帝京長岡 魅せた自慢のパスワーク
第100回全国高校サッカー選手権。新潟県代表・帝京長岡は3回戦で神奈川県代表・桐光学園と対戦。80分間戦い1-1の同点。PK戦(3-5)の末敗れ、県勢初の全国制覇の夢は叶いませんでした。試合を振り返り、未来を展望します。
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磨き上げたパスワークでボールと試合を支配する帝京長岡と、組織的な守備から攻撃を組み立てる桐光学園、それぞれに攻守に自信のあるチーム同士の一戦でした。前半開始からその構図通りボールを自由に操り攻撃の圧をかける帝京長岡。その勢いのまま先にゴールネットを揺らしたのは帝京長岡でした。前半23分、右サイド佐々木奈琉選手(3年)のグラウンダーのクロスボールに対し、ゴール前に走り込んだ武原幸之介選手(3年)が合わせて先制します。
一方の桐光学園はロッカールームに引きあがる際、鈴木勝大監督から「お前らこのまま終わるのか」と発破をかけられ、後半開始からギアを入れ直します。後半は前線からプレッシャーをかけ続け、帝京長岡の攻撃の芽を摘むシーンが徐々に目立ち始めます。すると後半18分、桐光学園は右のコーナーキックからGKのこぼれ球に反応した米山悠葵選手(3年)が押し込み、得意としているセットプレーから同点に追いつきます。1-1のまま試合はPK戦へと突入します。
帝京長岡の2人目のキッカーはキャプテン三宅凌太郎選手(3年)。シャープで狙いすましたキックは読みが当たったGKの手の中へ。それでもキャプテンは下を向かず、次のキッカーに思いを預けました。
技と力が拮抗した2校の勝敗は桐光学園へ軍配が上がりました。惜しくも敗れた帝京長岡イレブンは3回戦で涙をのむこととなりました。
試合後、151人を束ねたキャプテン三宅選手は「気持ちの整理がなかなかついていない。自分のせいで負けてしまって悔しい」と心の内を明かします。1年生の時から選手権のピッチを知るキャプテンは「負けてしまうとやはり後悔が残る。これから一日一日を大切に過ごしていってほしい」と後輩へのエールも残してくれました。帝京長岡を率いた指揮官・古沢徹監督は「(今大会での)3失点はセットプレーから。全て私の責任です」と悔しさを滲ませました。
「日替わりでヒーローが出てくる」と新潟県予選から今回のチームを評する古沢監督。それだけに選手層の厚さ、激しいメンバー争いがあったことは間違いないはずです。去年、一昨年敗れた準決勝、「あの場所に戻る、そして超えていこう」と声をそろえ、代名詞でもあるパスサッカーは更に磨き上げられたものへと成長しました。新チームにこの思いは引き継がれ、帝京長岡の“観ていて楽しい、また観たくなるサッカー”を武器に全国制覇の栄冠を手にする日は次の世代へと託されました。
(取材・文:高校サッカー選手権民放43社/TeNYテレビ新潟)