【特集】“スーパーマーケット戦国時代”を生き残るのは⁉高品質・低価格は当たり前!『ロピア』『バロー』『オーケー』関東・東海から関西に…進出が相次ぐウラ側に迫る
今、関東・東海地方に地盤があるスーパーの関西進出が相次いでいます。こだわりの『肉売り場』から、“まるで市場”な『魚売り場』まで、各社独自戦略に自信あり!人口減少の中、世は『スーパー戦国時代』…“天下の台所”大阪・関西で、消費者の心を掴むことができるのか―⁉その戦いを追いました。
「全ての部位が揃っています」肉に自信あり!神奈川県から進出、精肉店が発祥『ロピア』“より良いものをより安く”徹底コストダウンの秘策とは?
京都駅近くにある商業施設の地下2階に、2021年にオープンしたのが、神奈川県に本社を置く『ロピア』です。1971年に精肉店としてスタートした『ロピア』の目玉は、肉!牛を一頭丸ごと仕入れることで、コストパフォーマンスは申し分なし。肉質4等級の品質にもこだわった肉を取り揃えています。
(『ロピア』精肉事業部・チーフ)
「肩ロースの中の一番良い部位、『ざぶとん』です。ステーキで切るにしても、ここまで贅沢に切るのは『ロピア』の特徴。この厚さにしても、お買い得にしています」
(精肉事業部・チーフ)
「開店と同時に、ダッシュで買いに来るお客様もいらっしゃいます。お客様に『どの部位があるの?』と聞かれるんですけど、逆に、知っている部位を仰っていただいたら、在庫があれば基本的に全ての部位が揃っています」
生鮮部門の総売上高に占める伸び率は、2015~2021年まで7年連続全国1位。2020年、関西に初進出して以降も次々と出店し、3年間で16店舗にまで増えました。
“安いだけではなく、より良いものをより安く”をモットーに掲げる『ロピア』は、空いたテナントや大型ショッピングモール跡地に居抜き出店することで、出店にかかるコストを下げ、“コインロック式カート”を利用して自らカートを元の場所に戻してもらうことで、人件費を下げています。
さらに、支払いは現金のみ。キャリア決済・カード決済で店側が払う手数料をなくすためで、徹底的なコスト削減で安さを実現しています。
岐阜から進出した『バロー』は、活気ある魚売り場に並ぶ鮮度の良い魚が売り!でも、チラシにはあえて載せない…「漁港より安くておいしい」を実現する独自戦略
東海地方から進出するスーパーも。2014年に他店に先駆けて関西にやって来たのは、岐阜県に本社を置く『バロー』。広い売り場を確保するため、郊外に多く進出しています。
開店直後、多くのお客さんが一目散に向かったのは、魚売り場です。「いらっしゃいませ」と元気な掛け声が飛ぶ売り場は、まるで市場のような活気。
(客)
「漁港もよく行くんですけど、そこよりも安いし、おいしい」
「人にも教えています、いいよって(笑)」
この日の目玉は、千葉県産のブリ・4104円(税込み)。
(客)
「3枚でおろして。刺身とかできますか?」
(店員)
「できますよー!」
「そこに行けば、必ずほしいものが見つかる」という期待に応える店づくり。品揃えが豊富で、こだわりの商品なども取り揃え、『ディスティネーション・ストア』とも呼ばれます。
安さのワケは、どこにあるのでしょうか―。
この日、朝6時に店舗に到着したのは、仕入れの車です。
(『バロー』北陸関西エリア・チーフバイヤー 宮部政人さん)
「仕入れに関しては、前日に取引先様から『明日、こういう情報がありますよ』といただいて、意見交換しながら、『もっと大きい魚が欲しい』『こういう魚種が欲しい』と話をしながら、まとめて発注をかけています」
その日その日で、お値打ちな魚を仕入れる仕組みです。チラシに鮮魚類を載せないことで、柔軟に対応して、新鮮で価格の安い魚を提供しています。
独自の戦略を生かし、消費者を呼び込む『バロー』。4月26日(金)にオープンした大阪・八尾店を皮切りに、年内も多数出店予定だとしています。
「スーパーは“局地戦”」エリアごとの戦略・地域密着型の店づくりで、信頼関係を築く『万代』 関西に進出相次ぐ理由を専門家分析「万博・IRもあり今後もポテンシャル見込める」
年々、人口は減少し、市場は縮小傾向である半面、関西の食品スーパー数は増加傾向にあります。競争が激しさを増す中、なぜ関東や東海地方を地盤にするスーパーの関西進出が、相次いでいるのでしょうか―。
専門家は…。
(「流通経済研究所」池田満寿次さん)
「マーケットとしての高いポテンシャルが今後も見込めるというところが、一番大きいのかなと。2025年の『大阪・関西万博』や、カジノを含む『統合型リゾートIR』が開業を控えているので、産業が活性化して、若い人たちの流入も見込みやすくなってくるので、スーパーとしては中長期にわたって売り上げを見込めるということで、有望に見ているところがあるのではないかなと」
こうした中、迎え撃つ関西地盤のスーパーも黙ってはいません。大阪・東大阪市に本社があり、関西に167店舗を構えるスーパー『万代』。
(『万代』店舗運営・サポート担当 和久正樹さん)
「この店の特徴は、魚売り場です。このエリアは、店がオープンしたときから非常に魚の支持が高く、『魚を食べたい』というお客様が多いエリアです。その方々に応えるために、いろいろな魚を取り揃えて、調理も承って、お客様に喜んでいただこうと」
関西人の心をつかむ「接客」が武器だと話す。客の意見を直接、細かく拾い上げるよう売り場に従業員を多く配置しています。魚売り場だけで5~6人の従業員を配置する力の入れようで、関東や東海から競合他社が見学に来るほど。魚の対面販売は、『万代』が発祥だといいます。
エリアごとに客層や客の好みを詳細に分析し、40代や50代の客が多いこの店では、他の店舗に比べワインを多く取り揃えています。「エリアごとの戦略」が強みですが、関西進出を果たす関東や東海地盤のスーパーを、どうみているのでしょうか?
(和久さん)
「スーパーマーケットの商売は“局地戦”なので、近くにお店ができれば、その影響は大きいです。ただ、このエリアで要望に応え続けて、お客様に『万代』が選んでいただける、喜んでいただける。それがお客様と万代の信頼関係につながって、お客様が増えてくるのかなと」
「4パック80円台の納豆」「299円のお弁当」“激安”が売りの『オーケー』が進出 関西の食文化を勉強し、社長自ら試食の総菜を武器に、いざ出陣!
『万代』や『ライフ』といった関西人に馴染みのあるスーパーから、わずか500メートル。東大阪市に2024年11月、新たに上陸予定なのが、神奈川県に本社を置く『オーケー』です。
“激安”を売りにしている『オーケー』では…。
(「読売テレビ」秋山実紀記者)
「3パック90円台で販売されている納豆も、『オーケー』では4パック80円台で販売されています」
“エブリデイ・ロー・プライス”を掲げ、競合店より1円でも高い場合は値下げの判断をするほか、総菜が強いのが特徴です。
(『オーケー』二宮涼太郎社長)
「お総菜ですと、例えば299円のラインナップでのお弁当。非常に品質にこだわった上でお安く、お客様にも支持高い商品です」
『オーケー』といえば…。
(二宮社長/2021年当時)
「関西スーパー様と、関西でご一緒したい」
3年前、関西進出を目指し『関西スーパー』との経営統合を目指しましたが、『エイチ・ツーオー』との争奪戦の末、叶いませんでした。
しかし2024年、『万代』のお膝元・東大阪で、悲願となる初出店にこぎつける見通しです。
(二宮社長)
「我々、できるだけ『開店したら閉店しない』というポリシーでやっているので、土地を取得して、そこに自分で建物を建てて、自社の土地建物を末永く使うことで、コスト競争力があるようなお店に」
2024年1月、横浜市の本社で行われたのは、新たな店舗で出す総菜についての会議。社長自らが参加し、その内容を見極めます。
(『オーケー』総菜・ベーカリー本部 田中邦明副部長)
「今年の11月にオープンする関西出店に向けた方向性を、ある程度定めたいというところで、商品のプレゼンをさせていただきます」
(二宮社長)
「はい、わかりました!」
まずは、『すき焼き』の試食から。
(二宮社長)
「あ、いきなり!うどん入り」
(田中副部長)
「関東では、あまりないですよね」
(二宮社長)
「家で食べる時は、“締めのうどん”とかやるけどね」
(田中副部長)
「タレが透き通っていて、おいしくて」
(二宮社長)
「…なるほど、おいしいですね。関西の方が食べ慣れている味でいったほうが良いと思うので。関東でも、売れるものなら売りたいね」
(田中副部長)
「関東では“関西風すき焼き”と打ち出せば…」
関東とは違う、関西の食文化。果たして、勝算はあるのでしょうか―。
(二宮社長)
「関西の食文化をしっかり勉強して、関西のお客様にとって利用しやすい味付けや品揃えにはしたいと思います。一方で、関東でご支持いただいている商品も沢山ございますので、それはそれで関西のお客様にもご紹介して、ぜひご賞味いただきたいと思います」
低価格・高品質に様々な“個性”を打ち出して、関西進出を果たすスーパー。人口減の中、競争が激しい市場で生き抜くのは、どこになるのか―⁉食を巡る天下分け目の戦いから、まだまだ目が離せません。
(「かんさい情報ネットten.」2024年1月23日放送)