前人未踏の大技に挑戦 フィギュア羽生結弦 3度目の五輪を荒川静香が解説
「あ~ちょっと待って…」北京五輪フィギュアスケートシングルで4位となった羽生結弦選手。先輩スケーター荒川静香さんの顔を見た瞬間、こみあげてくるものを必死にこらえました。幼い頃から3度目の五輪まで羽生選手を見てきた荒川さんが演技を振り返ります
■前人未踏「4回転アクセル」への挑戦
ーまずは羽生選手の演技をご覧になってどんな気持ちを今お持ちですか?
とにかく最後まで気迫を感じるような滑りでした。難しいシチュエーションにはなったんですけどその中で4回転アクセルをしっかり形にしたこと、結果は転倒にはなったんですけれども今まで跳んできた4回転アクセルの中では本当に一番いいものが試合にぶつけられたんじゃないかなと。見た感じいい力のこもり方だったんですよね。それがオリンピックという思い入れもある舞台で、緊張がかかり、タイミングを合わせていくこと、力の加減をすることが本当に難しい瞬間に、それを全て出すことが出来たというのは、さすがだなとも思いました。その後4回転サルコウは一番悔やむところだと思うんですけど、もしかしたらショートの時に跳んだ場所と同じ場所だったということが少しよぎってしまった、いつもよりもちょっと慎重に構えが長くなったかなという印象は受けました。それ以外の部分は、後半に2本4回転を組み込んでいったりとか攻めの戦いっていうのをディフェンディングチャンピオンにもかかわらずオリンピックで闘志をみせてくれたことにすごく胸が熱くなりました。
ー今回の4回転アクセルの挑戦はどうでしたか
守るものばかりを抱えて挑む立場にあった中で、挑戦を掲げて乗り込んでくる選手は今後もなかなかいないんじゃないかと思うんです。4回転アクセルの挑戦のみならずショートを終えてからまた構成をあげて最後まで戦うっていう姿勢、本当にアスリートなんだなっていうのを感じましたし、すごいアスリートなんだなって。
■誰よりも難しいシチュエーション
ー結果的には4位でしたけれどもこれまで長い期間見てきたからこそ荒川さんも感じるものがあるのでは?
そうですね、結果は本人もインタビューでありましたけれども、記録としては不本意だけども、ただ挑戦できたこともしっかり戦えたこともよかったんじゃないかなという、ちょっとやりきった、スッキリしたような表情は印象的でしたね。それが何よりだったと思うんですよね。誰よりも難しいシチュエーションで挑みましたし、重圧もある中で風よけがない状態で戦わなければならない難しさというのが、羽生結弦選手は今大会は一番誰よりも難しいシチュエーションだったと思うので、その中でよく戦い抜いたと思います。
ー終わった後の表情はどうでしたか
やっぱり終わって安堵するところもありました。悔しさもにじませていましたけれども、トータルしてスッキリした表情だったかなと思います。
■「負ける怖さ」を抱えての五輪
ー北京五輪出場を悩んだこともあった中でのこの挑戦でしたよね
そうですねやっぱりインタビューでも失うのが怖い、と。挑戦することによって、これまでオリンピックで彼は誰にも負けたことがない二連覇をしているわけですから負ける怖さっていうのは人一倍あって、挑戦者じゃないんですよね、その中で自分の覚悟が決まるまでにはやっぱり時間がかかったっていうのはすごく分かります。あとは自分がどのように向かいたいのかという気持ちが、平昌オリンピックまでは自分の競技人生の中でプランにあったけれどもその先は考えていなかったっていうことで、向き合い方も難しかったと思うんです。全日本終えてから覚悟がようやく本当の意味で決まったんじゃないかなという中でのオリンピックだったと思います
■今後も多分いない「すごいアスリート」の姿
ーその中での素晴らしい演技と言っていいですか?
結果やっぱり挑んでよかったんじゃないかなと。3連覇をかけて戦える人って今後も多分いないし、4回転アクセルをこのオリンピックの舞台で挑戦したいって言う人も、なかなか時代が変わらないといないんじゃないかなと思うので、すごいアスリートの姿を見せてくれたなと思います。