五輪のスーツ規定失格から9か月 高梨沙羅“いま語る気持ちの変化”
2月の北京オリンピック、スキージャンプ混合団体に出場した高梨選手の1回目。103メートルの大ジャンプを見せるも、ジャンプ後の抜き打ち検査で「スーツの太もも周りが規定より2センチ大きい」という理由から失格に。
翌日更新したSNSでは黒い画面とともに「私の失格のせいで皆んなの人生を変えてしまったことは変わりようのない事実です」「今後の私の競技に関しては考える必要があります」と語っていた高梨選手。
それから約9か月経ち、高梨選手は当時をこう振り返りました。
「一番やっちゃいけないことをしてしまったので。その時は、“やめて償えたら”って思ったんですけど…。でも本来ならどうやって、このやってしまったことを次につなげて、このままで終わらせないようにできるかなって。やめちゃってなかったことにするというのは、なんかちょっと自分勝手な感じがして」
迷いながらも練習を続け、大会に出場するなかで、気持ちに変化が生まれます。
「純粋にジャンプが楽しいなって、やっぱり好きなんだなって思いながら飛んでいて、ジャンプ会場に見に来てくださる観客の方が楽しみながら見てくださっているんですよね。その喜んでいる様子を見ると、楽しんでもらいたいっていう気持ちが大きくて」
そうした思いから、再びジャンプを続ける決意をしました。
しかし、10月に行われたドイツでの大会で、再びスーツの規定違反により失格となった高梨選手。北京五輪以来、対策を練ってきた中での出来事でした。
「絶対に失格にならないように、毎日メジャーメントしてもらって、その試合の当日も測ってもらって、『大丈夫だね』って言って、行ったんですけど、ダメだったので」
国際スキー連盟の最新の規定では、スーツの最大許容差は、男女ともに、ボディーに対しプラス2センチから4センチ。スーツの表面積が大きいほど、揚力が得られ、飛距離を伸ばせるため、公平性と安全性の観点から定められています。
一方でその測定方法には、“曖昧さがある”との声も。
ソチ五輪団体銅メダルの竹内択選手は「着た状態で立って触られ『これちょっと大きくないか?』と思われたらチェックマークを入れて、その部分を測る。結構難しいのは、引っ張れば(スーツのサイズは)全然変わってきちゃうんですよ。メジャーメントのやり方、強さも人それぞれ違いますし、その人次第なんですよね。そこらへんが“曖昧”ですね」と語ります。
再び起きてしまったスーツの規定違反。しかし高梨選手はすでに次を見据えていました。
「腕と膝なんですけど1センチ大きくて、腕と言っても、どこ測るのかによっても1センチくらいは変わっちゃうので、それを明確に“どこ”っていうのを決めないとやっぱり誤差が出ちゃうなとは思いますね。W杯前にそれが経験できてよかったということではあるんですけど、やっぱりもうちょっと対策を練らないといけないなという経験はさせてもらいましたね」