないかっていうのが、皆の見立て」
(澤田副学長)
―「第三者委員会が辞めろという結論を出す前に、辞めた方が良いということ?」
(林理事長)
―「はい。私達が自浄作用してるっていうことになると思うんです」
(澤田副学長)
―「辞任なら、自浄作用にはならないじゃないですか」
(林理事長)
―「でも一応、澤田先生の名誉は保たれるじゃないですか。辞めろって言って辞めちゃってるってのは、いろいろと問題があると思います。トカゲのしっぽ切りして逃げるつもりだなとか、絶対そういうこと言われますけれども、でも一応、私たちでできる限りのことはやったっていうふうにやるべき」

Q.これは、“自浄作用”になるのですか?
(野村氏)
「これまでの経緯を見てみると、学生たちの不祥事を早く知っていて、それをコントロールしてきたのは澤田副学長自身です。このことが、やり方として『大学側のガバナンスが利いていなかった』と言われているわけですので、まず責任を取るのは澤田副学長、あるいは学長だと思います」

(石渡氏)
「なぜ林理事長が澤田副学長に、『辞任していただかないと私学助成金が不交付になる』と言ったかというと、私学助成金の減額不交付のルールの中で、大学の役員が逮捕ないし起訴されると、その時点でアウトだからです。大麻を12日間も保管し続けたということが、いくら学生に自首を促すためとはいえ、どう考えても法律違反であって、その点から事情聴取を受けたり、場合によっては逮捕・起訴される可能性があったので、林理事長が先回りして『辞めていただければ』と話したと、そういう理屈です」

不祥事だけでは不交付にならない“助成金”、3年連続ゼロ その理由は?

 泥沼の“内紛”となっている日大に、石渡氏は「林理事長がこのまま続けるにせよ、辞めるにせよ、アメフト部並びに競技スポーツ部の改革がなされなければ、未来はない。日大の運動部は、“パワハラ”“隠ぺい体質”という悪い印象が強くなっている。実際に、不祥事が繰り返されている。日大の立て直しのためには、一時的にスカウティング能力などが下がったとしても、外部から人材を入れて、風通しを良くすることが必要」と提言しています。

Q. 日大にとっては競技スポーツ部の根本的な改革が一番で、これをどうするかに尽きるということですか?
(石渡氏)
「そうです。また、意外かもしれませんが、運動部の不祥事だけでは私学助成金が減額や不交付になることは、ほぼありません。では、なぜ今回3年連続不交付が決まったかというと、その後の対応が、『ガバナンスが機能していない』ということです。他の大学でも運動部の不祥事、薬物事件や暴行事件など、さまざまありましたが、なぜ今まで私学助成金の減額・不交付にならなかったかというと、きちんと対応していたからです。何か不祥事があれば、その部の監督と運動部を統括する部署の管理職が必ず記者会見などに対応します。ところが日大は、8月の会見以降、未だにアメフト部の監督と協議スポーツ部の部長が記者会見などに対応していませんので、この点も問題視されたのかなとみています」

(「情報ライブ ミヤネ屋」2023年10月24日放送)

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