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【独自解説】次期自民党総裁に求められる資質はアメリカとの交渉力 「拉致問題」「USスチール問題」とどう向き合う? アメリカ大統領選拮抗で究極の選択 キーパーソンは2人の大使

2024年9月7日 10:00
【独自解説】次期自民党総裁に求められる資質はアメリカとの交渉力 「拉致問題」「USスチール問題」とどう向き合う? アメリカ大統領選拮抗で究極の選択 キーパーソンは2人の大使
次期自民党総裁に求められる資質とは

 自民党総裁選は、事実上日本のトップを選ぶ選挙です。その日本のトップに必要な資質とは何なのか?とりわけ重要なのはアメリカとどう向き合うのかになります。今後、トランプ前大統領とハリス副大統領、どちらが大統領になるかによっても対応は変わってきますが、そのために押さえておくべき「キーパーソン」とは?自民党総裁選を、アメリカ的な視点から『読売テレビ』高岡達之特別解説委員の解説です。

■次期自民党総裁に求められる資質の一つは「英語力」

 自民党の総裁選をめぐる動きが続いています。次々と候補が名乗りを上げているわけですが、今回は日本のトップが何を約束し、どういう資質が大事かという話を一緒に考えたいと思います。そうすると、結局アメリカとどう付き合うかということが大事です。今回の総裁選を経て日本のトップになった人にアメリカが尋ねることは、「あなたの譲れないことは何なんだ」ということです。

 今回の自民党の総裁選は、意欲を示している人が全員出たら、12人ということになりますが、ここで冒頭に言ったように、日本のトップとなるとアメリカとの向き合いというのが、必然的に出てきます。そのときに、この候補者の人たちの英語力に差はあるのか?と調べてみると、実はほとんどの人がペラペラです。

 これも時代の流れを感じるんですが、「アメリカの大学で勉強しました」「アメリカで仕事をしていました」という人がたくさんいます。青山繁晴氏はもともと記者ですので「通訳はいらない」と自分でも言っています。

 ただ、石破茂氏だけは、本人はコメントはしていませんが、公式の記者会見や外国人特派協会でも日本語で通していますので、英語はあまり得意ではないというのが定説になっています。

 ほとんどの候補者が“通訳いらず”ということはとても大事で、1時間が正味1時間なんです。「アメリカの〇〇氏と1時間会談をしました」とよく発表されますが、通訳が入ると実質30分なんです。ところが、通訳なしだとその1時間を丸々相手とコミュニケーションができるということです。それに関しては、候補者の人たちはほとんど差がないということになります。

 問題は、若い時に仕事や大学で勉強されたという方がますが、大事なのは「今も、毎日情報は英語で取っていますか?」ということです。実は今も毎日英語に触れていて、英語の本を読んで、英語のニュースを見ている人というのは、今の2024年のアメリカの考え方であったり、文化であったりに精通しているということです。

 特段の意図はありませんが、私の経験で言うと、今回出馬を発表した林芳正官房長官にこういうエピソードがあります。何年か前に会ったときに「夏休みに読んだ方がいい本ありますか?」と尋ねると、「5冊ほどご紹介しましょう」と紹介されたのが全部英語の本でした。タイトルもペラペラ英語で言うもんですから、私はメモも取れず「はい、ありがとうございました」と言って帰った記憶があります。林官房長官は今でも情報源としてはアメリカの生の英語だということをここでご紹介しておきます。別に林官房長官だけじゃないです。他の人も同じだと思います。

■日本が譲れない「北朝鮮拉致問題」にアメリカを巻き込めるか?

 問題は、日本のトップになったときに、アメリカはやっぱりタフな国ですので、「日本のトップとして譲れないことは何か」ということが明確に言えないとダメです。日本の代表として、これだけは譲れないという「日本国民の思い」として言ってもらいたいのはなにか、ということが一つ争点になると思います。

 それは北朝鮮です。アメリカは日本の同盟国ですから、北朝鮮に関していろいろ動いてくれますが、どうしても自国への脅威になる「核やミサイル」のことになります。そこは、前のトランプ政権の時も、今のバイデン政権もやってくれます。

 しかし、日本人にとって、特に自民党の支持者にとっては「拉致問題」を一番強く「日本が譲れないのはここなんだ」と言う人でないとちょっと推しにくい、というのがあると思います。自民党だけではなくて日本の有権者の思いだと私は思います。

 この拉致問題に関して、今までアメリカに行った時に熱心に自分で発信をしていた人は、高市早苗氏や青山氏です。2人は、役に就いていないときから主張していたことをアメリカでも知られています。また、日本国内でも「そんなに拉致に熱心だったかな」という声が出るかもしれませんが、林官房長官と加藤勝信元官房長官は拉致問題担当大臣です。そういう意味ではアメリカでも拉致問題解決を主張する人だと受け取ってもらえるかもしれません。

■候補者が試される「USスチール問題」はアメリカの「誇り」の問題

 もう一つ、候補者がこれからアメリカから試金石とされるのが「誇り」というものをどう考えるか、という問題です。それが「USスチール」という会社の買収問題です。この「USスチール」はアメリカの大統領選挙を左右すると言われ、昔は鉄で栄えたが今は錆びている街だと呼ばれるペンシルベニアにある、まさにアメリカの「誇り」と言われている会社です。これは、儲かっている・儲かってないは関係ないです。一緒にすると怒られますけど、日本で言ったら「トヨタ」のように、アメリカ人ににとってその企業の名前を挙げればアメリカだ、というような意味合いの企業です。

 この「USスチール」を「日本製鉄」という日本を代表する製鉄会社が買収しようとしています。もちろん、「日本製鉄」の説明は「今『USスチール』はちょっと弱っているけれど、日本製鉄が手を貸せば元気になって、アメリカの雇用に役に立ちますよ」と言っていますが、これに関してだけは、トランプ前大統領もハリス副大統領も意見が全く同じで、「とにかく日本には買わせない」と2人とも言っています。

 大事なのは「プラウド」という英語、日本語では「誇り」になりますが、アメリカの人でこれを発音するときに背筋伸ばす方もいるんです。その国の「誇り」というのはビジネスの面で理屈に合っているからというわけではないということです。

 日本は痛い経験をしています。この写真は、皆さんの中にも覚えている人もいると思います。「日本の車がハンマーでぶち壊されている写真」です。これは、日本がバブルで経済力を持っていた頃に、とにかくお金の力でアメリカの企業を買ったことに大変反発して起こったことで、今回も同じようなことにならないかということが心配です。

 しかし、今の日本の政府及び岸田首相の立場は、「これはあくまで民間の話」で、今まで「意見は極力言わない」ということになっていました。しかし、これからトップになろうという人たちはそれで済むのか?ということになります。

■トランプか?ハリスか?拮抗するアメリカ大統領選

 アメリカの大統領がハリス副大統領になるのか、トランプ前大統領になるのかまだ分からないわけですが、残念ながら、日本の首相の方がアメリカの大統領より早く決まるんです。ということは、トランプ前大統領になるのか、ハリス副大統領になるのか、究極の予測をしないとダメなんです。この人になったときには、こっち人の方が合うなという予測をしないといけません。

 アメリカのメディアも書いていますが、ハリス副大統領が大統領になったら、結構物事を決めるのに時間がかかります。日本でいうと、どちらかというと官僚タイプで、法律家でもあるので「議会」を大事にします。「法律」にすることを大事にするし「根回し」があるので、物事スピードはゆっくりですけれども多数派を構成します。となると、この候補者の中からでも「元官僚」の人だとか、「国会の根回し長けている人」などがハリス副大統領が当選してくれるといいかなということになります。

 トランプ前大統領は言うまでもなく、「ワンマン社長系独断実行型」です。ただ、この人は言ったことは全部実行しています。トランプ前大統領の気質としては「俺が全部決めるんだ。議会はもう後でいいんだ」です。そうすると今回の候補者の中で逆に「根回し下手」でちょっと「強引すぎる人」が合うと思います。

■キーパーソンは現駐日大使と前駐日大使 どう転んでもどちらかが大統領側近になる

 では、この候補者たちは何を模索しているかというと、どっちに転んでもいいように、日本にいる2人の大使に一生懸命会ったことをアピールしています。2人の大使とは、民主党・ハリス陣営のエマニュエル現駐日大使とトランプ政権のときのハガティ前駐日大使です。

 普段だったら別に、こういう人たちに会いましたって言いません。ところが、今回の総裁選の候補者たちは写真も公開して、「会いました」とわざわざアピールしています。例えば、小泉進次郎氏は自分のSNSに、ハガティ前駐日大使とエマニュエル現駐日大使氏に「同じ日にパーティーで会った」「携帯電話の番号も交換した」とアップしています。わざわざ公式に発表はしていませんが、分かるようにしてるわけです。2人の大使は、外務省にも行ってますし、官房長官とも会っています。

 では、何故この2人に注目するかというと、この2人はどちらも「政治任用を選んだ経験がある人」です。政治任用というのは、アメリカの場合、大統領に変わると日本で言うところの高級官僚数千人が総入れ替えになります。その高級官僚の候補を選んで、大統領・副大統領に「この人たちでいいですか」と官僚のトップ、あるいは優秀な官僚たちを集める役目を、エマニュエル現駐日大使はオバマ政権で、ハガティ前駐日大使はトランプ政権でやった人です。

 ですから、日本で言うと「官僚を知り尽くしている立場の2人」です。この人たちは、どちらも自分の所属政党の候補が大統領になったらその側近になると言われています。ですから日本の候補者たちも、今どちらに行ってもいいように面会をアピールしているのです。究極の予測は、どうなるでしょうか?(『読売テレビ』高岡達之特別解説委員)

(「かんさい情報ネットten.」2024年9月3日放送)

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