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【特集】春から夏にかけて害虫急増!激しい痒みや発熱を引き起こすトコジラミ 殺虫剤のきかない個体増加 致死率27%の感染症を媒介するマダニ ペット経由での感染も その予防方法とは

2024年5月22日 20:00
【特集】春から夏にかけて害虫急増!激しい痒みや発熱を引き起こすトコジラミ 殺虫剤のきかない個体増加 致死率27%の感染症を媒介するマダニ ペット経由での感染も その予防方法とは
春から夏にかけて活性化する害虫

 春を迎え、過ごしやすい気候になり、新生活や旅行で移動が活発になる季節。しかし、活発になるのは人間だけではありません。「トコジラミ」や「マダニ」といった害虫も人に合わせて移動。さらに近年、その危険性は増し人体にも影響を及ぼしています。春から夏にかけて注意が必要な害虫。その対策をゲキツイしました。

普通の殺虫剤をかけても駆除できない強い個体『スーパートコジラミ』が世界的に大量発生

 3月、大阪府庁に集まったのは保健所の職員たちです。「トコジラミ」の大量発生を防ぐため、殺虫剤メーカーとして知られるアース製薬の担当者から駆除の方法を学びました。

(大阪府環境衛生課 辻野悦次さん)
「大阪関西万博が開催されるにあたって旅行者の方が増えてくることが予想されております。我々保健所としましては、来阪する皆様が安心できるような場所を提供しなければならないと思っています」

取材班はトコジラミの実態を探るためアース製薬の研究所を訪ねました。

(アース製薬生物飼育のマイスター 有吉立さん)
「こちらがトコジラミです。壁の隙間とかカーテンの裏とか、昼間は、そういう所に潜んでいて夜になって出てきて人を刺します」

 トコジラミはカメムシの仲間です。夜行性で、寝ている人の手足などを刺し血を吸います。刺されると、激しい痒みや発熱などのアレルギー反応が引き起こされます。このトコジラミはいま世界的な問題になっています。2023年の秋ごろから、韓国やフランスではトコジラミが大量発生し社会問題に。なぜ今、大量発生しているのか、皮膚科の専門医に聞くと。

(兵庫医科大学皮膚科学 夏秋優教授)
「2023年の夏以降にかなり患者さんの数が増えたので、コロナ禍が一応終息して、みなさんが旅行や移動した事も関与したんじゃないかと思っています」

 トコジラミは、移動する人の服や荷物の隙間に忍び込み、生息範囲を広げる特徴をもちます。そのため人の移動の制限が撤廃されたいわゆる"コロナ明け"からトコジラミ被害が急増しているのです。

大阪府では2000年頃から相談がありましたが、去年は過去最悪のペースで件数が急増しました。特に世界各地から多くの人が出入りする「宿泊施設」では警戒が必要になっています。2023年8月大阪市内の簡易宿泊所でトコジラミに刺された人は━

(トコジラミの被害に遭った人)
「布団の隙間であったり、タタミのあらゆるところにですね、100は超えていただろうなというのが一目でわかるくらい、すごい数でした」

宿泊所は既に満室で別の部屋に移ることもできずやむなく布団の上にレジャーシートを敷いて寝たが被害は防げませんでした。

(刺された人)
「針で常時チクチク刺されているような痛みに近い痒みを、1週間ほどずっと感じていました。体感的には普通の虫刺されとはまた異なるような感じでした」

(兵庫医科大 夏秋教授)
「トコジラミの活動はだいたい25℃くらいが最適活動温度になりますので、今年も気温が上がってきて、5~6月以降トコジラミの活動が活発になるこの時期に、おそらくかなりの患者さんが出るんじゃないかって危惧しています」

 こうしたトコジラミ被害をいま更に拡大させているのが…

(アース製薬有吉さん)
「普通の殺虫剤をかけても駆除できない強い個体『スーパートコジラミ』って言われています」

次世代のトコジラミとされる「スーパートコジラミ」はピレスロイド系の従来の殺虫剤に耐性を持ちます。トコジラミの9割がスーパートコジラミに移り変わっているとの推測もあり、だからこそ、駆除が難しく世界的な大量発生が起きているのです。

Q.私たちにできる対策は?

(アース製薬有吉さん)
「スーパートコジラミにも効く弊社の製品として『ゼロノナイトG』という商品があります」

 アース製薬では、「スーパートコジラミ」が耐性をもたない新たな成分が入った殺虫剤を開発・去年販売し問い合わせが増えているといいます。トコジラミを寄せ付けない予防効果ももつ商品です。また、衣服や荷物に付着させないことも重要です。宿泊施設に泊まる場合は、かばんをポリ袋に入れたりバスタブなど浴室で保管すれば、家に持ち帰らずに済みます。

 もちろん宿泊施設も対策を進めています。大阪府では職員が宿泊施設の組合を訪問し、駆除方法や対策を説明しています。

(大阪府環境衛生課 森川洋佑さん)
「とくに和室で見つかったり、リネンとかシーツ類とか変えられるようなときとかに見つかるとよくききますので、そのへん従業員の方とかにも周知いただいて、宿泊施設の衛生管理含めてお願いします」

(組合理事長)
「わかりました、ありがとうございます」

(大阪府環境衛生課 森川さん)
「当然、旅館で増えているということではなくって、自然と知らない間にカバンとかについていたものが落ちてしまう。そういった仲介にどうしても宿泊施設がなってしまうのかなとも思いますので、まずはそこから先に広がらないということを考えて対策をとっていただきたいと思います」

致死率27%「重症熱性血小板減少症候群 SFTS」を引き起こす恐れのある害虫マダニ

 春、外で活動する際に気を付けたいものが、またひとつあります。重い病気を引き起こす恐れのある害虫、それが数多くの感染症を媒介するマダニです。

 なかでもいま最も警戒が強まっているのが、感染症「重症熱性血小板減少症候群 SFTS」です。2011年、中国で初めて確認されたSFTSウイルス。草むらなどに生息するウイルスをもったマダニが、人や動物が通ったときにくっつき、血を吸う際、ウイルスに感染させることがあるといいます。感染すると発熱や嘔吐などの症状がおこり、致死率は27%にも上ります。現状、特効薬やワクチンはありません。日本国内では毎年100人ほどが発症し、2023年は、123人と過去最多を記録しました。年々、被害地域も広がっています。どうすれば被害を防げるのでしょうか。

(兵庫医科大 夏秋教授)
「マダニに刺されないようにするために、ぜひ注意していただきたいことはですね、市販の虫よけスプレーをうまく使っていただきたいんです。『イカリジン』と『ディート』という成分2種類ありますが、吸血性の昆虫全てに、吸血を忌避する虫よけとしての効果が発揮されます。使わないのと使うのとでは全く違いますので、ぜひ使っていただきたい」

 一方で近年、思わぬルートでマダニを介したSFTSに感染することもあるといいます。それは…

(兵庫医科大夏秋教授)
「実は、マダニに刺されたネコがSFTSに感染して、飼い主さんが感染したという事例が出ています」

 ウイルスをもつマダニに刺されたペットがSFTSに感染し、そのペットの排泄物や唾液に触れた人に感染が広がることもあるといいます。ペットのSFTS感染は毎年100件以上報告されていて、ヒトへの感染を防ぐためにはまずはペットをマダニから守らねばなりません。守るためには屋外で飼わない。散歩など外に出る時にはダニ除けの薬を使い、そもそも虫に噛まれないように心がけるなどの対策が必要です。しかし、それでもペットが感染してしまった場合、隔離する法的な基準は示されていません。設備がない動物病院では入院させられず、院内感染を防ぐためやむなく飼い主に返すケースもあるといいます。

 そこでペットの感染症を研究している宮崎大学が開発したのが…

(宮崎大学農学部付属動物病院 金子泰之准教授)
「これで1つのシェルターになる、これにこのヘパフィルターっていう特殊なフィルターがついた装置をつなぐことで、ウイルスがこの小屋の外に出ない」

 ペットをケージごと入れられる動物用の隔離シェルターです。もともとはSFTSに感染したヒト用のシェルターとして考案され、コロナウイルス感染者の治療にも活用されました。その技術を応用して2年かけて動物用のシェルターを開発、費用はクラウドファンディング(インターネット上で寄付)を募ったところ、400万円を超える資金が集まり、3月末に完成しました。今後は全国に広げ、動物病院での院内感染や自宅での飼い主への感染防止に繋げたい考えです。

(宮崎大 金子准教授)
「まだ病気自体も知られていない、皆さんご存じない部分があるので、まずその病気を知ってもらうことは非常に大事だと思っています。だから、そこ(知識)を広げていくという意味合いで、クラウドファンディングでシェルターを作ることは非常に大きな意味がありました。そこから獣医師としては治療・予防まで最終的に持っていきたい」

春から動きが活発化する害虫。自分や家族の健康を守るためにも正しい知識を持ち、日々の虫よけ対策を心がけましょう。

(「かんさい情報ネットten.」2024年4月16日放送)

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