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【独自解説】11人“乱立”の自民党総裁選、党重鎮たちの本音「なんとか5人ぐらいで止まってほしい」のワケとは!?ベテラン・若手入り混じった争い、カギとなるのは9月10日の『アメリカ大統領選討論会』?

2024年8月24日 10:00
【独自解説】11人“乱立”の自民党総裁選、党重鎮たちの本音「なんとか5人ぐらいで止まってほしい」のワケとは!?ベテラン・若手入り混じった争い、カギとなるのは9月10日の『アメリカ大統領選討論会』?
候補者最大11人?大混戦のワケは―

 11人の候補者が全員出馬すれば、『推薦人制度』導入以来最多人数となる2024年の自民党総裁選。一方、党内には「候補者を5人程度に絞りたい」という意見も…一体ナゼ?『読売テレビ』高岡達之特別解説委員の解説です。

■小林鷹之氏が最初の出馬表明 1956年以来の最多に並ぶ11人“乱立”

 2024年8月19日現在、全員が出馬するとは限りませんが、名前の挙がっている方が11人います。この中で初めて、小林鷹之さんが出馬を表明しました。ということは、20人の推薦人が集まったということで、号砲の火蓋が切られたわけです。

 今回“11人出る”と言われていますが、実は初めてではなく、史上最多と並びます。68年前の1956年、自民党結党の翌年に11人が出て総裁選をやっています。ただ、その時は20人の推薦人がいなくてもよかったんです。今回は“20人縛り”がある中で、史上最多に並ぶ数の人が出ます。

 ご存知の方も多いかと思いますが、普通の有権者には投票権がなく、全国にいる109万人の自民党員の方が選びます。が、ほぼ“日本の首相になる方”だから、こうしてお伝えしているわけです。

■「岸田首相が出馬しないことで頸木が外れた」候補者の名前が続々挙がった理由2選

 なぜ今までは十何人も出なかったのかというと、まず今回名前が挙がっている11人の肩書きを見ると、現職・内閣・党の重鎮など、ものすごい職歴です。ということは、彼らにとって現職の首相は“役職に選んでくれた人”で、『首相の了解で、そういう役目をやっている』ということになります。

 もし岸田首相が出馬していれば、他の候補者は必然的に「岸田首相とはここが違います」ということを言わなければいけなくなります。そうなると、これは私の見方ではありますが、自由民主党がとても大事にする『義理人情』に反します。「義理人情のわからない奴は、人の上には立てない」ということになるわけです。そういう意味では、岸田首相が出馬しないことで、その頸木(くびき)が外れました。

 そして、注目すべきは『3年後』、要するに“総裁任期1期目が終わる時に迎える総裁選”です。3年後、皆さん写真にある年になります。もちろん、「70歳を超えたらいけない」というわけではないです。選挙にも出られます。

 ただ、自民党の人たちから「世代交代」や「刷新感を出せ」という声もある中で、「3年後に70歳になるなら、今回手を挙げておかないと…」というのが、65~70歳ぐらいまでの年齢の方々です。ここで手を挙げずに次回挙げたら、「なんで前回やらなかったの?」というふうに言われますから。

■党の重鎮らの本音は「5人ぐらいで…」 理由は『テレビ』と『新聞』?

 ここからは、水面下のお話を。私の責任においてお話ししますが、最終的に『5人プラス…』ぐらいに収めたさそうです。水面下で誰が動いているかは言えませんが、すでに推薦人を集めた方が、この中に5人ぐらいいます。これから順次出馬を表明しますが、党の重鎮たちの本音としては、「何とか5人で止まってもらいたい」、できれば「あとプラス1か、最悪2ぐらいで止まってもらいたい」と思っています。

 理由は、投票権がある自民党員は、中小企業の経営者・地域の実力者など全国にいらっしゃいますが、こういった方々は、テレビを見たり新聞を熱心に読まれたりする方が多いからです。最近よく言われる「SNS・ネットの使い方がうまいこと」は、国政選挙には関係がありますが、今回の自民党総裁選には、あまり意味がないです。

 となると、テレビや新聞で紹介してもらうためには人数を減らさないと、11人全員でテレビに出るとなったらテレビ局も大変です。11人全員が均等に発言するとなると、例えば読売テレビの報道番組『ウェークアップ』に出演していただいたとしても、放送時間が終わってしまいます。だから、テレビ局としても自民党としても、5人ぐらいにしてもらったほうが意見を聞けるというわけです。

 そして、新聞です。今まで通りなら、新聞は「候補者に聞く!」みたいな記事をお一人お一人連載するんですが、11人分を連載したら、選挙期間がほぼ終わってしまいます。また、あいうえお順だろうが当選回数順だろうが最初に書いてもらった人が有利になるに決まっているので、「なんとか5人ぐらいにしたい」ということです。

 その中で『女性・若手・ベテランなど程良くミックスして入れる図式』をやりたい人が、どうもいるようです。

 そのためには、直接的な言い方はしませんが、“推薦人にプレッシャーをかけてでも減らさないと”と。推薦人は名前が公開されるので「君、名前が出るけどいいのか?」ということを言う人がいたり、さらには「君が推薦人になろうという話を聞いたけど、その候補者は見込みが少し薄そうではないか。そんなところで名前を公開されたら、3年間はちょっと仕事が来ないかも…」といった話は、最近聞きました。

■忖度・防災・行く理由…問題は、東京・大阪に続く『第3の場所』

 「自民党のトップを選ぶ」とは言いますが、自民党は一般の国民にも訴えたいし、国民も聞きたいですよね。そうなると問題になるのが、『第3の場所』です。

 自民党内でだけやればいいんですが、「できるだけ地方を回って演説会・討論会をやりましょう」というのが、基本的な流れです。前回も前々回も、いつもそうです。

 東京・大阪はやるでしょう。問題は、『第3の場所』です。当然、有権者も自民党員も全国にいるので、「地方はどこを選んでくれるんだろう」と思っています。しかし、地方は難しいんです。有力議員・派閥の領袖がいるような所でやったら、「忖度ではないか」という話にもなります。

 また、岸田首相も総選挙の時はよくやっていましたが、東北で第一声をあげ、「災害に遭った地域の皆さんのことを考えています」といったことが、よく言われます。ただ、お名前は挙げませんが、11人の中に「東北といえば、私は、僕は、いつも行っているんだよ」という方がいるんです。

 となると、選挙に差し障りがなく・有力者に忖度したとも言われず・その地域に行く理由があり・防災のこともややこしくならないように、『第3の場所』もよく考えて選ばないといけません。まだ起きていませんが、“南海トラフ”の太平洋側には、かなりの数の県があります。恐らく、その中から選ぶでしょう。

■党員が候補者に求めるのは『憲法改正・女系天皇・夫婦別姓・拉致問題』の具体策か

 問題なのは、選ぶのは党員ですが、国民は違う視点で首相を見ます。しかし、自民党の方に刺さる公約は、また別です。

 国民は『物価高』のことや、今回パーティー券の話があったので『政治と金』のことも言ってほしいですが、恐らく『政治と金』は全候補者が言うので、あまり争点になりません。自民党支持者の方からしても、「そんなことは当たり前だろ」という話です。

 そうなると、むしろ自民党が結党以来言っている『憲法改正』『女系天皇』『夫婦別姓』『拉致問題』です。これらは自民党が一番力を入れていて、日頃から言っている話なので、どの候補がどんな具体策を言うかが、直接的に選ぶ人たちにとっては大切ということになります。

■日本の総裁選にも大きな影響を与え得る、『アメリカ大統領選』の行方

 そして、新しい総裁・政治家を支える官僚の皆さんから「大丈夫かな」という声を聞いたのが、海の向こうの影響です。『9月10日』次第で、選ぶ人が変わってくるというんです。

 2024年9月10日、アメリカ大統領選初の大統領候補同士の討論会が開かれます。今のところ、支持率はハリスさんが少し上との情報もありますが、問題は「どっちがどういう出来か」ということです。

 ハリスさんが物凄く良い出来で「これはもうハリスさんだ」となると、ハリスさんは最長で8年間大統領になるので、「自民党総裁も若手のほうがいいのではないか」ということになります。ただ、まだまだハリスさんの出方はわかりません。

 ところが、トランプさんが復活して物凄く勢いがあり「これはトランプさんだな」となると、扱い方・付き合い方が難しくなるため、「やはり即戦力だろう」という声が当然、自民党の決選投票前に出てきます。ベテランの人たちは、そこで目が出てくるわけです。9月10日を睨みながらの神経戦が続いています。(『読売テレビ』特別解説委員・高岡達之)

(「かんさい情報ネットten.」2024年8月19日放送)

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